遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

核構造とテロメアと細胞寿命

2012-01-10 21:33:58 | BIONEWS
幹細胞注射でマウスの“若返り”に成功(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト) - goo ニュース
人のプロジェニア症候群と似た症状になるように遺伝子操作された早老モデルマウスの寿命を幹細胞を注射することで寿命を延ばすことに成功したそうです。さらなる実験から幹細胞そのものではなくそこから分泌される物質に延命作用があったそうな。
プロジェニア症候群ですが、これは核膜の裏打ちタンパク質ラミナの構成タンパク質Lamin Aの突然変異でして、この記事のマウスはLamin遺伝子を人為的に破壊されたものなのだと思います。ラミナは酵母のような下等真核細胞にはありませんので、あんまし詳しくないんですが、テロメアをはじめとするヘテロクロマチン構造が核マトリックスとくっつく時にラミナが異常だと不安定化し、細胞の寿命が短くなるんじゃないでしょうか。想像ですけど・・・。
この研究では、正常な個体なら2年ぐらい生きるマウスの平均寿命が早老症のために21日と短くなったものが、50日程度に回復したわけでして完全回復ではありません。何か補助的な作用があったのでしょう。それでも核構造と細胞寿命の関係性が幹細胞から出てくる物質をつきとめることで解明されるかも知れません。

テロメア:染色体の末端、寿命左右 長いほど「長生き」 英国の大学、鳥の実験で解明

テロメアの短小化が余命を短くすることは知られていますが、生まれた時点でのテロメア長からほんとに個体の寿命が推定出来るというのは新しい発見です。ま、そりゃそうだろうといえばそうなんですけども・・・実際に証明することは科学でとっても大切なことなのだ。ただし、生物種によって老化の原因とプロセスは多様で一様ではないです。例えば、マウスはテロメアの長さを伸長させる酵素テロメラーゼが細胞で発現していて、短くなりませんし、そもそもすんごく長いテロメアをもってるテロメラーゼ遺伝子を破壊しても一代目ではなんの表現形質も示しません。でも、ちゃんと寿命というものがあって老化していくのですから、老化を起す原因はあるわけです。
ヒトはテロメアの長さが細胞の寿命とすごく関連しています。もしかしたら、人間でも生まれた時にテロメア長を測定しておけば寿命を推定出来るようになるかもしれませんね・・・そんなんするメリットはよーわかりませんが。

昨年の12月に分子生物学会で横浜に行った時に撮った写真をまとめました。えと、出張先で写真ばっかり撮ってたわけじゃないですよ。

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