白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

4月の情報会員解説

2017年04月04日 22時45分43秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
なお過去の記事はこちらです→第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回
棋譜再生ソフトの使い方は第4回で詳しく解説しています。

今月は第4回グランドチャンピオン戦
高尾紳路名人藤沢里菜女流本因坊
趙治勲棋戦優勝者選手権謝依旻女流名人・女流棋聖・扇興杯・会津中央病院杯
の2局を解説しました。
今回は高尾-藤沢戦の解説の一部をご覧頂きましょう。

囲碁の解説で最も重要なのは、盤上で何が起こっているのか、両対局者がどんな作戦で打っているのかをお伝えする事だと思います。
そこで、最近は図よりもまず文章での表現を重視しています。
棋力に関わらず楽しんで頂ける解説を目指したいですね。



1図(テーマ図)
藤沢女流本因坊の黒番です。
黒△と押さえた場面から・・・。





2図(実戦進行)
白1~黒14と進行しました。
この不思議なやり取りにスポットを当ててみましょう。





3図(実戦)
白1「左辺の黒を取りに行くための準備工作です。」

ここで参考図が入ります。





4図(参考図)
「すぐ白1と取りに行っても、脱出されてしまいます。」

すぐに左辺黒を取りに行かず、3図白1と打った理由を示しています。





5図(実戦)
黒1「黒は必死に粘ります。」
白のツケに対して黒1とは異様にも映りますが、理由があります。
それを次の参考図で解説しています。





6図(参考図)
「黒1の受けに対しては、このような図を目指しているのでしょう。
白16の切りが成立し、左辺の黒は生きても黒3子が取られます。」

この図を避けるための前図黒1でした。





7図(実戦)
白1「こちらを繋ぐ所です。」←ここで参考図が入りますが、省略します。
黒2「ともあれ、黒は要の3子を助け出して・・・。」
黒4「上辺も渡って中央の白にプレッシャーをかけています。
ぎりぎりの頑張りです。」

黒4の後、白AやBと追及されたらどうなるかという問題があります。
それを参考図を2つ使って解説していますが、省略します。





8図(実戦)
白1「単にケイマが正しく、白2からの切断を残しました。」
黒2「中の石を取られては勝ち目が無いので、こう助けるよりありません。」
白3「手筋のツケです。
中央の白を先手で強化する目的です。」

白3はどういう意味で打たれたのでしょうか?
それを参考図で解説しています。





9図(参考図)
「すぐ白1、3と行く手もあるかもしれませんが、黒4から中央の白を狙われる事を警戒したのでしょう。」





10図(実戦)
黒1「強く反撃しましたが・・・。」←ここで参考図が2つ入ります。黒1で他の手を選んだ場合について解説しています。
白2「切りを決めておいて・・・。」
白4「中央が万全になったので、ついに左辺を取りに行きました。」
白6「この手が先手で、中央が万全になります。」
黒7「受けるしかありませんが、ここで白に先手が回ってしまいます。
高尾名人の隙の無い仕上げにより、碁は完全に決まった筈でした。
ところが・・・。」

ここから白が左辺を取りに行って、ゲームセットとなる筈でした。
しかし、実際には波乱があった事は、対局をご覧になった方はご存知でしょう。
最後まで目の離せない1局でした。

このような調子で、序盤から終盤まで解説しています。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!

なお、5月は
2016年グランドチャンピオン戦 一力遼竜星山下敬吾九段
第8回おかげ杯囲碁トーナメント予選 伊田篤史八段大西竜平二段
の2局を解説します。

週刊碁2000号&本日の指導碁(7子局)

2017年04月03日 23時24分32秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
日本棋院発行の週刊碁が、4/10号(4/3発売)で2000号に到達しました!
記念企画の「棋士の逸品」コーナーでは、棋士個人から30種類もの読者プレゼントが提供されています。
大変な値打ち物も出品されており、私がハガキを出したくなるぐらいです(笑)。
皆様、ぜひ2000号をご購入&プレゼントにご応募ください!

それとお知らせを忘れていましたが、ツイッターの日本棋院若手棋士アカウントの担当者が、星合志保初段から上野愛咲美初段に交代しました。
上野初段はまだ15歳、中学校を卒業したばかりですね。
若いですが碁は力押しではなく、独特のバランス感覚を持っています。
近い将来、間違いなく活躍するでしょう。
ツイッターの方はいかにも若い女の子という感じで、そのギャップを楽しんで頂くと良いのではないでしょうか(笑)。

また、本日は日本棋院有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。
指導碁にできた一場面をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
7子局です。
白1、3とハネツギを打った場面です。
左辺の白を生きると同時に、白Aから隅の根拠を奪う手を狙っています。
黒はどう考えたら良いでしょうか?





2図(実戦)
実戦は黒1と隅を守りました。
形の良い守り方で、こう打っておけば死ぬ心配がありません。
2桁級の方であれば、これを正解として良いでしょう。
まずはしっかりと石を守る習慣を付けるべきです。

しかし、そこからレベルが上がって初段を目指そうという方は、さらに進んだ考え方も身に付けなければいけません。
黒1は守りとしては完璧ですが、白に対する響きがありません。
白2の開きを許しては、白に楽をさせてしまっているのです。





3図(正解)
黒1と詰め、根拠を奪う手が正解です。
外側に黒が多いので、今弱い石は上辺の白なのです。
黒5まで進むと、一瞬のうちに右上一帯が大模様になりました。

もちろん、自分の石の守りも忘れてはいけません。
白6と打たれると左上の黒が危険ですから、そこで黒7と生きておきます。
この間に白が打った手はダメばかりですから、黒大成功です。

著書「やさしく語る 碁の本質」でのテーマになっているように、攻めと守りはどちらも大切です。
両方できてはじめて初段への道が開けるのです。

1周年

2017年04月02日 23時59分59秒 | 当ブログについて&バックナンバーまとめ
皆様こんばんは。
本日4/2を持ちまして、当ブログは開設から1周年を迎えました!
見切り発車で始めましたが、ここまで来れて感慨深いものがあります、
毎日更新を続けられたのは皆様の応援のおかげです。

この1年間は1090750PV、のべ504885人の方にご覧頂きました。
初日は137PV、訪問者数59人でしたから、格段の進歩です。
皆様、本当にありがとうございます。
ちなみに、今まで投稿した記事は378件ですが、連続更新は362日です。
あと3日は、絶対に更新しなければいけません(笑)。

折角の機会ですから、この1年間で閲覧者数が多かった日をご紹介しましょう。

5位 2/9 2500人
5子局&棋聖戦封じ手予想を書いた翌日であり、棋聖戦2日目でもあります。
流石に国内最高峰の棋戦、注目度も高かったです。

4位 1/12 2513人
Master対棋士第15局をアップした日です。
Masterらしさ前回の碁でした。

3位 2/1 2560人
1/31の井山九段、優勝ならずの記事を書いた翌日です。
歳賀杯で優勝できなかったのは本当に残念でしたね。

2位 10/28 2791人
井山名人、3連勝!の翌日でした。
名人戦の注目は物凄いものがありました。

3位 1/5 3107人
AIの脅威を書いた翌日でした。
突如Masterという怪物が現れ、大変な年末年始でした。

こうして見ても、この1年は井山さんとAIを中心に回っていた事がよく分かりますね。
歴史的な1年でしたが、今後の碁界はどうなるでしょうか?
当ブログでも注意深く追って行きたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

将棋電王戦

2017年04月01日 21時49分05秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日はお隣の将棋界で、電王戦二番勝負第1局が行われました。
佐藤天彦名人とAIの「PONANZA」が戦うという歴史的な1局の結果は、先手番のPONANZAが勝利を収めました。
世の中で一番強い人間が敗れた訳ですが、将棋界の方々は特別に大きなショックは受けていなかったように感じます。
既にAIが人間レベルを超えている事は明らかだったためでしょう。

また、第2局の先手番が残っていることもあるかもしれません。
もし名人に勝つチャンスがあるとすれば、やはり先手番ではないでしょうか。
これは将棋のルールが分かる程度の素人意見ですが・・・。
ともかく、第2局は名人に頑張って貰いたいですね。

ところで、PONANZAの後継プログラムはディープラーニングの技術を導入し始めたそうです。
元々人間を超えていたプログラムが、さらに強くなってしまうようです。
残念ながら、もはや人間が追い付く可能性はゼロです。

将棋界は非常に厳しい状況になっていると思いますが、これは人類の未来を先取りしているだけかもしれません。
今後人間にしか無い技術というものはどんどん減って行きます。
その中で人間がやる事にどう価値を見出していくかが課題となるでしょう。

囲碁界と将棋界は同時期に同じ問題に直面しました。
この危機を乗り越えるためにも、両者の協力は必須になって来るでしょう。