いよいよ2008年も今日で最後。寒さもいよいよ厳しさを増し枯葉舞い落ちる季節になってきました。今期から新たに私のワードローブに加わった天神山製・ポロコートと、遂に手に入れたボルサリーノ社製ソフトハットです。ではまず薀蓄から少々・・・笑。
元来はポロ競技の選手たちが試合の合間に羽織るために使われていたそうで、1890年頃に米国ブルックス・ブラザース社によってその名がつけられたと言われています。スポーツ観戦用のコートという出自のため、ドレス用のチェスターフィールドコートなどに比べるとややカジュアル寄りのコートということですが、襟はアルスターカラーと呼ばれる幅の広いダブルブレストの6ボタン、両脇に大型のパッチ&フラップポケット、背面は煽り止めのボタンが付いたインバーテッドプリーツにバックベルト、袖口のターンアップカフ、ウェストの絞りが心持ちルーズな緩やかなAラインなどが特徴の、ナイロン系の丈が短く細身で軽いコートが主流となっている昨今の巷ではやたら存在感十分な、100年以上の歴史があるトラディショナルコートです。
天神山さんの最大の特徴の一つである大型のダブルブレストは迫力満点!上半身はジャケットと全く同じイタリアンクラシカル派のフラットテーラリング手法で仕立てられていて、肩からウェスト、お尻へと続く柔らかいラインと後姿の美しさは、自分がまるで古い映画の主人公になったような気分にさせてくれます笑。
ポロコートといえば本来はキャメル(駱駝)ヘア素材で仕立てることが多いとのことですが、信濃屋ネームのセントアンドリュース製キャメルのポロコート(これまた凄い逸品です!)を所有されている天神山オーナーMさんのお話を伺ったところでは、キャメルヘアは冬場といえど都心ではかなり暖かく、重量も重たくて、意外と色の主張も強く、その上現在では希少な素材なため目玉が飛び出るほど高額なのでデイリーユースにはちょっと不向きで、Mさんも年に数回しか着用されない・・・とのこと。私も着させていただきましたが確かに滅茶苦茶重かったです汗(でも滅茶苦茶カッコよかったです笑)!
因みに天神山オーナーのMさんは信濃屋さんの古くからの顧客のお一人でもあり、いつ伺ってもきちっとタイドアップされていて、その時々の季節の装いをご自分流に着こなし、それがまた実に様になっていて、これまでイタリアのテーラーメイド(アロイジオ、カンパーニア、リベラーノ&リベラーノ)の服を何着も作って試されていたり、ローマのラッタンジで靴を購入されていたりとこれまた大変な服飾経験があり、能やオペラの観劇や骨董の蒐集にも一家言お持ちで、その上大変なお料理好き!天神山さん主催のパーティーでは築地からご自身の目で選んだ魚介を使った前菜から始まり真鴨のステーキ(なんと丸々一羽から作っちゃいます!)、ローストビーフなどのメイン料理、果てはティラミス(これは私が今まで食べたどのティラミスよりも濃厚で美味しかったです)まで、たくさんの料理をすべてお一人で手作りされその腕前はプロ顔負け!という“良いもの”をこよなく愛す穏やかなスーパージェントルマンです。
ということで、今回は天神山Iさんが昨年よりイチ押しされている『ポッサム(フクロキツネ)』を使った素材を選びました。ニュージーランドに生息するポッサムの毛は繊維内に空洞があり(中空糸)、軽くてしなやかで暖かく光沢もありオーバーコートにはうってつけの素材なのだそうですが、私はこの素材の優しげで暖かそうなアイボリーとベージュの中間の自然な色味と手触りの柔らかさにとても惹かれました。
やはりこれから如月の季節が終わるまではこういうどっしりとした男らしいコートが着てみたいなぁ~と昨年より密かに憧れていて、今期満を持しての購入となりましたが、こういうクラシックなコートは信濃屋の白井さんのような貫禄十分の年配の方が着るとさまになるのでしょうが、若輩者の私が着るとお笑いコントのギャングのボス役みたいで些か照れがあり、まだまだ着こなすのに時間がかかりそうです汗。ただ、昨年ローデンコートを購入した際も同じようなことを考えたような気もしますし、何だかんだいっても私の体に馴染んでしまってローデンコートは今ではすっかり“マイマストアイテム”になってますので、ここはもう着ちゃったモン勝ちでいっちゃえ!と開き直っているところです笑。
蛇足になりますが・・・先日、天神山さんに年内最後のご挨拶に伺った帰り際、天神山製カシミアジャケットに足元は信濃屋オリジナルのスウェードフルブローグ、このポロコートを羽織り、襟元に白井さんお薦めの真紅のカシミアマフラーを巻き、デンツのマスタード色のペッカリーの手袋を嵌めFugeeのスウェードの抱え鞄を手に持ち、最後に天神山オリジナルのガンクラブチェックツィードのハンチングを被った私の姿を見たIさんに『完璧なコーディネートだね笑』とお世辞、いえいえ笑、お褒めの言葉をいただいたことが私にとっては何よりも嬉しいことでした笑。
そして、今年の4月から始めたこのブログ『ひと日記』最後のアップはこの“ボルサリーノ”で締め括りたいと思います笑!20代の頃からず~っとずっと憧れ続け遂に念願叶って私のお頭に戴くこととなった、純イタリー製信濃屋別注のファーフェルト・ソフトハットです。
最近、目黒にある東京都庭園美術館の企画展『1930年代・東京 アールデコの館(朝香宮邸)が生まれた時代』で当時の銀座の写真などを観覧しました。写真の中の男性達は皆が例外なく重たい『外套』にソフトなどの『帽子』というスタイルで(これにはビックリ!)『モダーン』とうい言葉がもてはやされていた流行の最先端の街・銀座の冬を謳歌していたようですね。
天神山Iさんもご自身のブログでボルサリーノについて紹介されていますが、戦前は横浜・信濃屋さんの冬の主力商品だったそうで、価格は給料1ヶ月分くらいだったとか!古くからのお客様は信濃屋さんのショーウィンドウに飾られたたくさんの帽子が夏物から冬物へ、またソフト帽からパナマ帽へと変るたびに季節の移ろいを感じられたそうです。今では被る人もめっきり少なくなってしまい些か被るのに勇気が要りますが、思い切って購入を決めたのは信濃屋・白井さんとのご縁が大きなきっかけだったことは間違いありません笑。『このきっかけを逃したら一生買わないかもしれないぞ!』との思いでした。
ただ・・・よく男の装いはまず磨き込まれた靴から始まると言われています。でも私の場合は、このブログの第一回目にアップした機械式時計を購入したことから服飾への興味が始まりました。その後自分なりに研鑽を重ねましたが、天神山さんでローデンコートに出会ったことで我が盲を開かれ、信濃屋の白井さんやFugeeの藤井さんという存在を知ることで己の道を行く勇気を与えられたような気がします。メンズスタイルを完成させる最後のワンピース・・・このソフトハットを購入したのは、この一年間のそんな生涯忘れることができない様々な出会いへの感謝の気持ちを忘れないようにするためでもありました。
現代はインターネットが発達し様々な情報や商品がクリック一つで簡単に手に入る世の中ですが、これは!という本物の品に自分の体と五感で直接触れ、長い間の経験を重ねて物を良く知った人から直接手渡されるという一期一会はなかなか得がたいことではないでしょうか。これからも“心に響く出会い”を大切に私も我が道を邁進していきたいと思います。
2008年はこのブログのおかげで有意義に過ごすことができました。Web上の自分の日記を読むことは自分の素顔を客観的に見るようで、実に愉快な体験でした。ど~でもいいような身辺雑記にも拘わらず読んでいただいた方々には唯々感謝するばかりです。特に私の心を捉えた服飾とそれにまつわるエピソードが話題として多かったのですが、諸先輩方からいただいた珠玉の言葉の数々などはそのほんの一部を書いたに過ぎません。それらの言葉はずっと私の記憶の中で生き続けることでしょう。これからも自分のスタイルを完成させるためにゆっくりゆっくりと歩を進めて年齢を重ねていきたいと思います。このブログでお世話になった方々にはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!!大晦日ということできりも良いので今日のアップを以って一先ず筆を置きたいと思います。特別な理由はありません・・・ただ~なんとなく~です笑。でも、その~なんとなく~が案外大切なのではないかな・・・と私は思います笑。
では、皆さん良いお年を!! そして、Happy New Year!!
素晴らしいポロコートですね。
お説の通り、キャメルヘアーでは暑すぎます。
私の2枚のポロコートは両方ともキャメルヘアーで着ると汗だくで…
それにしても、アルスターカラーの本格派ですね。
でれくさんへのコメントでお見かけさせていただきました。お褒めの言葉を有難うございます。このポッサムは風合い・質感・色合い・保温性・コストパフォーマンス共に素晴らしい素材です。丈の長くて見た目は重量感のありそうなコートですが実際の重量は驚くほど軽いので着易さも抜群です。そして何と言っても存在感抜群なアルスターカラーを含めた本格的なポロコートの仕様に日々魅了されています笑。
ラルフ・ローレンとブルックス・ブラザースのキャメルヘアのポロコートをお持ちだなんて羨ましい限りです。私もコートは丈を充分とってあるものが大好きです。
musselwhiteさんはブログはされているのですか?きっとご愛着のある素晴らしいコレクションをお持ちなのでしょうね。因みに私はでれくさんのブログに影響を受けてこのブログを始めたんですよ笑。信濃屋の白井さんのように長い間経験を積まれた方の服飾のお話には何よりの価値があると思います。是非是非ブログ開設をご検討されてみてはいかがですか笑。その際は是非お知らせ下さい!では失礼します。
50歳になり再びと思いましたが既製品はまったく消えてしまいましたね。残念です。
新入社員でステットソンのソフトも被っていたので会社では奇人変人でした(笑)
ボルサリーノにも挑戦したいですがやはり鍔が広めでかなり伊達男になりますね。
確かにポロコートは殆ど見かけませんね苦笑。服飾業界と地球環境の傾向に完全に逆行しているコートですから致し方ないのかもしれませんが、私はそ知らぬ顔で真冬の装いを満喫しております笑。かなり貫禄のあるコートですが頑張って着こなそうと日々精進しています。
ボルサリーノの鍔の広さには最初抵抗がありましたが、慣れてくると平気です笑。コートも丈の長いものに慣れてくると丈の短いものでは心許なく思えてきてしまうのですが、それと同じですねきっと!最近は『案外似合うな~』と一人ほくそえんでおります笑。
では。
わたしもコートは何着か、ぼろいものは持っておりますが、車の移動が多くて、この手の丈の長いものは、レインコートを含めて、最近は着ていません。着たいのですが。新調すれば、よいのでしょうが、毛が抜けているカシミアなど、愛着があって捨てれません。だから、着ないよう不が、あふれ返っていて、妻にあきれられています。(笑)