カフェ・ラベンダー

のんびり気まぐれ生活あれやこれや

「白の闇」

2009-08-04 23:17:05 | 読み物


映画「ブラインドネス」の原作である。著者ジョゼ・サラマーゴ。ポルトガルのノーベル賞作家とのこと。

「ブラインドネス」も映画として面白いものだと思ったが、原作の「白の闇」はこれに輪をかけて素晴らしかった。
哲学的で深いのだ。

それぞれの登場人物の心の動きが細やかに鮮やかに描かれている。映画ではさすがにこうは描けなかっただろう。
これを読むと、映画は小作りにまとめられているなぁと感じる。

段落やカギカッコなど一切なく、ただ連綿と続いていく文章に最初びっくりしたが、リズミカルな表現力に惹き込まれてすらすらと一気に読んだ。

先に映画を見たので、主人公である医者の妻は演じたジュリアン・ムーアを思い描きつつ読んでしまった。本当にぴったり。

この本の何年後かを描いた作品もあるそうだが、日本語訳は未だ。早く読みたいものだ。


「沈まぬ太陽」

2009-07-31 22:20:44 | 読み物
最近blog更新がままならなかったのは山崎豊子氏のこの本のせい。



今さらですが、単行本5巻、寝食を忘れて読み耽っていました。
渡辺謙さん主演でこの秋に映画化されるそうです。

日航機の御巣鷹山墜落のあの大惨事のみならず、日航社内の腐敗体質まで深く抉って描いており、読み応えのある一作でした。
もちろん本では日航JALでなく、国民航空NALと名を変えていますが、リサーチにリサーチを重ねた結果書いた小説らしく、事実に近いらしい。
出て来る政治家の名前も想像がつき、顔を思い浮かべてにんまりしてしまいます・・・

それにしても80年代のあの当時に労組が2つでがちゃがちゃやりあっていたというのに、現在はさらに増えて7つもあるというのだから、この会社はどうなってしまっているのだろう。経営も破綻しているそうだし。
本の主人公の清廉潔白な恩地や会社再建のために迎え入れられた国見会長の努力は後々になっても全く実を結ばなかったのでしょう。

御巣鷹山で犠牲になられた方々と残されたご家族の無念さに涙がこぼれ、アフリカなど発展途上国を10年にわたり盥廻しされた恩地の姿に泣きましたわ・・・

飛行機内の客席のシートベルトはこの本の中でも言われているように、パイロットやCAがしているような4点式の肩掛けベルトに全てすべきだと私も思います。ヘルメットを座席下に装備してもいいのでは? コストの問題もあるのでしょうが、あれから20年以上経つのに各社何故改善していないのか本当に疑問!

山崎豊子さんは今85歳。益々意気盛んで骨のある人物であり、最近書かれた西山事件をモデルにした本も図書館に予約しました。

「テンペスト」

2009-04-25 22:07:41 | 読み物
このところ、なかなか小説が読めないけれど、最近一気に読み上げて面白かったのがこの本。

 


1800年代、清と薩摩の挟間にあって、バランスをとりながら揺れ動いた琉球王朝を舞台に活躍する男装の麗人、孫寧音(真鶴)。清の科挙を模した科試(官吏登用試験)に男装して臨み、首席で合格し宦官と偽って宮廷に入り込む。はたまた女に戻らざるをえなくなり、王の側室になって、と、とにかく彼女の波乱万丈の人生をハラハラしながら読みすすんでゆく。彼女の清廉潔白さやその活躍に胸すくような思い。ちょっとグロいところもあるけどね。今の政治家や役人さんにも読ませてあげたい本だ!

そしてラブ・ストーリーあり、ペリーの来航ありで、琉球の歴史、日本の開国の過程などを別の角度から読み解くといった観点からも抜群に面白い本だ。独自の文化を持っている沖縄は沖縄国として独立した方がいいのでは?とこれを読んで思ってしまった。

作者の池上永一さんはやはり沖縄出身だそうだ。よくリサーチして書いているな、と思った。

「チャングムの誓い」みたいに映画かTVドラマにしてもとても面白いものができると思う。

龍の爪を数える癖がついてしまった・・・

最近読んだ本

2009-01-12 00:12:31 | 読み物
どれも非常に感銘を受けました。

○「介護のあのとき」 南田洋子

昨年、夫の長門裕之が、認知症になってしまった洋子さんを介護している様子がTVで放映されました。
私は洋子さんの許可もとらずに、あそこまでTVカメラを入れてしまったことに対して沸々と疑問がわき起こっていました。
それであらためて洋子さんの書いた本も読みたくなりました。舅の介護は壮絶でした。


○「からゆきさん物語」 宮崎康平

作者の聞き書きしたノンフィクションに近いものです。力作です。

○「まぼろしの邪馬台国」(上) 宮崎康平

「からゆきさん物語」を読んでから、興味を惹かれて読みました。
今九州に住んでいるから、書いてあることがとても身近に感じられる。
下巻が楽しみです。


○ 「34歳でがんはないよね」 本田麻由美

母が今月末、がんの手術を受けることになり、動揺しました。
だからというわけではないのですが、たまたま目についたこの本を読みました。
力作です。読んだ私まで泣いてしまいました。読売新聞記者の本田さんの闘病記。


○ 「太郎が恋をする頃までには」 栗原美和子

こちらも同和問題にメスを当てた、かぎりなくノンフィクションに近い著者自身の体験記・作品です。力作です。


○ 「老いるヒント」 シャーウィン・裕子

やはりノンフィクションです。著者自身の半生記と彼女の住む英国のシニアたちのお話。力作です。


○ 「長生き競争」 黒野伸一

昨年TVドラマにもなったそうです。年をとること、病気をすることがとても怖くなった・・・








「ハリー・ポッターと死の秘宝」を読んで

2008-09-08 08:46:07 | 読み物





長い間途中中断しておりましたが、ようやく読了しました。

感無量ですわ。じ~んとしてます。
シリーズ初刊の「賢者の石」を読み始めてからもう7年(でしたっけ)。
自分はハリーと共に長い長い旅を終えた気分になりました。

満足です。いろいろ取り沙汰されておりましたが、やはり最後は王道、こうこなくっちゃね、ローリングさん♪

しかし映画版のスネイプ先生、アラン・リックマン。原作のイメージとぴったり合って影のあるいい男です。彼を思い描きながら読んでいました。
今回はスネイプ先生に乾杯!
そして皆さん、お疲れさま!

「クライマーズ・ハイ」

2008-07-28 23:20:34 | 読み物
映画に続いて原作を読みました。





う~む、この原作を部分部分で削ぎ落として、よくあそこまで見応えのあるドラマに仕上げたなぁと感服です。
大抵は原作の方がいいということが多いなかで、今回は映画の方がよかった、と思いました。

原作は主人公の内面・心情に重きをおき、山を通した息子や友人との関係、新聞社内のどろどろした人間関係などさすがによく描けていると思いましたし、映画の中でレンセキ、レンセキと言っていた連合赤軍事件や大久保事件と地元新聞社との関わりなど映画でよくわからなかった部分が原作の方ではよくわかりましたけれど、手に汗握るあの緊迫感や迫力、新聞社内の様子、役者さんたちの素晴らしい演技などが優り、今回は映画に敵うものではないなぁという感じがします。

ただ、一応フィクションとはいうものの、あそこまで詳しく描きながら、あの飛行機事故で亡くなってしまった坂本九さんに原作・映画とも一切触れずというのは不自然で腑に落ちない感じがしました。意図的であるとは思いますが。

「ハリー・ポッターと死の秘宝」

2008-07-28 00:26:32 | 読み物
暑い、暑いと毎日口癖のように言いながら生活していますが・・・

今日の日曜は新しく発売された「ハリー・ポッター/死の秘宝」最終巻を買ってきました。
これって外国では去年、とっくのとうに発売されたものじゃなかったっけ?
何故に日本だけ翻訳がこんなに遅れているのか全くもってわかりません。もっと早く出ていてもいいはずと思うのだけど・・・
でも英語版の方での結末、ネタばれなど一切耳に入れないようにしておきましたので。
今夫がまず読んでいて、面白そうにしているので楽しみです。

「ハリポタ」は第1巻目がダントツ面白くて、あとは年々段々とつまらなくなってしまったし、1年に一巻のスローペースなので、前に読んだ内容を忘れてしまっていたりするから、もういいかなぁ、などと思ったりしたのだけれど、毎回買ってるものはやはりきちんと揃えたい、ということと、最終巻だしハリーたちの行く末がやっぱり気になりますものね。買いましたわ。

それともう一つ、ツタヤで1000円以上買い物してポイントをつけてもらい、スタンプラリーに参加すると、マイカルで二ヶ月間只で映画を見られるパスポートをもらえるキャンペーンに応募できるんですって(当地方)。当たる確率はすごく低いとは思うけど、出さないと当たらないものね。クジ運が案外よくて、以前にもハリポタのキャンペーンで、DVD50枚頂いたこともあるんです。映画が大好きだから、そういうわけで、どうしても今日は我が家から遠い方にあるキャンペーンをしているツタヤに行って本を買う必要があったんです。

そして夕方はプール、と、あまり変わり映えしない夏の日曜になりました。








「ヒトラーの贋札」

2008-05-11 22:52:56 | 読み物





映画化もされているようだが、原作の方を読んだ。

スロヴァキアのユダヤ人植字工であった筆者、アドルフ・ブルガーのアウシュヴィッツ、ビルケナウ、そして贋札作りをさせられていたザクセンハウゼンの各強制収容所でのあまりにむごく生々しいノン・フィクション体験記である。

ヨーロッパ史上最悪の時代を生き延びた彼の体験、それはこのような体験記を読むといつも感じることであるが、人間が人間に何故あのようなむごいことができるのかと。目を覆い、耳を塞ぎたくなる、涙が滲み、怒りに震える。そして、もし自分だったら、と思うと恐怖のどん底に突き落とされるのである。

後半部は彼の関わらせられたナチスによるイギリスやアメリカなどのポンドやドル紙幣偽造についての記述である。秘密裏に集められ作業させられた植字工は一般の他のユダヤ人たちよりよい待遇を受けた。だからブルガーも生き延びることができたのかもしれない。手に職のない自分だったら真っ先に殺されていたはずだ。後半部は興味深かったが、私がじっくりと読んだのはあまりにショッキングでつぶさに描かれた前半部に尽きるのである。

冷静な目でしっかりと見据え、思い起こして書き上げた彼の、そしてユダヤ人たちの体験。今、彼は何故に今でも生かされているのか、また生き延びられたのか、と自問する。そして生き証人としてナチスによる蛮行を告発、証明するために生かされているのだ、と自答している。また将来への警告である、とも。

彼の記述は称賛に値するし、このようなことはしっかりと後世に語り継いでいかなければいけないと強く思う。ショッキングであると同時に迫力のある読み応えのある本である。