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比喩が面白い本だった

2018-06-26 14:58:55 | 日記

永田和宏  『生命の内と外』

 

 

著者は和歌にも親しんでおり、

1 比喩がおもしろかった。

 

l毎年、一月十日、西宮えびす神社で開門神事が行われる。開門と同時に境内に走り出し、230メートル離れた本殿に誰が一番乗りできるかを競う行事である。

 

これを見るたびに、卵子を目がけて涙ぐましく突進する精子を思い浮かべる。

 

l運動に関わる筋肉、そしてグルコースしかエネルギー源として利用できない脳が、二つの大事なお得意様である。

 筋肉と脳は、それぞれ、全エネルギーの20パーセントを消費している。成人男子が一日に消費するエネルギーは約2000キロカロリーであるから、脳も筋肉もそれぞれ約400キロカロリーを消費している。

 

 筋肉は体重の40パーセントだが、脳はわずか2パーセントなのである。1・2キログラムの脳と25キログラムの筋肉が同じエネルギーを使うのは驚きである。

 

 脳は大喰らいであり、かつエネルギー源としてグルコースしか利用しないというグルメ通である。

 

 

l 口腔から肛門まで、消化管の内側の壁は、上皮細胞という細胞がびっしり隙間なく並んだシートからできている。

 

l銭湯に行くと、浴槽も洗い場もタイルがびっしり張り巡らされているが、小さくて、伸縮自在の細胞というタイルが、隙間なくはりめぐらされているのが、食道、胃、腸も含めて消化管の内側の壁なのである。

 

  細胞の膜成分である脂質は、一つの分子のなかに水になじみにくい疎水性の部分と、水になじみやすい親水性の部分の両方を持った分子である。疎水性の部分は、水になじまないが、油成分とは親水性をもち、結合できる。このような疎水性、親水性の両方の性質を持った分子を両親媒性と呼ぶ。

 

 両親媒性の性質を持つ分子は界面活性剤としての性質があり、石鹸を考えればよい。

 

 石鹸や洗剤で洗濯すると、よく汚れが落ちるのは、疎水性の部分で汚れの油成分と結合し、親水性部分でそれを水になじませる。すなわち、溶解させる力があるからでる

 

 

2 次に、日常で驚きの事実

 

l著者は学生に「君らのウンチは何からできているか」と質問すると、もちろん、食べ物のカスが一番多い。

 

 しかし、実際は、約三分の一が腸内細菌の死骸で、他の三分の一が小腸などの消化管から脱落した細胞、残りの三分の一が食べ物のカスだという。

 

 だから、ウンチが臭いのは腸内細菌が食べ物を代謝したり、発酵するときの匂いである。

 

l バクテリアは大体直径一ミクロン程度。私たちの中に棲んでいるバクテリアはどのくらいの数か。

 

 糞便中のバクテリアは培養できないものが多く、現在では300から1000種類、数は600兆から1000兆個と見積もられる。重さにして一キロから一・五キログラム。私たちの全細胞より多い。仮に1000兆個あるとすると、腸内細菌をすべて一列に並べると、なんと100万キロメートルになる。地球25周分。これだけのバクテリアを抱えて、彼らに助けられて日々生きている。

 

l生物の内部に、別の生物を棲まわる。これを共生と呼ぶ。細胞内部に別の細胞を取り込み、共生させるミトコンドリアのような例は、「細胞内共生」という。

 

 1970年に細胞内共生説をボストン大学のリン・マーギュリスが唱えた。

 

共生は二種類の生物が、互いに利益を得る生活のことである。ミトコンドリアと共生すると、宿主はミトコンドリアからエネルギーをもらう。ミトコンドリアは、発電所みたいなものである。

 

 一方、ミトコンドリアはエネルギーを与える代わりに、それ以外は楽をする。

 

 多くのタンパク質を宿主に肩代わりさせるのである。ヒトのミトコンドリアで働いているタンパク質は1500種以上と見積もられる。そのほとんどを宿主が貢いでいる。ミトコンドリアに快適な生活を送ってもらうために、かいがいしく、世話をしているのである。

 

 

3 何となく気になる名言

 

lオバーリン曰く、「生命にとって最も特徴的なことは物質代謝であります。すなわち、生物が生きているということは、外界との間に物質およびエネルギーの出し入れをおこなっている間だけのことなのです」と。

 

4 タンパク質の重要性とコラーゲン広告の嘘

 

l タンパク質、、脂質、炭水化物、ビタミン、イオンなど、生命活動に欠かせない分子であるが、特に、タンパク質は細胞内の機能分子として、最も重要だ。

 

 タンパク質が一度作られると、ずっと働くわけでない。数十日働くものもあれば、一分以内で寿命を終えるものもある。従って、細胞内では常にタンパク質を作り続けなければならない。

 

 タンパク質を摂るのは、タンパク質を作る元になるアミノ酸を摂るためである。

 

lコラーゲンは、身体を作っているタンパク質の中で最も量の多いタンパク質である。ヒトの総タンパク質の三分の一がコラーゲンである。

 

コラーゲンの量が少ないと、肌の張りがなくなり、皺の原因になる。

だから、コーマーシャルで摂取しよう、と頻繁に報じられる。

 

しかし、ここに落とし穴がある。コラーゲンを摂ると、組織として沈着するかというと、ノーである。コラーゲンを摂ったからといって、身体の一部となり、機能を発揮することはない。

 

コラーゲンから摂ったアミノ酸は、他のタンパク質を作るのに使われるし、逆に他のタンパク質を摂取して分解したアミノ酸からも、コラーゲは作られる。何も高い金を出して、コラーゲンを摂る必要はない。

 

一般の人々の科学的知識の不完全さに付け込む広告は確信犯である。

 

5 何故、糖尿病になるのか

 

 栄養を摂る。生きるために必須だが、エネルギー原(グルコース)は、小腸の上皮細胞による外と内のバリアを越えて、体内に取り込まれる。

取り込まれた糖は、血中を流れ、筋肉や脳でエネルギーとして燃やされる。余ったものは、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯めこまれる。それでも、間に合わない場は、脂肪細胞が貯蔵先となる。これが肥満になる。

 

一方、血糖値を感受して、膵β細胞がインスリンを分泌し、強制的に糖を細胞内に取り込ませるが、肥満や運動不足がインスリン抵抗性を生み出し、負の連鎖から大量にインスリンを作らねばならない。やがて、膵β細胞が疲弊し糖尿病となる。

 

6 やはり、コレステロールは大事で、 脂肪には良い脂肪と悪い脂肪がある

l コレステロールは不飽和脂肪酸の歪みの部分に入り込むことで、水などの漏出、混入を防ぐ。生命の内部を外部から遮断することがいかに大切かを実感できる。

lコレステロールは肝臓で作られ、肝臓から血中に入って末梢まで運ばれる。総コレステロールの20パーセント程度が食事からとられたモノであり、残りは肝臓で作られる。食事で摂取したコレステロールが少なければ肝臓で多く合成され、逆に摂取量が多ければ合成量は少ない。

 

 健康な人なら、食物中のコレステロールは健康に影響がない。

 

 

l 細胞膜を構成する脂質の約25パーセントがコレステロールと言われる。コレステロールがなければ、細胞膜を維持できないで、生命は生きていけない。

 

l脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類ある。白色はせっせと脂肪をためこむだけ。肥満とともに増え、メタボを引き起こす悪役細胞である。

 

 一方、褐色脂肪細胞は脂肪をため込んでいるが、たくさんのミトコンドリアを持ち、脂肪をエネルギーに変える細胞。脂肪を燃やして体をスリムにさせる。

 

 数年前に、褐色脂肪細胞は、筋肉と兄弟だとわかる。兄の筋肉と同様に、グルコースを燃やし続けてくれる。

 

7 時には断食も大事かもしれない

 

少食や断食をすると、熱が出る。

 

l 熱がかかると、タンパク質が変性にさらされる。これを防ぐためにストレスタンパク質が大量に必要となる。普段、眠っている。その眠りを覚まさせて起動する。遺伝子が目を覚まして読み取られることを遺伝子発現、その調節機構を発現調節と呼ぶ。

 

l 新たに作り出されたストレスタンパク質は、細胞内で変性した、あるいは、変性しようとしている他のタンパク質の保護にあたる。いわばレスキュー隊員のようなタンパク質である。


忙中閑あり

2018-06-25 09:30:16 | 日記
安岡正篤 『人間維新』

忙という文字は立心編に亡ぶと書いてある。人間は忙しくなると心が滅びる。何か亡くなる。よほど気をつけないと、人間馬鹿になる。

人は名士に憧れるが、名士は名士になるまでが名士であって、だんだん名士になるにつれて、迷士になってしまう。本当に有力になろうと思うなら、無名でなくてはならない。マスコミに出たがるようになると、追い回されたりして、文字通り忙殺され、無内容になる。地位や名誉が出来れば、「忙中閑あり」で、閑を持つことだ。閑というもじは門の中に木が植えてある。なんとなく景色がのどかである。閑という文字は「ひま」であると共に「静か」という文字だ。静かだからくだらぬことから防ぐことができる。

大脳医学が発達して、人間は頭を使えば使うほどいいという。難しい問題と取り組めば取り組むほど頭は良くなる。易しいことばかりに頭を使うとダメになる。体も同じで夏は冷房、冬は暖房で育ったら、体も悪くなる。うんと苦しめなければならない。

現在の退化はいくらかは飲食のせいだ。飲食に伴う人と人との会話を耳にするがよい。中傷や虚言、詭弁、口先上手、下品話のオンパレードだ。これらは酒乱に相当するほど精神的退化を催す。仕事を終えて、残してくれた自由時間をこれらに吸収されるのは愚かなことだ。また、自由時間に三晩も四晩もテレビや映画を見たり、無意味な雑談で過ごすのは、精神的自殺行為ではないか。

日本人も戦争に負けて無一物にあるときはしっかりしてた。しかし、物が豊かになると、すぐに堕落してしまう。幸運に耐える方がより大きな美徳を必要とする。
成功とは何か。偉い人や有名人に会って話してみると、案外つまらん人間が多い。偉くなるまでは確かにに偉かったが、偉くなるうちに従って馬鹿になる。

大体、美人は薄っぺらで、形だけの美人がほとんどだ。男もそうだ。美男子は気障な奴だったり、薄っぺらい奴だったりする。男性美が男性美でなくなって、不愉快になる。美が本当に頭の下がるような美になるには、形の美より、心の美を要する。ブルドッグがくしゃみをしたような顔の男が修養すると、品威が出てくる。男性美ば出る。

伊達政宗は独眼竜で片目というのは醜です。しかし、修養すると、片方の目が何とも言えない妙味が出てくる。昔から片目の人は非常に偉い人がある。風貌は焼き付いて離れない。おれは片目だという意識があるから、真剣に勉強する。しかし、俺は美男子だとか、美女だと思うと、自惚れがあるから、勉強しない。却って人の誘惑にもろかったり、たあいないことになる。人間のおもしろい所だ。

利欲を追求すると、おかしいほど人の智を昏くする。大抵はガサガサと利を追って利を失う。利を追求すると、どこかで悶着を起こす。繁栄すると、忙しくなる。人が群がる。だんだん自己を見失い、本当の友はできない。

徳川時代の京都、鎌倉の南禅寺や建長寺などの五山の禅僧の間で
「東坡・山谷・味噌・醤油」ともてはやされた。東坡は蘇東坡、山谷は黄山谷で、台所に味噌醤油がなければならないように、精神生活には蘇東坡と黄山谷がいかんければならないという。

黄山谷曰く、士大夫三日書を読まざれば即ち理義胸中交わらず。便ち覚ゆ、面目・憎むべく、語言・味なきをと。
三日勉強しないと、自分の顔を鏡に映してどうも人相が悪い。ちょっとしゃべっても言葉に味がないことがわかる。
人体の皮膚の中で一番敏感なのは面の皮だという。全身の神経系統の一番尖端の過敏点で埋まっているという。人間全身の皮膚の中で顔面皮膚が一番鋭敏だという。
王陽明の言葉に、「天下悉く信じて多しと為さず。一人これを信ずるのみにして少なしとなさず」という痛快な言葉がある。天下の誰も信じてくれない。たった一人だけ信じてくれるという場合もある。己れ自身の問題だから、己れ自身の信ずるところがあれば
他人は問題ではない。これを信念という。大勢でわいわいという、それが気になるようならば自信がない。信念がない。めそめそするのは意気地のない話だ。こういう心境になるのが陽明学の特徴だ。だから昔から陽明学をやった人は毅然とした人物が多い。西郷南洲、河井継之助などその代表だ。

志ある人物は身を修めるのに静を以ってする。中国には静学がある。「静を以って身を修める」濫費しないこと。内に蓄えること、これを倹という。「倹以って徳を養う」とは人間余りに欲望享楽をほしいままにすると、精神エネルギーが駄目になる。人間が修養するのは「静以って身を修め、倹以って徳を養う」ということが大事だ。

飲食でも濃厚なものはすぐ生理的に失敗する。精神的にも必ずすさんでくる。俗に腹の皮がはれば目の皮がたるむ。大飯くらって、トンカツだ、ビフテキだと食っておったらすぐに生理はダメになる。むしろ淡白な野菜、米なら玄米の方が生命力に富んでいる。茄子や大根もくたくたに煮ないで、湯通しぐらいですませる。野菜サラダがよい。淡白にすれば、志・精神活動は理想に向かって活動できる。

ゴリラは面白い

2018-06-23 15:54:53 | 日記

山極寿一 尾本恵市  『日本の人類学』

 

 

 

この本を読んで、特に、ゴリラへの愛着がわいてきた。また、酒吞み話や今西錦司の探検隊の話を面白く読めた。

 

1 萱野茂の比喩「狩猟民は、足元が暗くなる前に戻る」 「北海道で、我々アイヌは長い間、自然の利子で食べさせてもらっていた。ところが、あるとき和人がやってきて、元本を食い尽くしてしまった」。

2 尾本氏が、人類学になぜ、遺伝学を入れないのか、と質問すると、長谷部先生は、遺伝学は変化しないもの(遺伝子)を研究する。一方、人類学は、人間がいかに変化するかを研究する。だから、遺伝学を入れないと。

3 京大の今西先生はカラコルム学術探検隊長を務めたが、五十七歳まで無休講師だった。西陣のボンボンのお金持ちだったから。

4 今西さんは、探検隊長で、地図もなく、道が二つに分かれていた。その時、部下に、どちらへ行ったらいいか、と聞かれると、少しも動ぜず右、と言われた。根拠はないという。今西さんは「そういう時、おろおろしてはいけない。とにかくどちらかに行って、駄目だったら戻ってくればいい。隊長、リーダーとはそんなものだ、と言った。今西さんは山は突然、危険が迫る、そんな時、あれこれ考えてはいけない、直観で行動するという。

 

5 デニソワ人の姿、形は現状ではわからない。

 

6 日本人は明治維新以来、現在まで百数十年間に平均身長が十センチ以上伸びている。遺伝子の変化だけでなく、食べ物の変化もあるが、電灯を使うようになったからと思われる。目から入る光の刺激が、脳下垂体から出る成長ホルモンに影響を与えている。

 

7 ゴリラには子供の時期がないけれども、人間にはある。

 

8 ゴリラは三歳から四歳で離乳しますが、人間は、離乳が早い。

 

9 オランウータン、チンパンジー、ボノボ、ゴリラの中でチンパンジーは例外的な存在です。同種内で殺し合いがあり、肉食をするのはヒトを除けば、チンパンジーだけです。他の連中はみんな菜食主義者で、争いが少ない。チンパンジーはヒトと似ているのか。

 

10 『ネイチャー』にヒトとチンパンジの遺伝子は98パーセント同じだと言う。

 

11 ゴリラのペニスは伸びた時でも四センチしかない。睾丸もとても小さい

 

12 ヒトのペニスは伸びると平均十三センチと長いが、ゴリラはあの大きな身体なのにわずか四センチ。一方、チンパンジーは人間より大きな睾丸をしている。

 

13 チンパンジーは、ペニスを挿入してから射精まで平均六秒しかないので何度でもやれる。そのため、あんなに睾丸が大きい。なんとチンパンジーのメスが妊娠するまでに1000回近く交尾する。頻繁に交尾するが、妊娠しにくい。

 

14 かつて、イリノイ州のブルックフィールド動物園で、ゴリラの展示ブースの柵から三歳の子供が転落した。柵は十メートルの高さだった。転落した子供は意識がなくなった。

 

その時、一頭の雌ゴリラが子供に近づいて抱き合げ、飼育係の所まで運んだ。

 

  ゴリラは気が優しく、縄張りがなく、仲間意識で繋がっている。

 

一方、チンパンジーは乱交、競争意識があるから、お思いやりがない。

 

15 ゴリラに認知実験できない。教師の人間を自分より上の存在として認めている。彼らは相手の言う通りになることを嫌う。

 

 何か教えようとすると、その裏をかく。

 

16 ヤハウエにアベルの行方を問われたアベルは、「知りません。私は弟の監視者なのですか」と答えた。これが人間のついた最初の嘘だと言われる。

17 猟銃採集は私有を否定する文化なんです。

18 猟銃採集民の生活は「わかちあい」の精神が暮らしの隅々まで行き届いている。死ぬ時には何も持っていけない。物を持っていられるのは生きている間だけ。

19 猟銃採集民の家畜はイヌだけで、ウシやヒツジは農耕が始まってからの家畜です。イヌはヒトのパートナーとして生まれた最初の家畜です。

 

20 イギリスの霊長類学者のロビン・ダンバーは、人間以外の霊長類の脳に占める新皮質の割合が集団規模に応じて増加する、という。

350万年前のアウストラロピテクス・アファレンシスは、三十人、脳容量が600ccを超えたホモ・ハビリスは50人、脳容量が1400ccの現代人は約150人。

 

  ヒトの猟銃採集民の生活では長い間150人規模の集団が保たれていた。だから、農耕の開始で急に集団規模が拡大して、人間にとって大異変で、その変化についていけない。

 

21 急進な進化の原因として考えられるものにボトルネック(ビンの首)効果があります。

 環境悪化により個体数が減り、絶滅寸前になるが、また、復活して個体数が多くなる。すると、ビン首の前後で形質が大きく異なる。