2020年9月23日(水)
スティグマ stigma という言葉がせっかく緩徐に浸透しつつあるのに、新型コロナ関連での用例を寡聞にして知らない。
人々は(=われわれは)、「新型コロナ」という感染症を恐れる以上に、それによって付与されるスティグマを恐れている。スティグマを付与されることへの恐怖が、先手をとって他者にスティグマを付与しようとする浅慮に結びつく。ことの仔細はスティグマの社会学が夙に明らかにした通りで、それを援用すればずいぶん思考過程を省力化でき、予防にも資するだろうに。
八月に東京を発つとき、「知ったことか」と宙に向かって吐き捨てた。
人に伝染(うつ)そうがクラスターを起こそうが「知ったことか」と言ったのではない。
これだけ準備もし熟慮を重ねての決断に対して、人がどう言おうと「知ったことか」と肚を決めたのである。
誰も何も言いはしなかった。それどころか、少数ながら関わりの生じた人々の理解と配慮がありがたかった。
何か言いたそうにしていたのは、遠巻きに眺めて関わろうとしない「縁者」の方である。
コロナ禍は、実にさまざまなものを明るみに出す。
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