◇juri+cari◇

ネットで調べて、近所の本屋さんで買おう!!

加藤ミリヤさん『20-CRY-』

2009-01-29 23:58:28 | 音楽
渋谷ガールズコレクションにゲストとして登場予定の

加藤ミリヤさんの新曲『20-CRY-』


最近、聞く音楽の傾向がマニアックになったので

ここいらで中和です


『20-CRY-』は

どうせ色恋の話でしょ、と思って聞き始めたら


もうわからないよ私が生まれたその意味を
ねぇ 私に気付いて
ねぇ この世界で一人だけでいい

と、深刻な内容でびっくり!!

慌てて真剣に聞き始めました。


この曲が描いているのは


自分がいる意味

他者から承認されたい想い


という、誰しも20歳前後で一瞬は陥る《答えのない問い》。


それをバラード調のメロディで歌います。


詩そのもののメッセージは重いのですが

透明感のある歌声、そして広がりのあるサウンドが

全体の印象を暗いものにしません


カップリングの

2曲目『悲しみブルー』

3曲目『Let'em go』は、こちらこそ失恋の歌




とはいえ、全曲聞き終わった後の印象は

前向きで、さわやか。


パッと泣いて、サッと前に進む

これでこそ女の子

―と感じるシングル。


とにかく3曲通して聴いてほしいです☆☆☆

Antony and the Johnsons『The Crying Light 』

2009-01-29 10:06:38 | 音楽
マーキュリー・プライズ受賞グループ《アントニー アンド ザ ジョンソン》

の最新アルバム『The Crying Light 』


ジャケットは

ノーマ・デズモンド(『Sunset Boulevard 』のグロリア・スワンソン)かと思いきや

現代日本の伝説的な舞踏家・大野一雄さん


公式ホームページによれば

なんでもメンバーが大野さんのファンで


このアルバムも

「大野さんにささげるもの」

「大野さんは自分たちの作品にとって親のような存在」

とも語っています。


本アルバムの特徴は

悲痛で物悲しい歌声、美しいハーモニーと、

耽美的なメロディ


最初に聞いたときは

一曲目の出だし

Her eyes are underneath the ground
I have heard the crying sound

No one can stop you now
No one can stop you now

があまりに物悲しく


「エライCDを買ってしまった」と後悔しましたが


2曲目以降は明るめの曲や

少しはアップテンポな曲もあって

どうにか全曲聞いたという感じ


しかし、少し時間を置き2回、3回と聞くうちに

次第に慣れ、


いつの間にか『Epilepsy is dancing』の

Cut me in quadrants Leave me in the corner

というハーモニーの美しさや

アルバムを締めくくる『Everglade』

壮大で神聖さすら感じさせるメロディー

がクセになりました。



・・・でも、やっぱり物悲しいんですがね



耽美という言葉では言い尽くせないこのアルバム


個人的には、全曲通して聴くのは難しいですが


こういう音楽が

ipodに入っていると

日常のスパイスになります。

Bruce Springsteen 『Working On a Dream』

2009-01-28 13:58:04 | 音楽
スプリングスティーンの歌を聞くと

すぐに耳に入るのが

野太い声と力強いギターのサウンド


なので、何気なく聞くと

いかにもアメリカンという雰囲気の

マッチョな曲と勘違いするかもしれません


しかし、歌詞を聞けばそんな印象はすぐに払拭


スプリングスティーンの詩は


日常の何気ない喜びや

社会の底辺にいる人々の絶望

そして、突如として湧き上がる悲しみ―

これらから目を背けずに向かい合うもの。


こうした繊細な歌詞を

ROCK、エンターテイメントであることからは脱線しない

重厚でのりのいいメロディにのせて

心の一番深い場所まで運ぶ


これこそ、スプリングスティーンの魅力だと思います



本アルバムは


重苦しい雰囲気の『Outlaw Pete... 』に始まり

一転してゴキゲンな『My Lucky Day』


I'm working on a dream
Though it can feel so far away
I'm working on a dream
Our love will make it real someday

という歌詞が、聴く人の胸にしみる表題作『Working On a Dream』が続く


全体として明るい曲調ながら、

文学性の高い歌詞がキッチリとしめ

お気楽なスタジアム・ロックやポップに陥らないという印象を受けます


詩の構成やメロディラインは目新しいとは言いがたく

似たような印象を受ける曲もありますが

無難にこなさず、

一曲一曲を全力で仕上げる無骨さに感服



イエスがどうしたとか

悪魔がどうした

という信仰の色が強い歌詞が少ない点も

スプリングスティーンの他のアルバムに比べて、

すんなり聞けるポイントかと思います


個人的に好きなのは

タイトルからしてわくわくする『the Queen of the Supermarket 』

哀愁を帯びたメロディがなかせる『What Love Can Do』


毎日聞きたいアルバムではありませんが

こういうアルバムが必要な日って、絶対にあります!!!

Rokia Traore『Tchamantch』

2009-01-28 00:13:10 | 音楽
マリ出身の歌手ロキア・トレオレの最新アルバム『Tchamantch』


軽やかで浮遊感のある出だしから

徐々に、力強くソウルフルなサウンドへ展開

ポップでリズミカルな曲やBalladも交えつつ

ラストはもっともシンプルな曲でじっくりと聞かせる



曲ごとの巧みな歌い分け


これをささえるのは

言うまでもなく、卓越した表現力、技術ですが、

技術におぼれることなく楽しげに歌っている姿が浮かびます


曲調はアフリカンなものが多いのですが、

シャンソンやボサノヴァを思わせるメロディの曲や

節回しに、日本の民謡に通じるものを感じることもあり

《アフリカ音楽》にとどまらないスケールを感じます


一般的にはアフリカの音楽といえば

民族的側面を強調したメロディが想像されがちですが、


より大きな広がりを持った彼女のアルバムをきっかけに

未知の奥深さを持ったアフリカ音楽に触れていただければ

―と思います。


おススメはなんといっても最初の『Dunia』

思わず、「そい!!!」と掛け声を入れたくなります


ここで引き込まれたら

ここからの1時間は彼女のものです

江宮隆之さん『昭和まで生きた最後の大名 浅野長勳』

2009-01-27 17:48:53 | 読書
本書を手に取るとすぐに目に入るのが

この見事な威容


表紙の写真、実は木像なのですが

本書の巻末に付されたご本人の写真を見ると、

ご本人も気品と威厳を兼ね備えた、すばらしい容姿の持ち主であったようです



本書は、安芸・浅野藩の最後の藩主・浅野長勲に関する評伝


著者は

小早川隆景(毛利元就の子、小早川秀秋の養父)

藤原経清(奥州藤原氏の開祖)

山崎方代(昭和の俳人。春の日が部屋に溜って赤いから盃の中に入れてみにけり)

など、実に《つう》好みな人物の評伝を手がけている

江宮隆之さん。




本書で取り上げられる浅野長勲は

幕末の大名

まだ若いにもかかわらず

長州出兵への参加を拒否し、勝手に長州と講和条約を結んだことで幕府ににらまれるが

反面、孝明天皇からの信頼は厚く


・・・・という経歴を並べるよりも

坂本龍馬にも、徳川慶喜にも、

孝明、明治、大正、昭和、そして現在の天皇陛下にもお目にかかったことがある人物の評伝、

といった方がはやいかもしれません。



何をしたって言うほどではないけど

とりあえず大変な長寿で、江戸から昭和(1842~1937)まで生きた御仁なのです。




激動の維新、

孝明天皇からの信頼と、先見の明だけは持ちながらも、

産業や軍事面での近代化に大きく遅れたせいで

さっぱり目立てなかったこの御仁



それでも、

大政奉還直後、徳川家の処遇を議論するために開かれた御前会議では

穏健派の土佐藩藩主・山内容堂を

陰険な岩倉と陰険なうえ、凶暴な西郷らが暗殺しようと計画したのを

機転により、穏やかに収めた

-そうな。


維新後も

目立つ活動をしたというほどではないのですが


全権大使としてイタリアに赴任したり

製紙工場や、新聞社を経営したりと

好奇心と社会についての問題意識を欠かすことなく、楽しく生きたよう。



歴史上の偉人というより、

一人の人間として見習うところの多い人物です


回想談の中には

美化しすぎ?―と思うような箇所もありましたが

深くは考えず受け流しましょう



なお、本書では触れられてはいませんが、


幕末を潜り抜け、

ヨーロッパにも長期滞在したことのある明晰な頭脳の持ち主は

昭和という時代の行く末をどのように感じていたのか


その点について、ぜひお聞きしてみたかったなと思います

倉橋由美子さん『酔郷談』

2009-01-26 01:04:53 | 読書
昨年逝去された、倉橋 由美子さんの遺作となった本短編集ですが、

遺作とは思えない艶っぽさにあふれています。


一応連作短編集の形式をとっていますが

物語に大きな流れは無く


主人公の男性が

毎話、一杯の酒に誘われて、夢幻の世界へ誘われるのみ。



あるときは幽玄な桜を眺め

またあるときは、仙界へと赴き


子どもの姿に戻っては、幼い日に亡くなった母親と交わり

女性の姿になって、一休和尚と淫蕩の限りを尽くす。



趣は相当違いますが

ひたすら官能の極みを堪能する様子は

一瞬、マルキ・ド・サドを思い起こさせますし


歴史上の偉人とHしちゃうのは

江戸時代のポルノ小説(平家物語をポルノにしちゃうのとかがあった!!)とかを思わせますが


本書がそれらに大きく優るの

「いやらしい」けど「いやしく」はないこと

いかに悦楽に浸っても、その様子は下品にならず

どの場面からも作者の鋭い美意識が感じ取られます。


各話は、短いので1冊をあっという間に読むことも可能で

雰囲気に当てられ、悪酔い・・・ということはありませんが


ここはやはり、1日1話のペースで

ゆっくり読みながら、生涯を小説にかけた名手が残した悦楽に浸っていただきたいところです。



個人的におススメは

冒頭の『桜花変化』



見上げると、木に残っている花は蝙蝠よりも黒いものに変じていた。

幹も枝も黒く花も黒い。これは立ったまま死んだ桜の死骸ではないか。

(中略)

道らしいものを見つけて尾根を歩いていくと、

山の桜は散って若葉が春雨に光っている。

このむなしさは何だろう、と思ったとき、よく知っている歌が浮かんだ。


花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る(式士内親王)





なにも言葉はありません。





余韻をそのままに、うとうとしながら

「快楽の品格」というのがあることを実感しました。

新留勝行さん『野菜が壊れる』

2009-01-25 23:58:40 | 読書
農業に関するニュースをほぼ毎日目にします


フランスでは、

金融危機の影響によって

有機野菜の売り上げが減少した―とF2が報じ


イギリスでは

農薬の散布の差し止めを求める住民の訴えが

長い審理のすえに、ようやく認められたそうです。



一方、日本に目を転じると

食料自給率の向上、減反政策の見直し

個別保証制度の提案とそれへの批判が繰り広げられています



そして、そんな議論をよそに

日本の農業は、刻一刻と足元から崩壊しつつあります。

本書『野菜が壊れる』によれば、

その原因は、かつて夢の肥料といわれた化学肥料。



本書は、長年農業に接したて着た著者が

猶予を許さない農業の崩壊について

現場からの告発を伝えるとともに、

農業の再生へ向けた提言をするものです。



【本書の構成】

1章では『野菜が壊れている』現状について、具体的な例を示す。

たとえば、

『日本食品標準成分表』のデータを下に

野菜が含有する、ビタミンや鉄分などの、成分が年々減少していることを示す。

たとえば、100グラムあたりのほうれん草については

ビタミンCが

1950年の段階で150ミリグラム

1982年には65ミリグラム

2000年には35ミリグラム

―と年々減少。

鉄分などのミネラルについても同様の傾向が見られる。


他にも


その一方で、亜硝酸態窒素の含有率は上昇


2章では

植物が土から栄養を吸収する仕組みを科学的に説明し

その中で、窒素・石灰・カリウムなど肥料がどのような役割を果たすのかを示す。


3章では

化学肥料の代表例である「硫安」が、

製鉄の過程で生まれる副産物であること。

そして、これが広まったのは産業界の要請という側面もある

という認識を表明。


4章では

壊れた野菜がそれを食べた家畜や

さらに、それを使用した食品にも変化を生じさせつつあることを指摘するとともに

それが「安く、速く、たくさん」という消費者の要請の結果でもあること

を指摘。


こうした現状を踏まえた上で

農業の建て直しのための提言を行う。

【主張の要点】

① 化学肥料によって農業は甚大な影響を受けいている。
② これまでの農薬・化学肥料中心の農法をやめ、有機栽培中心の農業へ転換すべきである
③ そのためには小規模経営で、質を重視した生産を行うべきである。
④ 消費者は(1)安さは安全性と引き換えにえるものであることを自覚し、(2)自らのアンテナを磨くことで、健康を守ってくしかない。

【感想】

農家よりであることを自認しながらも、問題の根本を的確に指摘し、安易に悪人を仕立て上げない点に誠実さを感じます

また、野菜に関する指摘―タマネギは目にしみない―などは直感レベルで納得するものが多く、牛の糞が堆肥にならなくなっているという指摘は本当に驚きました

ただ、3流推理ドラマのように、

終盤になって突然「電子」が「新たな一つのカギ」として登場するのはいかがなものか?

安直に飛びつけば、かつて化学肥料に飛びついた人たちと同じ末路が待っているようにも思えるのですが・・・


塩川伸行さん『民族とネイション』

2009-01-25 00:50:11 | 読書
あいかわらず、テレビや新聞では


ナショナリズムや愛国心の高揚

民族間の対立―という言葉をよく目にしますが


そもそも、

それってどういうことなのか?

なぜそのような問題がおきるのか?


という肝心の点については、十分に教えてくれてません。



本書は、

ナショナリズムや民族というとても複雑な問題について

幅広く、統一的に、しかもコンパクト・平易に解説し、

読者に考える材料やきっかけを提供するもの。



これまでも、こうした類書は多くありましたが、


特定の地域や思想家のみを重点的に扱ったり、

論点ごとに筆者が異なったり

学術的すぎたり―と

本書のように、多くの人に開かれたものはほぼ皆無。



ナショナリズム論の入門書が始めて誕生した!!といって過言ではないでしょう


社会科学を学ぶ学生のみならず

社会人の方や高校生まで、幅広く読んでいただきたいと思います。





【本書の構成】

1章では

ナショナリズム、エスニシティ、民族、国民国家について定義をし、

諸概念の相互関係についての整理を行う。


2章から4章では

ナショナリズムが誕生してから、現在に至るまで

どのような文脈・社会的状況で、どのような変化を遂げたのか

19世紀、20世紀前半、第二次世界大戦後、冷戦終結後

の4段階に分け、各段階ごとにヨーロッパや中東、アジア等の個別の例を短く紹介する。

なお、アフリカについての言及はない。


終章5章では

今日におけるナショナリズム論の到達点である

《シヴィック・ナショナリズム-エスニック・ナショナリズム》

を紹介したうえで、筆者の見解を示す。


【筆者の主張】

① いかなるタイプの「ナショナリズム」概念も一長一短である。

② そして、ナショナリズムそのものの有害性・危険性を論じるのではなく、
それらが実際に衝突や対立の原因になる場合に防止することが重要である



【感想】


筆者の主張の②については、だからどうやって?!!!

―と思わず突っ込みたくもなりますが、

理性的な結論とは、だいたいこんな感じであり

むしろ、(最近の新書の多くのように)わかりやすい結論を提示しない点に

誠実さを感じました。



とくに興味深かったのは、

筆者の専門である旧ソ連の崩壊と独立国家の誕生について

「新しい独立国家の形成が既存の連邦制の転用という形で進行した」と指摘する箇所。

まさに、蒙を啓かれるおもいです。


【おまけ】


参考文献には、私が大好きな学者の著作がズラッと並びます

安丸良夫さん、山内昌之さん、田中克彦さん

アンソニー・スミス、ホブズボーム

などなど、名前を見てるだけで幸せな気分になりました☆☆

ディナ・コールマン『もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない』

2009-01-21 22:47:30 | 読書
鶏と性的関係を持ったことはあるか?



CSIを志望した本書の筆者ディナ・コールマンさんはこう尋ねられたそうだ


昨今はドラマや小説の影響で鑑識や司法解剖への注目が集まっていますが、

そうした職業に夢や希望―あるいは幻想を―

抱いている方に読んでもらいたいのが

本書『もう二度と死体の指はしゃぶりたくない』


筆者のコールマンは、民間出身ながらCSIで鑑識として10年間勤めた人物


本書はそんな作者が鑑識に勤めることになったきっかけから、

10年間の勤務を経て、退職するまでを描いたノンフィクション作品。


吐瀉物、排泄物、血液、精液、臓器などなど

体内にあるものがぶちまけられ、

時間が経過した場合には、いろんな生き物がうごめく現場。


文字で読むだけでもゾッとする状況で

日々働く大変さは、想像を絶します。


実際、CSIに勤める人物でも

自分が目にしたものに耐え切れず、1,2年で燃え尽きてしまう人がいるそうです。


作者によれば

そんな環境で、仕事を続けるには

ユーモアが必要!!とのことで、

本書にも、そこで磨かれた(ブラック)ユーモアが遺憾なく発揮されています



もし人を殺したら、ぜひ埋めてほしい。

人が死ぬのは見たくないが、私の要望で警察に買ってもらった穴掘りセットを使うのは
大好きだ


と語ったり


股間のふくらみが目立たないような独創的な下着をつけ

女装したまま自殺した遺体にミスター・ファンシーパンツ

と名づけたり・・・


中でも、

吹き飛んだ頭をかじった犬に

顔をペロペロなめられた話には

思わず笑ってしまいました。


もちろん、

ブラック・ユーモアには顔をしかめる人がいるかもしれないけれど

けれども、もしユーモアがなかったら

とてもじゃないけどこの本の内容は読めないし、

鑑識の仕事について、詳しく知ることはなかったと思います。


なにせ、

壁には血液やら脳やら頭蓋骨が張り付き

顔の半分が吹き飛んだ男(←死後数ヶ月経過)がいる部屋が克明に描写される本なのだから。


筆者が被害者や職務に真摯に向かい合っていることも

本書を読めば伝わるはずだし、

これくらいで、目くじらは立てないでほしいと思う。



タイトル『もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない』

というのは、いささか扇情的に感じたので、

翻訳者か日本の出版社がつけたものだろう

―と思いきや原題そのまま


山田仁子さんによる訳文は名訳で、とても読みやすい。

しかも、題材が衝撃的であるにもかかわらず

読んでいる最中に嫌悪感を感じることもありませんでした。




ベストセラーしか売れないようなご時勢に

こうした本が出版されるというのは、本当に喜ばしいこと

ぜひ、一人でも多くの人に読んでもらいたいです。


遺体や現場の写真はないので、安心してお読みいただけますよ

津村記久子さん『ポトスライムの舟』

2009-01-21 00:15:46 | 読書
芥川賞を受賞した津村喜久子さんの『ポトスライムの舟』は

工場のラインで働く女性の日常を

「ゆるく」切り取った作品。


タイトルにある「ポトスライム」とは、

水だけで育つ観葉植物のこと。



化粧品工場の製造ラインで働くナガセは

休憩場に貼られたNGO主催の世界一周クルージングのポスターを目にする

費用は163万円。

工場での1年分の収入に相当する額だ。


倹約して、その資金をためようと決意した矢先

ナガセの元へ、友人が子どもを連れて

転がり込んできた―



ストーリーに大きな盛り上がりはないものの

硬軟交えたエピソードがテンポよく展開し、

内面の描写も、適宜挿入されるので

決して冗長に流れることはありません。


個人的に好きなシーンは

ナガセと友人の子・りつ子が二人で留守番をしているところや

ポトスライムをどうやって食べようかとあれこれ考える場面

などとても多い.



中でも、最後の数行が本当にさわやか

ちょっとかっこつけすぎ?のようにも思えますが

やはり、たまらなく好き


時にゆるく、時にシビアに

波に揺られながらも転覆することないカヌーのように

しなやかに生きる登場人物の姿がたくましく感じられます。


派手さはないけど、誠実で堅実な内容で

純文学っていいなぁと再認識させられた作品です。






なお、本作が収録されている

『群像』(08年11月号)には

TBSの久保田智子さんがトイレやら糞尿をテーマにしたエッセイを寄稿しています

すごいマニアックな組み合わせで

『群像』やるなぁと感心しました