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7回に亘り振り返ってきた「ケネディスクール出願・合格への道」。最終回となる今日は、米国大学院出願に向け、エッセイについで重要となる推薦状について触れると共に、GPA(学部時代の成績)の位置づけについて説明したいと思います。
④ 推薦状 -他人が綴る自分のストーリー -
分野を問わず米国の大学院に出願するためには通常3通の推薦状が求められます。ケネディスクールの場合は、職場関係で2人、大学関係で1人の推薦状の提出が必要です。ただ、学部を卒業したてでまだ職場でそれ程自分を知る人がいない等の場合には、大学の関係者から2通をもらうことも認められています。
ところで、推薦状について最初に浮かんでくる問は「誰に頼めばよいのか?」ということでしょう。そしてこの答えは、「推薦状とは何か」を考えることで浮かび上がってくると思います。
エッセイが「自分自身が描く自分の姿」だとすれば、推薦状は「他人が描く自分の姿」。よってその内容は、出願者の性格や強み・弱み、あるいはどのようにして弱みを克服してきたかが、具体的なストーリーとともに描かれたものであることが必要です。
一方で、推薦者が誰かによって、推薦状のインパクトが異なることもまた事実でしょう。例えば、「彼は私がこれまで受け持ってきたどの学生よりも優秀だった」という文章を、まだ若く無名な助教授が書くのと、経験豊富でその分野で世界的に著名な教授が書くのとでは、読み手に与える印象は自ずと変わってくるはずです。
ここで、先ほどの問題提起:「誰に推薦状を頼むべきか」はさらに深まることになります。
「有名という訳ではないけれど、僕のことをよく知ってくれている直属の上司/指導教官にお願いするべきか?」
「あるいは、あまり身近とは言えないけれど一応コネクションのある、社長/大臣/有名教授に頼むほうがよいのか?」
無論、この双方を満たすような人物が身近にいれば悩む必要はありませんが中々そういう訳にもいかないでしょう。では、「身近な人が描くストーリー」と「ネームバリューのある人が押す太鼓判」のどちらを選択すべきか?僕の経験に照らして敢えて一般化すると、
「ロースクールやメディカルスクール、経済学修士課程等の専門職大学院では、推薦人のネームバリューがより大きなインパクトを与えるが、公共政策大学院やビジネス・スクールでは、ネームバリューよりも内容の具体性が重要視される。」
というのが僕の意見です。
というのも、メディカルスクールやロースクール、経済学の修士号等、その道を深めるために学生が集まる大学院では、「○●教授の研究室に所属していた」という事実そのものがその人の努力や能力を雄弁に物語り、今後その道でキャリアを追求する上で大きな力を発揮することが多い一方で、多くの学生が転職や人生の再検討のために集うビジネス・スクールや公共政策大学院の分野では、過去に所属した組織や分野の「大物」が押した「太鼓判」が持つ価値は、それ程大きなものではないからです。
よって、特に学生の「キャラ」を重視するケネディスクールの出願においては、自分をよく知っている身近な人に、エッセイと同じような具体性をもって、推薦状を書いて頂くようお願いすることが必要だと言えるでしょう。
僕の場合は、大学時代のゼミの教授、僕を採用してくれた入省時の人事担当者、そして当時の上司から推薦状を頂きました。例えば上司から頂いた推薦状を改めて読み返してみると、僕がどのようにしてプロジェクトを回し、力を発揮したか、さらには何でも自分だけで抱え込みすぎる傾向があるという「弱み」についても的確に指摘し、それを僕がどのようにして克服しようとしてきたのか、具体的に書いて頂いています。
また、入省時の人事担当者の推薦状では、面接の時の僕の様子に加え、入省時に実施した英語試験の成績が同期入省者の間でブッチギリでビリだったこと。それが、3年を経てたまたま一緒になった早朝英語研修の場で、国際関係担当の職員と堂々と議論ができるほど英語を上達させていたことに驚いたことなど、具体的なストーリーを書いて頂きました。
パブリックセクターのリーダーの育成をミッションとし、学生の職歴や学歴だけでなく、キャラの多様性、濃さを重視するケネディスクールの出願において決定的に重要なのは、「その人の人となりや能力を思い浮かぶような具体的なストーリー」であると繰り返し書いてきましたが、推薦状もその一翼を担う大切なパーツなのです。
最後に推薦状にもう一つだけ。
「僕/私を推薦してくれる人は英語が得意でないけれどどうしよう?」
という懸念を持っている人は多いと思います。実は、僕を推薦して下さった方のうち一人は正にそうでした。そのような場合、まずは日本語で推薦状を書いていただき、それを自分で英語訳したものを推薦人に見てもらい、許可をもらうという方法をとることができると思います。
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⑤ GPA(学部時代の成績) -過去のことで悩まない! -
「ハーバード=秀才の集まり=GPAが低かったらは入れない」
この典型的なステレオ・タイプは半分本当で半分ウソです。まずロースクールについては本当です。またアメリカ人、特に学部を卒業したてのアメリカ人にとっては、分野を問わず決定的に重要な指標となります。
しかし、ケネディスクールを目指す留学生にとっては、あまり重要な指標ではないと思います。ペーパー試験の成績よりも、エッセイや推薦状に現れる経験や人柄のほうが数倍重要視されることは、すでに繰り返しふれている、「パブリックセクターのリーダーを養成する」というケネディスクールのミッションと、「学生の多様性を追及する」という姿勢を踏まえれば、頷けるのではないでしょうか?
ですから、GPAの提出は住所の記入と同じような単なるペーパーワークと割り切って、より良いエッセイと推薦状の作成、英語力の向上に時間と精神を費やしたほうが、よっぽど合格は近いと思います。
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以上8回にわたり、「ケネディスクール合格・出願への道」を振り返ってきましたが、記事を綴っていく中で、この長い道を歩む中で僕を支えてくれた大勢の人たちの顔が浮かんできました。
ようやく仕事が一段落した深夜のオフィスで、睡眠時間を削ってエッセイのブレーン・ストーミングにとことん付き合ってくれた上司、留学先の米国から強力なアドバイスとエールを送り続けてくれた友人、中学生レベルまで落ち込んだ英語力を蘇らせてくれた英会話学校の先生とクラス・メートたち、推薦状を書いて下さった教授と上司、エッセイに登場する大勢の友人や同僚、そして何より、僕を支え続けてくれた妻と両親。
留学は自分自身が決断し、自分だけが歩む道であり、そう言う意味では長く孤独なマラソン・ロードです。しかし、ふとその沿道に目を向ければ、本当に多くの人たちがエールを送ってくれていることに気付きます。
この「ケネディスクールからのメッセージ」が、今まさにそんなロードを走り続けている、あるいはこれから走り出そうとしている皆さんとって、小さなエールになれればと思っています。
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毎回、毎回ブログを読ませて頂いているので、
あまり久しぶりな感じはしないですが、、、
自分の人生を振り返っても、一人じゃ生きられないんだよね。
周りの人があってこその自分であり、ikeikeのそんな謙虚さが器の大きさを感じさせるよ。
ポジティブで、かつ、ike(いけ~)っていうikeikeは素晴らしい!!
たまには小休止も忘れずに
ボストンにカレーパンを売りに来てくれる日が来るのを心待ちにしています。こっちのパンはあんまり美味しくないからね…絶対バカ売れすると思うのだけれど。