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 メカ・ワンダーランド
(あなたの知らない海の世界)

世界を変えるスイッチ!?

2016-09-27 21:04:06 | Novel
みなさんは、こんな話をご存知でしょうか?

「人生には、世界を変えるスイッチと出会えるチャンスが3度ある」

それは例えば、就職だったり、結婚だったり、子供が生まれたりというような個人レベルのモノから、ダイナマイトの発明、月面着陸、戦争勃発、世界大恐慌等々・・・

今の自分を変えなければいけない、今のままではダメだと思っている時に、そのスイッチに出会ってしまったら!?
あなたはそのスイッチをオンにして、人生を変えたいと思うのでしょうか?
しかし、そのスイッチは必ずしもいい方向に変わるとは限らないとしたら、あなたはそのスイッチを入れますか?


なんと!
僕は今日、そのスイッチと出会ってしまったのです!


普段、僕は家から一歩も出ることなく、自宅でずっと作業しているのですが、なぜか今朝は裏山に散歩に行くことにしたんです。
しばらく歩いていると、どこからとなく、鈴の音が聞こえてきました。
誰か、クマ除けに鈴をつけている人がいるんだろうと思ったのですが、その音は一定の距離でずっとついてくる感じだったんです。
僕は鈴の音が聞こえる方に目を凝らし、立ち止まってその人物が来るのを待ってみました。
鈴の音は、徐々に近づいてきます。
しかし、もう少ししたら姿が見えるかなと思った時、鈴の音は鳴りやんでしまったんです。

あれ?と思った瞬間、僕のすぐ背後で鈴の音がなりました!
えっ!?
振り返ると、そこには昨日、マステカッターを買ってくれたお婆ちゃんが立っていたんです!!!

なぜ? お婆ちゃんがここに・・・

僕は頭が混乱して、何が何だかわからなくなってしまった時に、お婆ちゃんは優しい声でこう呟いたんです。

「スイッチをいれなさい」
「ス、ス、スイッチ?」僕は何を言われているのかわかりませんでした。
お婆ちゃんは、「人生を変えるスイッチがそこにあるじゃないか」って言うんです。
僕は辺りを見回しましたが、そんなスイッチは見当たりません。
「どこにあるの?」とお婆ちゃんに問いかけましたが、お婆ちゃんは微笑みながら消えてしまったんです。

そこで、僕は目が覚めました。
なんだ、夢だったんだぁ~

しかし、なんかとっても気になる夢だったので、朝食を食べた後、裏山に行ってみたんです。
夢と実際の景色は、似ているようで似ていません。
お婆ちゃんと出会った場所がどこかもわかりません。

もうそろそろ帰ろうと思った時、何かを踏んだんです。足をそっと上げて見てみると・・・
そこには錆びた鈴が落ちていたんです。

えっ!? 一瞬鳥肌が立ちました。

もしかして、お婆ちゃんと出会ったのはここ?
辺りをよ~く見てみると、なんとそこにはスイッチがあったんです!!!




もしかして、これがあの「世界を変えるスイッチ」?
このレバーを反対側にすると、僕の人生は一変してしまうのか?



最近、イベントでも全然売れないし、このスイッチ入れちゃえば、バンバン売れちゃうようになるのかな~?
でも、必ずしもいい方向に変わるとは限らないんだよな。もしかしたら、富士山噴火とか?



どうする?どうするjucon?
スイッチ入れちゃうの?

って、入れちゃうに決まっているじゃん!
僕には失うモノがないもんね~
富士山噴火したらしたで、いいじゃないの~(笑)

エイッ!



というわけで、僕は今日、「世界が変わるスイッチ」を入れちゃったので、今までのjuconと違います!
おそらく、今週末の伊豆高原クラフトの森フェスティバルでは、作品がバカバカ売れちゃって、あっという間に超人気の作家さんとなり、juconの作品を買うのは3年待ちとかなるでしょう~
なので、そうならないうちに今のうちに買っといた方がいいんじゃないの~?(笑)

これからjuconがどうなっちゃうのか、とっても楽しみです!


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クリスマスの想い出

2014-12-24 18:56:39 | Novel
クリスがいなくなって、数週間もすると、クラスの皆は平常を取り戻したようだった。しかし僕の心にはポッカリ穴が空いたままだ。

使う者を失った机と椅子だけが、クリスの存在を微かに感じせせてくれていた。


クリスはとうしているんだろう?
そんな気持ちで過ごしていたある日、またうちのクラスに転校生がやって来た。
大阪からやって来た、その転校生は身長も大きかったが横にもデカかった。いわゆるデブというやつだ。そのデブは、カラダがデカいが、見るからに小心者な印象だ。

先生は大きな文字で彼の名前を黒板に書いた。
高木 一
「今日から、このクラスで一緒に勉強することになった高木一(タカキハジメ)君です」

僕は、まだ一言も会話を交わしてないこの高木君が嫌いだった。

それは・・・


微かにクリスを感じさせてくれていたあの席に、高木君が座ることになるだろうことを予想していたからだ。

何も知らない高木君は、照れた笑みを浮かべながら、その席に腰を落とし、隣の僕に「よろしくね」とぎこちなく言った。
僕にとっては、クリスの想い出が、彼の体重で押しつぶされた瞬間だった。


そんな気持ちが、そうさせたのかは定かではないが、僕は休み時間に、黒板に書かれた、「高木」と「一」の間に、カタカナで「ブ」と書き込んだ。
それから、彼はクラスのみんなから「ブー」と呼ばれるようになった。


転校して来てまもなく、ブーはその見かけと、小心者ということで、イジメの対象になった。この時はまだ、今ほどイジメにたいして敏感な時代ではなかった。


その当時、東京では野球と言えば巨人。ゴールデンタイムには毎晩テレビで巨人の試合が放映されていた。少年たちは皆ジャイアンツの帽子をかぶり、ジャイアンツの勝利に一喜一憂の毎日だった。誰もが王や長島に憧れていた。
そんな時代に、ブーは阪神タイガースの帽子をかぶって登校して来ていたことも、イジメられる要因だったのかもしれない。



そんなある日、ブーの父ちゃんが無職という噂が広がった。
今なら、無職も珍しくはないが、当時、日本は高度成長の時代、仕事がないなんてことは考えられなかった。



僕はブーに、「お前の父ちゃん、無職なんだってな」とストレートに言ってやった。


ブーは少し考えて・・・
「ちゃうよ」と小さな声で応えた。


「じゃ、何してんだよ?」




その問いに、ブーは驚くべき答えを返してきた。





「サンタクロース」




あまりの意外な答えに一瞬言葉を失った。





「ばっかじゃね~の、こいつ! サンタクロースなんていないよ」と僕が言うと、ブーは「じゃ、プレゼントいらんのか?」と言った。




「いや、プレゼントは欲しいけど・・・」

実際には、僕はサンタクロースの存在を半信半疑に思っていた。

半信半疑のサンタクロースだったが、僕はひそかに野球盤をお願いしていた。この頃ちょうど「消える魔球」の機能がついた野球盤が発売されたのだ。


「信じてへん人には、サンタはんは来ないよ」
ブーの言葉が心にひっかかった。




そして迎えたクリスマス・イブの夜。
はたして、サンタクロースは本当にいるのだろうか? そしてクリスマス・プレゼントは届くのか? 

僕は必死に眠い目をこすりながら、布団の中で息をこらし、サンタクロースを待ち構えていた。
しかし、いつの間にか眠りについてしまい、目が覚めた時には枕元にプレゼントが。

しかし、そのプレゼントはあまりにも小さかった。どう見ても野球盤ではないことは、箱を開けなくても明らかだ。
箱の中から出て来たモノは、カルタだった・・・

カルタかぁ~ 野球盤とはほど遠いよな~ ブーに優しくしなかったから、野球盤来なかったのかな?



そんなことを考えていたら、ブーにはどんなプレゼントが届いたのかが無性に気になり始めた。
僕はブーに電話をして、何をもらったか聞いてみた。


ブーは、「見に来る?」と言った。
何をもらったかすごく気になった僕は、すぐにブーの家に向った。



「おいブー、何をもらったんだ?」僕は、顔を見るなり、そう問いかけた。



「これや」ブーが自慢げな顔で指差したモノは・・・



なんと、僕の欲しかった野球盤じゃないか!




しかし、その野球盤は僕の知っているモノとはちょっと違っていた。

なんと、その野球盤にはラッキーゾーンがついていたのだ!
こ、これは、甲子園球場!
野球と言えば、ジャイアンツの時代、阪神タイガースのホームグランドである甲子園球場の野球盤なんて・・・


「これは父ちゃんの手作りや」
ブーが誇らしげに言った。

その完成度の高さに僕は思わず、こう言った!
「ブー、お前の父ちゃん、本当にサンタクロースだな!」


僕とブーは早速、その野球盤でゲームを楽しんだ。もちろん僕がジャイアンツで、ブーがタイガース(笑)
消える魔球はついてなかったけど、そんなのは全然気にならなかった。夢中で何度も何度も試合を繰り返した。

あまりにも熱中し過ぎて、さすがに疲れて来たので、ちょっと恥ずかしかったけど、僕は「カルタでもしない?」って言ってみた。


ブーは「サンタはんにカルタもらったんだ。カルタもええね!」って。
その言葉を聞いて、僕のプレゼントも悪くないかと思えた。
そして、ブーの大きなカラダが、ポッカリ空いてしまった心の穴を塞いでくれたようにも感じた。


今思えば、ブーのその優しさが、僕にとって本当のクリスマス・プレゼントだったのかもしれない。
その日以来、僕とブーはクラスで一番の友達になったのは言うまでもない。





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ハロウィンの想い出

2014-10-31 17:33:59 | Novel
毎年、この時期になるとクリスを思い出します。


当時、僕は小学2年生。
アメリカから転校生がやってくると聞いて、どんなヤツが来るのだろうと、内心ドキドキしてました。


担任の先生の後ろから、教室に入ってきたのは、黒髪の女の子。
てっきり、金髪の女の子が来るのかとばかり思ってました(笑)


クリスは、父親がアメリカ人、母親は日本人です。
彼女は日本で産まれましたが、産まれた時から心臓に疾患をかかえていて、出生直後にアメリカで心臓移植の手術を受けたそうです。そしてそのままアメリカで暮らしていたのですが、お父さんの仕事の都合で、再び日本にやってきたみたいです。

クリスは、お母さんが日本人ということもあり、カタコトの日本語を話しました。
しかし、日本の生活に慣れるには、しばらく時間がかかりました。
今では帰国子女は当たり前かもしれませんが、当時はそんな子は彼女以外いませんでしたので、周りの人間も戸惑ったんだと思います。


そんなクリスと、僕はなぜか気が合いました。
彼女の話す、アメリカでの生活の様子が、とても興味深かったんです。
その時のことで一番印象に残っているのが、ハンバーガーの話でした。ハンバーグをパンに挟んで食べる? 当時はまだマクドナルドさえなかった時期です。都下に住む少年が、ハンバーグなど知る由もありません。
クリスは、クレヨンでハンバーガーの絵を描き、レタスやトマトなどが入っていることも教えてくれました。

そんな感じで、僕はいつもクリスの話にワクワク、ドキドキしていました。


ある日、クリスが言いました。
「パーティーがあるの、家に来ない?」って。

「えっ、クリス誕生日なの?」
その頃の僕は、パーティーと言えば、誕生日くらいしか思いつきません。


「明日は、ハロウィンでしょ!」

「えっ、ハ、ハロイン?」

僕は、その時初めてハロウィンという言葉を聞き、アメリカでは、10月31日に子どもたちが仮装し、ハロウィン・パーティーが開かれると知りました。


すげぇ~ アメリカって、すげぇ~!!
なんか、超面白そう!


と、そう思ったんですが、心の中では仮装ってどうすればいいんだ?という不安も・・・
あの頃は、東急ハンズもドンキ・ホーテもないんですよ。仮装するって言ったって、どうすりゃいいのか全然わかりません。

けっきょく、その場では行くとも行かないと言わず、クリスと別れたんですが、仮装をしないで僕がその場に行くのは、やっぱりみんなを白けさせちゃうじゃないかと思ったんです。だから、翌日クリスに電話して、僕は風邪をひいて、熱が出たので行けないって言っちゃったんです。
クリスはとても残念がっていたけど、優しく「お大事にね」って言ってくれました。


仮病を使った僕は、外に出ることも出来ず、家の中で悶々と、経験をしたことのないハロウィンパーティーを妄想していたんです。クリスはいったい何に仮装したんだろう? みんな美味しいモノとか食べているだろうな~ もしかしたらハンバーガーとかあったりして・・・とか考えているうちに、なぜだか涙が出てきました。

やっぱり、行けばよかった・・・

とっても切ない気持になって、晩御飯もあまり喉を通らなくて、もう寝ちゃおうかなって思った時に、玄関のチャイムが鳴ったんです。お袋が大きな声で、僕の名前を呼びました。

玄関に行ってみると、そこにはオレンジ色のウェディングドレスを身にまとったクリスが!!

「ドレス、見せたくて! お見舞いにお菓子を持って来たよ」って。

僕はクリスの目を見ることが出来ませんでした。だって、涙がこぼれ落ちそうになるのを見られたくなかったから。

「ありがとう」って言ったかな? 心の中では言ったけど、口には出せなかったかも。
翌日、学校で会ったら、もう一回ちゃんと「ありがとう」って言おうと思いました。


しかし、ハロウィンの翌日から、クリスは学校に来なくなってしまいました。心臓の病気が、急にまた悪くなったらしいんです。
先生は、クリスが入院したと教えてくれて、しばらくは学校にも来られないだろうって言いました。

僕は、早くクリスが元気になって、またアメリカの話を聞きたいなって思っていたのですが、もう2度と学校に来ることはありませんでした。クリスはアメリカで再手術をうけることになったんです。


その後、クリスがどうしているか、全くわからなかったんですが、2年経って手紙が届きました。手術は成功して、アメリカで元気で生活していると。そして、もう日本には戻らないとも・・・

クリスは、その後20歳でアメリカ人と結婚し、子供も授かりました。
しかし、クリスの心臓は出産には耐えられず、子供の命と引き換えに、永遠に会えない人となってしまったんです。あの時の「ありがとう」はけっきょく言えず終いになってしまいました。


毎年この時期になると、 クリスの娘から、Happy Halloweenのカードが届きます。



そんな娘さんに、僕はHappy Birthdayとメッセージを送ります。

そう、10月31日はハロウィンでもあり、娘さんの誕生日でもあり、そしてクリスの命日でもあるんです。




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