マスタケというキノコとの出会いは、1980年代まで遡る。
その頃、渓流釣りに夢中になっていたマタギは、仲間とともに、朝日連峰から流れ出る渓流を訪れていた。
テントとシュラフを背負って、源流の魚止め滝をめざす釣りだ。
この時は、条件が合わなかったのか、我々の腕が悪かったのか、イワナが殆ど釣れず、夜の食材は、何とかなるものの、翌朝以降の食料が、米と味噌だけという状況のまま日暮れを迎えそうになっていた。
危機感を覚えた我々は、手分けして枝沢に入り、本来であれば釣るべきではない産卵前のイワナや小イワナを釣り集めてなんとか飢えをしのぎ、山行を終えることができた。
この時、強く記憶に残ったのが、日の暮れかかった小沢の奥に立つ古木の根元で出会った、真っ赤に咲き誇るマスタケの巨株。
出逢った時、薄闇に包まれた風景の中で、そこだけが明らかに異質な空間だった。
「お前、何しに来た。ここは、お前らのような若造が来てはいけない場所だぞ。とっとと帰れ。」
なりふり構わず釣りをするマタギに、マスタケは、そう語りかけてくる。
そうか、来てはいけない場所まで入り込んでしまったのか。
そんな気持ちになって釣竿をたたみ、引き返した。
それが、マスタケとの出会いだ。
それから長い年月を経るうちに、マスタケと出会う機会も増え、仲良くなり、その特徴も分かってきた。
で、辿り着いた答えが、『マスタケは、若いうちに採れ』ということと、『揚げ物にすると抜群に美味しい』ということ。
これは、マスタケ採りと料理の王道と言ってよいでしょう。
どの図鑑を見ても紀行文を読んでもそう書いてあるし、実際、旨い。
ただ、この食べ方と全く違う方法が紹介されている本を見つけたので、それを試してみることにした。
それは、マスタケの刺身という食べ方。
そこでは、画像が1枚載っており、『山の味、重厚な風味』と説明が添えられている。
もう一言、『からし醤油でもうまい』とも書いてある。
そこで、考えた。 いろいろ考えた。 その結果、思いついた方法で調理してみることにした。
※行動した事実だけを書いていきますね
・持ち帰った中でも、特に柔らかそうな部分を選びました
・薄味で茹でます(15分ぐらい)
※ヒタヒタ以上の水に顆粒出汁と出汁醤油と塩をちょっとだけ加えて味付け
※冷めるまで放置
柔らかい肉質が、更にしんなりとしました
付け根の硬い部分は切り落とします
※これで、本当に柔らかい部分だけになりました
食べやすい大きさに裂きます
マスタケの紅が器に映えます
同じ『柔らかい』なんですが、フライにはないしなやかさが出てきます。
そのまま食べてもOK。 ちょっと醤油を垂らしてもOK。
マスタケが持っている独特の香りが、茹でることで程よく抜けて、心地よい仕上がりです(重厚とは言えないかも)。
多分、茹で時間の長短で香りも調整できると思う。
なるほど!
今まで、『揚げる』しか考えたことがなかったんでけど、こうすることで、マスタケの持つ別の魅力(しなやかで心地よい食感)を引き出せるし、もともと持っていた魅力(独特の香り)を楽しめるようになるわけね。
家族に出したところ、あっという間に、完売してしまいました。
紹介してくださったのは、自然派エッセイスト(?)の高木国保先生。
昔の本なんだけど、とても参考になりました。
また、こんな工夫を見つけて取り入れていきたいと思います。
ありがとうございました。
もし、産直や地方の道の駅なんかで、マスタケを見つけたら、是非お試しください。