ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

グレンチェックのフランネルスーツ&アルパカのポロコート

2009-12-25 11:25:29 | 白井さん
 

 2009年クリスマス・イブは前回の白黒よりも少し遊び心を潜ませた茶系のグレンチェックのフランネル・スリーピース、そして同じく茶色のアルパカのポロコートという白井流“ノエルスタイル”(これは私の勝手なネーミングです汗)。

   

 かの地で作らせたというスリーピースは伊カラチェニ製。白井さんが『茶で良い生地はないの?』と問うと御当主のマリオ氏が店の奥から引っ張り出してきたのがこの英国製のグレンチェック柄だったそうで、控えめな橙のオーバーペインが着る方の趣味の良さを偲ばせるまさに“大人専用生地”。白井さん曰く『大人の男はこういう良い服をこそ遊び着で使いたいもの。』とのこと笑。

 

 Vゾーンは白のレギュラーカラーシャツに、遠目はオレンジに見えますが赤地に黄色のペイズリーが鮮やかなシルクタイ。このタイはなんと数十年前の信濃屋オリジナル製!で当時700円くらいだったもの!なのだとか。信濃屋さんのB1F紳士服フロアの奥にひっそり佇むキャビネットに陳列してある白井さん私物の名品の中にあるナロータイ(英ヒューパーソン─HUGH PARSONS製)の図柄を真似て『こういう洒落た生地が当時はなかなか無かったのでもう少し幅を広くして作った』そうです。『あの頃はイタリアのものなんて全く無くて、紳士服といえばやはり英国という時代だったから。』人の手の温もりを感じさせる愛らしい図柄、数十年を経てもまったく張りを失わないシルク、前回のアルマーニのタイの時も感じましたが、こういう昔の良い品をちゃんと手元に置いていて今でも現役で出番を与えていることは、口で言うのは簡単なことですが本当に凄いことだと思います。『良いものはたとえ時代の気分に遇わず使わないことがあったとしても、いずれまた必ず出番を与えられる。』かつて白井さんが紳士服雑誌上のインタビューに答えて仰っていた言葉はご自身が紛れも無く身を以って証明されていました。

  

 ネクタイだけで感心するのは早計です。靴は英サクソン製のスウェードダービー。白井さんからこの靴の値段12,500円を伺ったとき最初は“???”でした笑。『12,500円・・・今でも憶えている。初任給が16,000円の時代だったからね。あの頃はそんな買い物の仕方ばかりしていたよ苦笑。』当時白井さん22歳。掛け値無しの半世紀前の靴が今も活き活きと出番を与えられ私の目の前にありました。

 更にこの靴、この日の登場にはちょっとしたエピソードも笑。

 年末も差し迫るとやはり白井さんもご多忙で、この日白井さんがご自宅から履かれてきたのは前々回『ガンクラブチェックのスパンカシミアジャケット』の時と同じクロケット製スウェード・ダービーでした汗。白井さんは『朝バタバタしてたからつい一番上にあるこの靴をひょいっと履いて来ちゃった・・・。』とちょっと申し訳無さそう笑。『履き替えようか?』そう仰ると先のキャビネットからこの“サクソン”を取り出して履き替えてくれたのです!なるほど“師走”とはよく謂ったものです笑。

 更に余談ですが白井さん曰く、昔の靴職人は外羽のウィングティップのことを“おかめとんび”と呼んでいたそうです笑。『ウィングの形状が“おかめ”の額の形に似ていたからでしょ。』・・・では“とんび”は!?・・・実に伺うことが多いです苦笑。

   

 最後はお馴染みのコート姿で、とカメラを構えていた私の前に現れたのは、これを見たら“イブのサンタも裸足で逃げ出す”かと心配してしまうかの如き迫力満点(でもちょっとかわいらしくもある)のアルパカ・ポロコート(伊アニョーナ─AGNONA製)姿の白井さんでした。その余りの存在感溢れるコート姿に“なんじゃそりゃぁ~!!”と私が心の中で叫んでいたのは言うまでもありますまい。

   

 アルスターカラーの襟元はチェックのマフラーであしらい、戴いたハットは英ジェームス・ロック製。“ターンダウン”といってブリム(鍔)の後ろが跳ね上がっていない形が美しく殊にお気に入りだそうです。ステッキはイタリーの老舗ラヴァリーニ─RAVARINI社製でスポーティーなコートスタイルの時にはこの一本をよく携えるそうです。白井さんはステッキも数本所有されていて着こなしに合わせて使い分けています。

 『スーツが続いたから次はジャケットかな。』・・・そう仰って今日も圧巻の着こなしで帰路に着かれた白井さんでしたが、私がこの日一番嬉しかったのは白井さんが私のブログをご覧になってくれたことでした。というのも、予て白井さんから『僕はパソコンは全然わからないから・・。』と伺っていたので、私としてもこのまま載せっぱなしも良くないと思い、この日はこのブログの画面をプリントアウトして白井さんにご覧頂くべく信濃屋さんに伺いました。私がいつものように地下の紳士フロアに降りると、そこには小さな画面に向かって慣れないPC操作をされている白井さんの後ろ姿がありました。『晴生ちゃんから“良いですね~信濃屋さんのブログ”って聞いてね。』(因みに“信濃屋さんの”ブログではないのですが汗)・・・なんと白井さんが晴生ちゃんと仰る方は、先日このブログでお写真をアップさせていただいたシップスの鈴木晴生さんのことでした。僥倖この上も無く思わぬクリスマスプレゼントに唯々感謝するばかりのイブでした。

 では、今年もMerry Christmas!