散日拾遺

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三度で最後、カチアゲにあらず

2019-11-22 06:43:27 | 日記
2019年11月22日(金)
 「しかし、白鵬の心は揺らがなかった。「自分の一番だけに集中していた。まず起こしてから攻めたかったと、立ち合いで右から強烈にかちあげた。遠藤の体が起きないと見るや、右、左と矢継ぎ早にほおを張った。最後は上からつぶすようにして遠藤をはわせた。」
(朝日新聞朝刊スポーツ面)
 まあ阿るものだが、これって褒めてるんですか?
 とてもそうは読めない文面だが、人がこれを読んで「素晴らしい」と感じることが想定されているとしたら、こちらがよほどズレているんだろう。的確な描写で取り口の粗暴さがよく伝わるが、一点異議あり。
 添えられた写真に「遠藤(左)に右ひじを入れる白鵬」とあり、その通り90度に曲げた肘が首筋に食い込む瞬間が鮮やかに示されている。これが証拠写真。(白鵬の右ひじが遠藤の左ひじより上にあることに注意。下記のように定義されるカチアゲならば、これは逆でなければならない。)

 そもそも、かちあげ【×搗ち上げ】 とは、
 相撲で、立ち合いに相手が頭を低くして出る時、ひじを直角に曲げて相手の上半身を下からはね上げ、相手の上体を起こす技。
 https://dictionary.goo.ne.jp/word/搗ち上げ/ 

 白鵬のそれは常に正面から水平に(時には上から下に向けて)相手の頭部・顔面を強打しており、上半身を下からはね上げるものではない。力を加える方向が全く違うのである。でなければ、あんなふうに鼻血が飛び散ったりはしない。昨日解説の舞ノ海さん、日頃めったに批判がましいことを言わない人が、
 「白鵬のあのかち上げ・・・ひじ打ちは後味が良くないですね、歴代の横綱はこういうことはしませんでした。」
 と珍しく苦言を呈し、その際正しくも「ひじ打ち」と言い直した。あれを「かちあげ」と呼ぶことが、この言葉と相撲の技を歪めているのである。言葉は正しく使いたい。
 僕の知る中で、この点を最も明晰に指摘したのが境川親方だった。いつでもどこでも、骨のある人である。
 「あらためてカチアゲにあらず/境川親方」(2018年1月19日)
https://blog.goo.ne.jp/ishimarium/e/6b25442d19749ae21dfef17881bd0ce7

 拳(こぶし)を固めて殴るのが禁じ手なら、肘鉄をかますのも禁じ手であるのが当然の道理というものだ。

Ω
 

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