日田温泉亀山亭ホテルのFacebookに『銭渕橋の夕陽』がUPされているのを見つけた。
空と三隈川が赤く染まって、それはノスタルジアな光景だった。
いえ、私は銭渕橋(ぜにぶちばし)から夕陽を眺めたことはないのですけど・・・。
ず~っと昔、大正から昭和15〜6年頃まで、私の祖父母は銭渕橋のたもとで理髪店を営んでいた。
祖父が亡くなってから店を畳んで引っ越したし、私が生まれたのは別の町だけれど、母たちはよく銭渕の話をしていた。
銭渕橋の下で泳いで何度も溺れかけたとか、呼びにきても川から上がらなかったとか。
そして、もっと強烈に心に焼き付いている話がある。
私の母は生まれて間もなく高熱で視力を失った。
祖母はそんな幼な子を背負って悲嘆にくれ、夜中に銭渕橋から身を投げようと行きつ戻りつしたそうな・・・。
けれども、背中で泣き出した幼な子の声に、ハッと我に返ったと語ってくれたことがある。
そして母も又、背負われたねんねこの中で、母親のすすり泣きを幾度も聞いたのだと。
銭渕橋は、祖母と母にとってはそういう場所なのだ。
母は6才の頃に手術して片目だけかすかな視力を取り戻している。(晩年は又全盲になったが)
あゝ、だから、こんな素敵な夕陽を朧げにでも見ていたかもしれない。
人や町は変わったけれど、自然は、山や川や太陽は、昔と変わらずに営み続けているのだろう。
と、今日は柄にもなく、しんみり故郷に思いを馳せた。