5月13日付朝日新聞記事を紹介します。
多才なビオラを主役に ヴィオラスペース、東京など3都市で
世界のビオラ奏者が一堂に会す音楽祭「ヴィオラスペース2017」が今月から来月にかけ、東京の上野学園・石橋メモリアルホールなど3都市で開かれる。提唱者の今井信子の片腕として企画に携わる俊英アントワン・タメスティが満を持して、祖国フランスの音楽に焦点を当てる。
2004年、難関のミュンヘン国際音楽コンクールに優勝。その時の審査員だった今井に招かれたのがヴィオラスペースとの出会いだ。「ビオラを愛する人々を、世代も国境も超えて結束させるという志を実践の場で貫いている音楽祭は世界にも例がない」
歌うバイオリンと低音を支えるチェロ。その間でひそやかに、響きの要となるビオラ。「いつもハーモニーの中心にいながら、ひとつの役割に縛られない。流されながらも音楽の核を常に感じていることを求められる。柔軟さの中に限りない自由がある」
5歳でバイオリンを始め、10歳くらいで初めてビオラを手に。「ああ、僕はこういう音が出したかったんだ、と体の奥から納得できた」
公演ではフランス人作曲家のみならず、フランスに長く滞在したストラビンスキーや、ドビュッシーの影響が色濃い武満徹なども。ひとつの楽器でどれだけの多様性を生み出すことができるか、自らに問う挑戦だ。「ビオラは個性を前面に出さず、常に陰でエレガントに重要な役割を演じる大人の楽器。日本の文化との親和性も感じます」