以下引用 西日本新聞
手話を言語として位置付け、聴覚障害者の社会参加を促進しようという動きが加速している。
全国初の手話言語条例は鳥取県で2013年10月に施行された。手話を地域全体に普及させ、使いやすい環境整備に県が取り組むものだ。同趣旨の条例制定は全国に広がり、2年余で佐賀県嬉野市など30以上の自治体に及ぶ。制定を検討中の自治体も多いという。
国に同様の手話言語法(仮称)制定を求める意見書もほぼ全ての地方議会で議決された。全日本ろうあ連盟などの働き掛けによるものだが、この急速な広がりは注目に値する。関係者の切実な訴えが、その原動力である。
多くの聴覚障害者は意思疎通が十分ではないために地域や職場で孤立しがちだ。入院するにも、不動産を借りるのにも、不当な扱いを受けることがあるという。
要因の一つに、社会全体として手話に対する理解不足がある。聴覚障害者がストレスなく使える言語であるという現実を受け止めるべきだろう。指や手、体の動き、顔の表情を使い意思疎通を図る手話は、生活の中で生まれ受け継がれてきた独自の文化でもある。
苦難の歴史もあった。ろう教育は相手の口の動きで会話を理解する「口話法」が長らく推奨され、手話は学校でも事実上禁じられていた。教育手段と位置付けられたのは1990年代からだ。その結果として、手話の教育と普及は今も心もとない水準のままだ。
障害者に保障するコミュニケーションとしての言語に手話を含める。この考え方に立つ障害者権利条約を日本は14年に批准した。改正された障害者基本法も言語には「手話を含む」と明記している。
それなのに手話を学び使うための環境を整えるのに十分な具体策が国から出てこない。地方で独自条例制定が相次ぐのは埋まらないニーズの大きさを示している。
聴覚以外の障害者施策とのバランスはあるだろう。それでも多様性と共生を尊重する社会を目指すために国は手話の普及に本腰を入れてほしい。機は熟している。
=2016/02/01付 西日本新聞朝刊=
「手話言語法」「手話言語条例」、各新聞で続々と取り上げられるようになってきますね。