散日拾遺

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5月21日 リンドバーグ 大西洋単独横断に成功(1927年)

2024-05-21 03:03:00 | 日記
2024年5月21日(火)

> 1927年5月21日、チャールズ・リンドバーグは大西洋無着陸単独横断飛行に成功した。「翼よ、あれがパリの灯だ!」という感動的な台詞をご存知の方も多いだろう。飛行時間は約33時間、いまだ誰も達成していなかった偉業であり、2万5千ドルの賞金がかけられていた。
 リンドバーグは1902年にデトロイトで生まれた。ライト兄弟の飛行の一年前であり、飛行機という世紀の発明とともに育った世代である。十歳の時に飛行機を初めて見て以来、大空に憧れ続け、21歳で早くも自分の飛行機を手にしていたという。
 偉業を達成した時に乗っていたのは、そのために特別に注文したスピリット・オブ・セントルイス号で、たった60日で設計製造された。この飛行機は、顕著な特徴を持っていた。まず、巨大な燃料タンクを機体前方に取り付けたこと。これは墜落の時に操縦席が押しつぶされないためだったという。そして故障のリスクを減らすためエンジンは単一。補助翼と尾翼は小さく、操縦の難しい飛行機だった。わざと操縦を難しくしたのは、眠くなるのを防ぐという目的もあったらしい。
 偉業達成後、大きな名誉を手にしたリンドバーグだったが、英雄扱いは好まなかったようだ。その後、妻にも飛行機の操縦法を教え、二人で中国への航空図を作成、1933年には太平洋横断航路も開拓した。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.147

  
Charles Augustus Lindbergh
1902年2月4日 - 1974年8月26日

 セントルイスにはリンドバーグという名の通りがあり、空港には機体の大きな模型がぶら下がっていたが、件の搭乗機が「セントルイス魂」と名づけられたこと以外に、町と人物の縁を感じさせるものはとりたててない。出身地はデトロイトだし、なぜ「セントルイス」か分からずじまいだった。
 名前の感じからユダヤ系かと思って訊いてみたら、マデロン・プライスに一蹴された。「とんでもない、それどころか反ユダヤ主義者だったわよ!」
 実際はスウェーデン系で、少なくとも大戦前に親ナチス的であり反ユダヤ的であったのは事実らしい。一時は大統領候補とまで噂されたものの、政治向きの人物ではなかったようである。第二次大戦では太平洋戦線で軍務に関わり、日本人捕虜に対する連合軍の虐待と、日本軍による連合軍捕虜への同種の行為とを、こもごも記録している。1970年の大阪万博に来日し、太平洋横断飛行の搭乗機シリウス号とともに会場に姿を現した。

 上掲書は彼の輝かしい部分を拾っているが、陰の面もいろいろとある。
 1929年に結婚した相手がアン・モロー・リンドバーグ。夫の導きで女性飛行士の草分けともなったが、それより『海からの贈り物 "Gift from the Sea"』で知られる作家として名高い。「さよなら」という日本語の美しさを発見し、感動をエッセイに書き記したのはこの人である。
 この二人の最初の子である長男が1歳8ヶ月の1932年、自宅から誘拐され、2ヶ月余り後に遺体で発見された。やがてドイツ系移民のリチャード・ハウプトマンという男が誘拐殺人容疑で逮捕され、有罪判決を受けて死刑となった。当時チャールズ・リンドバーグの自作自演説が囁かれたのは邪推が過ぎるとしても、ハウプトマンに関しては冤罪の可能性が捨てきれないという。アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』はこの事件に想を得ている。
 夫妻はその後、五人の子どもに恵まれた。晩年は夫妻でハワイ・マウイ島に住み、環境保護活動に尽力した。その一方で夫チャールズ・リンドバーグは、第二次大戦後に知り合ったミュンヘン在住のドイツ人女性との間に生涯にわたる親密な関係を営み、三人の非嫡出子をもうけたという。行動範囲の広さは、さすがというべきか。

 もう一つ調べて驚いたのは、彼が人工心臓の開発に関わっていることである。ただのヒコーキ野郎でなかったことは間違いない。

> リンドバーグには心臓弁膜症を患っている姉がおり、心臓病の治療法を開発したいという思いから生理学者アレクシス・カレルの研究室を訪れた。2人は意気投合し共同研究をおこない、1935年に「カレル・リンドバーグポンプ」を開発。これは今日の人工心臓に影響を与えている。組織が体外で生き続るための生理学的条件についてはカレルの知識が、血液を連続して環流させるポンプ装置の発明についてはリンドバーグの工学知識が生かされた。


資料と写真:

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