天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】怒り、ハドソン川の奇跡【26~27作】

2016年09月24日 | 映画感想
ここんとこBLOG書く気力が沸かない…ぶっちゃけネタがてんこ盛り状態なのに(滝汗)
ご飯ネタも積んでるけど旅ネタも結構ガッツリあるんだけどなー。あーもーどーしよう!どーしようも出来ないけど!!
これから書く2作品のレビューも、実は相当前に試写会で観た作品なんだけど、もう既に劇場公開してますよね(滝汗)

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「怒り」

2010年公開「悪人」で映画賞総なめにした吉田修一原作、李相日監督のタッグふたたび。
出演している役者が超豪華。渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、広瀬すず、森山未來、e.t.c...
それぞれがピンで主役張れる大物&中堅~若手人気俳優をバンバン惜しげもなく投入。

あらすじ…八王子で夫婦惨殺事件が発生。現場には「怒」の血文字が書かれており余りに凄惨な現場にマスコミも騒然となった。
犯人が捕まらぬまま1年後、都内、千葉の漁村、沖縄の離島…それぞれ3つの異なる場所に現れた男達3人にまつわるエピソードが
オムニバスに描かれる。
彼らの共通項は「過去の素性の知れない男」という事。それぞれの男、彼らと接点を持つ周囲の人達は各々折り良く付き合っていたものの
ある日TVで「未解決事件を追う」主旨の番組を見ていて、犯人の特徴と今自分の目の前にいる男が似ている事に気付く…

3人の男の話が別々の場所で展開していて、それぞれのエピソードが絡んだり人間関係が繋がる事はない。
そしてその3つの話を次々交互に見せて時系列としてはほぼ同時進行している、という形。この3つの話がある意味「繋がる」部分というのが
「未解決事件を追うTV番組で取り上げられた、1年前に八王子で起こった夫婦惨殺事件の犯人の特徴と男がよく似ているように見える」という事。
それでそれぞれ3つの場所でこの同じ番組を見ていた「男」に関わりのある人達が「もしかして今自分と付き合いのあるこの男はこの事件の犯人なのでは…?」
と疑いを持つようになる、という部分。それぞれ疑われた男達はその後どうなるのか。男と関わった人達はどうなって行くのか。
そして何より…この男達の中で惨殺事件の真犯人は誰なのか。

勿論その「犯人探し」のミステリー部分がキモではあるものの、あくまでも話はミステリーではなく、そのミステリーに絡む人間ドラマが主だと思う。
3つのエピソードに登場する人物達は以下↓
 1. 父(渡辺謙)&娘(宮崎あおい)が住む千葉の漁村にある日フラリと来て働くようになり、娘と恋仲になった男(松山ケンイチ) 
 2. 都会から母親に連れられて沖縄の離島に移住して来た女子高生(広瀬すず)が無人島の廃墟で出会ったバックパッカー男(森山未來)
 3. 新宿の発展場サウナでゲイのサラリーマン(妻夫木聡)と出会った男(綾野剛)

ミステリーは何書いてもネタバレになっちゃうから映画未見の方はレビュー読まないで欲しいんだけど、まあ自己責任でw
先ず…本作を観て「清々しい気持ちになった」「晴れ晴れとした気持ちで席を後にした」という方はおそらくいないであろうと。
もし本気でそんな気持ちになったという方は間違いなくどこか心が病んでいるので早めに専門医の扉を叩く事を激しくオススメします(苦笑)

そしてもう1つが…広瀬すずの事務所は何考えてるんですか?つーか、よくこの仕事受けたな。広瀬すずちゃんって何処を目指してるんだ???
もうアチコチで書かれてるハズだから書いても差し障りはないだろうけど…沖縄米軍のイカれたアメ公にすずちゃんはレイプされる、という役ドコロ
なんだけど、その問題のシーンってのが…何もそこまでリアルに見せなくても手を引っ張られて泣き叫んでズルズル引きずられて行って、その先は
シーン切り替えて事が終わった後とか少なくともアングルは直接見せるのは避けて叫び声だけで夜空とか公園の周囲を見せる、みたいな形でも
充分観客には伝わっただろうと思う。何もあそこまで執拗に見せる必要はあったんだろうか?
そしてこのシーン、いやエピソードって沖縄の人がご覧になってどう思うんでしょう?映画の中ではアメ公にレイプされる事件なんて珍しくも何ともなく
日常茶飯事の事だし、公園近くに住む主婦は明らかに今レイプされているであろう叫び声を窓の外から聞いても「関わり合いになるとロクな事がない」
とでも言いたげに知らんぷりして無視をする。これが沖縄県民の立ち位置なんですよーと言わんばかりの表現でしたが…コレでいいんですか?
他のエピソードもまあ色々ツッコミ入れたらキリがないんだけど、個人的には特にこの沖縄のエピソードは非常に不快だった。

漁村パートの宮崎あおいちゃんは理由は分からないけどしばらく家出をしていて、家出した後は歌舞伎町でソープ嬢として働いている所を
NPOか何かの協力で探し出した父親が迎えに行く、というシーンから始まるんだけど…その後のシーンを観ていてもそうだけど要するにあおいちゃんは
ぶっちゃけ「アホの子」という設定、という事でいいんですよね?(滝汗)
後さー、妻夫木君と綾野君のゲイSEXシーン…コレも見せ過ぎだわとにかく本作色々描写が執拗過ぎてはっきり言ってスクリーン直視出来ないシーン多数。
何かね、本作に登場するキャラクターがそれぞれ何とも言えずに悪意を持って設定されている感じがしてならないと言うかね。

それぞれの男達が1年前の事件の真犯人なのではないか?と疑われて…疑われてというよりも、男が犯人なのではないか?と疑い始めた周囲の人々の
恐怖だったり焦燥だったり「信じたい、でももし犯人だったら…」というえも言えぬ葛藤、そこら辺りがある意味このドラマのクライマックス。
でもタイトルの「怒り」と言うのが自分の中ではもう一つしっくり来なかったと言うのか。男を信じてあげられなかった自分に対する「怒り」なのか
男達側から発信の「怒り」なのか、世間や世の中の仕組み社会構造に対する「怒り」なのか、そのどれもあるのかもしれないけどやっぱりしっくり来ない。

役者の演技がいいだけに話にはグイグイ惹き込まれて行くんですがね、観ていて何とも不快感が拭えないのが…まあ気分のいいテーマじゃないから仕方ないけど。
個人的に地味に怖いな…と思ったのが、3つのエピソードの中では多分一番救いがあるように感じる千葉の漁村の話。男は娘と結婚も視野に入れて自分の
過去を話して同棲する事を決めたハズなのに、結局自分の本名は誰にも話してなかったんだよね。警察が調べたから本名が分かったけどもしこんな事でも
なければ最初から「いつかこの女を捨ててまた逃げる」の前提で結婚の話を進めてた、という事になるよね?(実際途中まで逃げてたし)
なんだかなー救いのない話だよなーって。^^;



「ハドソン川の奇跡」

今や役者としてではなく監督・制作サイドとしてハリウッドの重鎮となったクリント・イーストウッド氏の新作は2009年に実際に起こった事故を
取り上げた作品。主人公のエアバスの機長・サリーをトム・ハンクスが演じています。

あらすじ…2009年1月15日、ニューヨークを離陸したエアバスは上空わずか850mという低空で鳥の群れと接触し左右両方のエンジンが止まってしまった。
このままだと機体は大都会のど真ん中に墜落し大惨事は免れない…そこでサリー機長は被害を最小限に留めるべくハドソン川の中に緊急着水を試みる事を決断。
操縦歴40年のベテラン機長のとっさの判断によりハドソン川に着水したエアバスは炎上する事もなく乗客乗員1人も命を落とす事なく救出され、マスコミは
こぞってサリー機長を讃えて「ハドソン川の奇跡」と呼び惜しみない賞賛を送った。ところが事故調査委員会はこの緊急着水は無駄に乗客を危険に晒し
エアバスの機体をムダにしただけの事件で、エンジンが止まった所から充分空港に戻って来る事が出来たハズだ、とサリー機長を糾弾し始める。

当時日本でも「ハドソン川の奇跡」と随分報道されていたので自分もよく覚えていますが、事故後に機長がこんな難癖を付けられているとは知りませんでした。
イーストウッドは相変わらず人間の心理描写が上手いと言うのかね。トム・ハンクス演じる「サリー機長」は事故直後からPTSDに悩まされているようで
何度となく事故の時の事を「悪夢」として見ては冷や汗をかいて飛び起きるシーンが出て来ます。
このPTSDらしいシーン、そして打って変って華々しくサリー機長を英雄として持ち上げるマスコミとの温度差、更には事故調査委員会からの糾弾、
三つ巴になってサリー機長がどんどん「自分のあの判断はもしかして間違っていたんだろうか?」「もしかしたら自分は無駄に乗客を危険に晒しただけだったのか」
と疑心暗鬼に陥って行く様子が実にリアル感を持って描かれています。

本作観ていて思ったけど、マスコミの過剰な取材合戦って事件の被害者になっても加害者になっても同じストレスだろうし、世紀の極悪人として取り上げられても
歴史的な英雄として取り上げられてもやっぱり同じストレスを与えられるんだろうな、と。
芸能人ならまだしも、一般人が顔も素性も個人情報ダダ漏れにされたら街を歩くのも一苦労だろう。サリー機長も正にそうで、息抜きに入ったバーでもやっぱり直ぐに
声を掛けられて…何処に行こうが「パーフェクトな英雄対応」をアメリカ中から求められる訳だ。そりゃー心病むよねぇ(溜息)

で、サリー機長の心の葛藤を見せつつ話は事故調査委員会の審問会でクライマックスを迎える訳です。
それまでにも何度もサリー機長の悪夢だったり邂逅シーンで事故の時の様子がとぎれとぎれに再現される訳ですが、事故調査委員会が「事故時の様子を再現」として
フライトシュミレーターに事故時のフライトレコーダーの音声等のデータを元に「本当にエアバスは空港に戻って来れなかったのか?」をシュミレート実験します。
結果はコンピューターによる自動識別操作でも、有人操作のフライトシュミレーターのデモンストレーションでもエアバスは空港に戻って来れてしまいます(滝汗)
でもこのフライトシュミレーターのデモシーンを観ていて、何とも言えない違和感を持ったんですよね。何がどう、と聞かれると「んー何だろ?」なんだけど
とにかく何かが足りない、何か違和感がある、としか言いようがない状態で。

そしたら…この「違和感」が正に本作のキモだったというね(笑)
「あ、そーか!そーだ。うんそーだよ!サリー機長の言う通りだわ全くその部分が抜けてるから違和感があったんだー!」って勝手にめっちゃスッキリした^^;
で、映画はサリー機長の指摘によって再びフライトシュミレーターでデモし直し、更にはいよいよ事故の時の様子をそのままリアルに全て再現して行きます。
うーん!イーストウッドは見せ方が実に上手い!この「フライトレコーダーの音声を全て聞かせる」シーンが当然だけどスクリーン観てるコッチは
映像と共に見ている訳で、通しでこの事故の様子を初めてココで見せる訳ですよ。もうね、スゥーーーッと心に落ちる、とでも言うのか。

事実の映画化なので結末は誰もが知る所なんだけど、本作はこの事故後、実は裏でこんな事が起こっていたんですよ!というのを実に生々しく見せてくれましたね。
映画の最後のスタッフロールの所で実際の機長とあの事故の際にエアバスに乗っていた実際の乗客の方々、そして乗組員スタッフの方々の現在の様子を
見せています…実際のサリー機長がトム・ハンクスとこれまた良く似てるんだわね!w
そしてスタッフロールを観ていると、「役名:himself」「役名:herself」というのが数多く並んでいました。彼らもまたこの事件の英雄ですもんね!
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