ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

パーティ会場で思うインド社会の格差

2007年06月24日 | インターン@インド ハイデラバード

 

 一週間で唯一の週末である日曜日ですが、来週も出張でフィールドを回る予定であるため、プロジェクトを進めるべく日中は出勤。そして夕方からは、先日のホームパーティに招いていただいたアキコさんとフリデリックさんカップルに誘われて、フレンチのミュージシャン、Emily Loizeauの演奏パーティに参加してきました。

    

 パーティの会場となったのはハイデラバードの最高級ホテル、ITC Katatiya Sheraton。会場には着飾った大勢のインド人に加え、外国人もちらほら。ホテルは本当に豪華で掃除も隅々まで生き届いていて(トイレに紙もあるし)、もう別世界です。

 これまで3週間、町中のレストランや露店で、一食せいぜい50ルピー(150円)で生活し、Chaoticな交通渋滞の中をオート・リキシャーで通勤し、さらに先週は農村部の生活を目の当たりにしていたため、本当に同じハイデラバードの町にいるのか、インドという同じ国の中にいるのか、何やら白昼夢を見ているような気分にさせられます

 ちなみにKatatiya Sheratonホテルの宿泊料金は最低8,000ルピー(24,000円)からとのこと。金銭感覚もインドの一般人モードになっている僕にとって、これは目が飛び出るくらい高い!しかし同時に、ハイデラバードが他のインドの大都市と比較して外国人の数が極めて少ないことを考えると、この金額を支払うことのできるインド人が相当数いるということも推察できます。

 パーティに参加しながら図らずも、改めてインド社会に存在する超巨大格差に気付かされることになりました。

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 ハイデラバードで生活をはじめて3週間が経ちましたが、街を歩いていて感じるのは、人々の生活水準や店の水準が概ね3階層くらいに分かれているということです。

 一つは、例えば、僕が暮らすゲストハウスのすぐ前に広がっている非常に質素な集合住宅のようなスラムに近い生活水準。明日の食事に困っているような人々を見ることはなくても、靴をはいている子供を見かけることもまた希で、人々は細々と暮らしています。

 二つは、インドの一般大衆。常に大勢の人々でごったがえす道端に並ぶ露店や食堂、マーケット、人があふれ返えっている古びたバスなど、ハイデラバードで日常的に目にする風景を形作っています。僕がこれまでBasixの同僚たちと飲食をしたり買い物をしたりしていたのが、この水準にあたります。ちなみに、Basixの若手(入社1~4年目が務めるアドバイサーやFiled Executive)の月給は10,000ルピーから15,000ルピー(3万円~4万5千円)程度とのこと。この給与水準はインド大手企業と比較すればやや劣るものの、インド大卒の平均給与水準よりも高いということです。つまり、インドの普通のサラリーマンは、月給5万円前後でそれなりの生活をしているということです。

 そして、三つ目は雑然とした街中に突然姿を現すマクドナルドなどのファーストフード店、ブランドショップ店、そしてデパートです。ここは店内の雰囲気も価格も日本やアメリカとほとんど変わりません。そして共通しているのが、店の前には必ずガードマンが立っていて、手荷物を預けてから店内に入ることが義務付けられている点。

 たとえば、昨日、Basixでインターンとしてともに働いているイラン系オランダ人のレザに連れて行ってもらったケンタッキーフライドチキン。

  

 ここで、ハンバーガー、ポテト、コーラのセットを頼むと価格は112ルピー(330円)。日本では確か450円位だったと記憶しているので若干安いくらい。これまで3週間「庶民レベル」の飲食店で食事をしていた僕にとって、一食100ルピー以上払ったのはこの時が初めて。思わずレザに「おー、ここ高いなぁ!100ルピーあったら、朝昼晩の3食は余裕で賄えるぞ。」と叫んでしまいました。

 さらに、今日、コンサートが終わった後、レザに連れられてハイデラバードで最近できたばかりのショッピングモール「Hyderabad Central」で夕食を取ったのですが、ここはもう、渋谷のロフトにいるような錯覚を覚えてしまうほどです。そして、ここで食べたラーメンの値段は250ルピー(約750円)

 東京より高い…

 普段僕が食べているものの5倍の値段です。その他にも、洋服や電気製品、パソコンの価格も日本と全く同じか、あるいはそれより高いくらい。

 そして驚きなのは、こういう店でバシバシ買い物や飲食をしているインド人が結構な数いることです。

 こうして見ていると、ハイデラバードには一般的な日本人と同じくらいか、あるいはそれ以上の購買力を持ったお金持ちと、月5万円程度の給与をもらっている一般大衆、そして、極めて不衛生な環境で細々と生活している下層の人々が非常に近い範囲で同居しているいうことがわかります。

 そしてもちろん上記の観察は、インドの人口のごく一部が住むにすぎない都市部での状況に過ぎません。インドの人口の7割が暮す農村部の状況が、これとは全く異なるレベルのものであることは、先週の記事で紹介したとおりです。

 こう考えると、誰が「一般的なインド人」なのか訳が分からなくなってきます。

 ちなみに、偶然出会った税務関係の仕事をしているインド人の話では、インドでは全人口の10%しか税金を納めていない(収めることができない、また税務当局も所得を捕捉できない)ということ。つまり、Hyderabad Centralやブランド店で買い物のできるごく一部のお金持ちが高額の所得税を支払っているのが実態だそうです。 

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 インドに来る前、「インドは貧しい国」というイメージがありましたが、3週間たった現時点で、そのイメージは間違いなく僕の中で変わりつつあります。

 確かに町中では物乞いを多く見かけるし、インフラ整備も発展途上で、町全体が如何にも不衛生。

 そういう意味では「貧しい国」という表現はあたっているのですが、一方で町中に物や食べ物があふれ、人々の消費意欲や経済活動は非常に旺盛。さらに、日本やアメリカと同程度の価格帯を持つ店や購買力を持つ人々もある程度見られます。

 こうして見ると、インドは「様々な社会インフラが未整備の国」ではあるが、「貧しい国」ではないと言えると思います。

 同時に、途上国にありがちな政府職員や政治家の汚職も大きな問題であり、また納税者の数が極めて限られているため、政府がインフラ整備を効率的、効果的に実施するために必要な金銭的、人的なリソースが限られていることも推察されます。

 こうしたインドの政治・経済・社会情勢が、Basixのような社会的ミッションを掲げる企業や、様々なNPO、NGOに活躍のフィールドを与えているのかもしれません。


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2 コメント

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>恭子さん (ikeike)
2007-07-07 21:06:29
 コメント有り難うございます!恭子さんをはじめ皆さんのおかげでインド生活を安心して満喫できています。
 ご指摘のBasixの給与水準が高いか低いかは比較する対象によると思います。
 例えば、恭子さんがよくご存じのハイテクシティに拠点を置くIT企業の若手従業員の月給はBasixの3~5倍と聞いています。またICICIやアンドラバンクのような大手金融機関の従業員の給料も2~3倍程度。
 ただ注意しなければならないのは、インド社会の中でITと大手金融機関の給与水準は激しくアウトレイヤーであるということ。また、最低でも修士号や数年の職務経験を持っていないと雇ってもらうのはまず無理とも聞いています。
 一方でBasixの月10,000ルピー前後の月給は、学部新卒、職務経験なしの給与であり、この点で比較するとこの月給はインド社会の中で決して安い訳ではないと思います。例えば公務員の初任給よりも高いし、マイクロファイナンス業界の中ではトップクラス。
 ただ、ご指摘のように業務内容や業務量に給与水準が見合っていないという不満は若手の間にもあるようで、このような不満とITや大手金融機関によるSexyな給与を武器にしたリクルートメント活動が、現在Basixの間で大きな問題となっている退職率の上昇の要因となっているようです。
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ほんとスゴイですよね (恭子)
2007-07-06 00:31:09
こちらの社会での格差は
本当にすごいですよね。
それに対して反抗するのではなく
ある意味フツーになってしまっているところが
フシギなところだなぁとも思います。
カーストの影響もあるのでしょうか。
(足かせをした象のように。。。)
日本も格差がでてきているとはいえ
「総中流」というのは、すごいことだと
感じます。

BASIXの社員のお給料、こちらの
他の会社と比べても安いですね!
ビックリです。
お仕事の内容や労働力に
見合っていないような気がしますが
やりがいがあるので、皆さんそのお給料で
お仕事しているのかな。。。

こちらはお給料をキャッシュで払うと
30%税金でもっていかれてしまうので
その対策のため、半分はキャッシュ、半分は
クーポンで払うところが多いようで
日本のように換金性はありませんから(笑)
それをバシバシ買い物に使う人もいるようです。
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