散日拾遺

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校歌を耳にして楽しむこと

2022-08-23 08:06:40 | 日記
2022年8月22日(月)
 勝ちあがるチームの校歌を繰り返し聞くうちに、何となく覚えてしまうことがある。1978(昭和53)年センバツ優勝の浜松商業がその初めだった。

   朝日直刺(たださ)す 富士の秀峰(ほつみね)
   夕陽かゞよふ 浜名淡海(あわうみ)
   曳くや霞の 曳馬の野辺に 
   緑芽(みどり)伸び行く 若松我等 

 古風だが、いたずらに力むところのない和やかな歌で、とりわけ「ひくやかすみの/ひくまののべに」とある「ひく」の韻律に心「ひかれ」た。

 対照的に大いに勇ましくて印象に残るのが熊本工業の校歌:

   山は大阿蘇 地軸揺りて
     大空焦がす 久遠の神火
   川は白川 昼夜分かたず
     清流滔々 巨海へ放る
   大なり山河 我等の揺籃

 インターネット知恵袋に「ひらがなで書いていただけませんか? 難しい漢字ばかりなので困ってます」という書き込みがあったが、今どき無理もないか。親切で正確なベストアンサーが下記:

   やまはおおあそ ちじくゆすりて 
     おおぞらこがす くおんのしんか
   かわはしらかわ ちゅうやわかたず
     せいりゅうとうとう きょかいへいたる
   だいなりさんが われらのようらん

 質問者はさすがに卒業生ではないはずだから、当方と同じく何らかの事情で関心を抱いたのだろう。
 熊本工業といえば1996(平成8)年の「奇跡のバックホーム」で敵役を演じた往年の強豪・松山商業、こちらは同郷人の心得というもので…

   石鎚の山 伊予の海
     金亀城頭 春深く
   緑の旗や 商神の
     もすそに匂ふ 百千草
   秋万頃の 波打てば
     空に黄金の響きあり
 
 石鎚(いしづち)山を、ここでは石鎚(せきてつ)と読む。金亀(きんき)城は松山城の愛称で、姫路城を白鷺城、広島城を鯉(り)城と呼ぶが如し。
 「あきばんけいの/なみうてば、そらにこがねの/ひびきあり」と言葉もカッコよく、リズムに乗って朗らかな歌である。

 そして今回、仙台育英が準々決勝を制したとき、たまたまTVを点けていて「おや」と思ったのがその冒頭。
 
   南冥遙か 天翔る
     鴻鵠棲みし青葉城
   ああ松島や 千賀の浦
     天の恵める青葉郷
   ここに根ざしし 育英の
     我が学舎に 栄光あれ

 土地の名勝を読み込むのは常道、「ああ松島や千賀の浦」はメロディーに乗ってよく伸びる。ちなみに二番の歌詞が興味深い。

   平和の光 民主国
     護憲の教え あきらかに
   我が日の本の 国のはな
     学びの園に咲き匂う
   斯の道守る 育英の
     我が学舎に 栄光あれ

 「民主」や「護憲」を戦後のものと受けとるなら変哲もないが、「我が日の本の 国のはな」には違う空気がある。実際「加藤利吉作詞/服部正作曲、昭和5年2月22日制定」とあり、その経緯に興味がもたれる。
 それはさておき「南冥」と聞いては、連想が働かずにいない。そこへいく前に三番は「見よ北辰は 燦として/理想の彼岸に 輝けり」の歌い出しで、「北辰」が一番の「南冥」と対句を為す。
 北辰は北極星の謂であり、古代中国の宇宙観においてひときわ貴いものと見なされた。
 
Ω

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