散日拾遺

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2チャレンジルールなど ~ 良心的な技師らのあたりまえの日常

2016-11-10 08:33:01 | 日記

2016年11月9日(水)

 ひどく密度の高い一日になった。全体を振り返る前に、ひとつ抜き出しておく。

 放送大学の大学院OBであるSさんから久しぶりにメール来信。放射線技師として愛知県内の病院にお勤めで、放送大学に着任初年度のゼミ生だったこともあってとても懐かしい。実直な人柄がよく表れた研究 ~ 放射線被曝を最小限に抑えるための現場での基礎実験 ~ をなさった。ただ本来の関心事は別にあり、精神的な問題をかかえた人々がMRI検査を安心して受けられるには、どうしたら良いかといったことを考えていたのである。大事なテーマだが諸般の事情からそのままの形で実現することは難しく、テーマを変更したのだった。

 そんなSさんが当ブログを見つけて御笑覧のうえ、2年前の記事にしっかり目を留めたのは流石というものである。母校の附属病院でMRI検査を受けた際、不愉快かつ納得のいかない思いをした件で、この件がひとつのきっかけになってその後は同病院へ通うのをやめた。

 ただ、これをSさんが(同じ職種にあるものとして)「恥ずかしい」とおっしゃるのは「違う」のである。僕のポイントはあくまでも当該病院の姿勢を問うことにあり、僕こそ同大学の卒業生として、こんな醜態を書き散らすのは恥ずかしく腹立たしいことなのだ。心ある全国の技師さんたちを非難するつもりは毛頭ない。今どきこんな姿勢で仕事している当該スタッフと、形ばかりに「投書箱」などを置きながら、あれだけ明白な抗議に何の反応も返さない当該病院が、時代に遅れモラルに悖ると言いたかったのである。

 僕の書き方が不十分だったかもしれず、Sさんが良心的なあまり少々強く反応なさったようにも見える。心理学用語を借りるなら「原因帰属の食い違い」とでもいう類いのミスマッチである。いずれにせよSさんの書いておられることが貴重なので、了解をいただいたうえで下記に転載する。「2チャレンジルール」は実践知というものだ。文中、Sさんの所属先等については敢えて伏せた。良いことなのだから構わない理屈だが、思いがけないことから思わぬ迷惑がかかってもいけないので。

 全国の良心的な医療職御一同に、重ねての感謝とエールを送りつつ。

***

「石丸先生、ご無沙汰しております。放送大学院でお世話になりました愛知のSです。ブログを見つけ、家内や職場の部下と拝読させていただいております。私は相変わらずA病院で勤務しており、3年ほど前より部門のリスクマネージャーも併任しております。

 突然ですが2014年9月9日のMRI検査での石丸先生のブログを印刷し、私以下8人のスタッフとMR担当看護師に見せたところ「これは酷いよ・・ ・」という回答が口をそろえたかのように出てまいりました。同じ医療スタッフ(MR担当の技師)として、あまりにも患者さんに配慮の無い検査方法に恥ずかしさを感じました 。

 私も大学院時代の研究テーマを思い出し、患者さんはMRI検査室という非日常的な空間で、自らの病気に不安を抱きながら検査を受けて頂いていることが患者さんにとって、どれほどつらいことか理解できない技師が存在することを非常に残念に思います。

 A病院での対応策ですが(通常やっていることです)検査前におおよその検査時間を伝えるとともに、エマージェンシーコールボタンを手渡し「何か異変や熱感等(火傷のリスクが高いため)を感じたら、躊躇なくこのボタンを強く握り、すぐにお知らせください」 と説明します。(これは一番重要なことです。当院の医療安全のN教授より、安全あっての医療であることを強く指導され、具体的には「2チャレンジルール」、すなわち上司であれ部下であれ、これはおかしいと感じる、もしくは思うような医療行為に関しては、必ず2回忠告をするということが推奨されております。)また閉所恐怖症の方には、検査前にMRの装置を見ていただき、加えて検査中に進捗状況を随時知らせることにより、検査不可能な患者が非常に少なくなっております。

 突然のメールで大変、失礼かと存じますが、毎月のMR部門のインシデント、アク シデントのまとめをする中で、先生のブログの一つを見つけたので、どうしても石丸先生にお伝えしたく、メールさせていただきました。乱文で申し訳ありませんがお許しください。

 暦の上では立冬も過ぎ、これから寒さが増してまいります。先生もお体にはお気をつけてお過ごしください。

S拝」

***

【付記】 Sさんの目に止まった2014年9月9日のブログは下記。そこに記した内容を病院内の投書箱に入れたが、その後何の音沙汰もないという経緯である。

タイトル: 母校の附属病院に幻滅 http://blog.goo.ne.jp/ishimarium/d/20140909

 ← 東京医科歯科大学。中央後ろに半分隠れているのが医学部附属病院。

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