アイドルになったきっかけは、さしこちゃん(指原莉乃)との出会いです。AKB48が大好きで、小学生の時、母に何度か握手会に連れて行ってもらいました。前田敦子さんや大島優子さんや(渡辺)麻友ちゃん……。みんなかわいかった。さしこちゃんと初めて会った時、緊張して、何も言えませんでした。そしたら、さしこちゃんは奈子のほっぺたをプニプニしながら、「かわいいね。(AKB48を)受けなよ。絶対、合格するから」と言ってくれました。
付き添っていた母にも「連れて来てくれて、ありがとうございます」と言って、握手をしていたので、優しいな、と思いました。
その後、さしこちゃんはAKB48から博多のHKT48に移籍。私は小学6年生になり、中学に進学するための勉強をしなくてはいけない時期が近づいてました。その頃、ちょうどHKT48のオーディションがあって、母が「受けてみれば」と勧めてくれました。
「どうせ、受からないだろうけど、さしこちゃんに言われたし」と思って、受けることにしました。2次審査は博多でありました。前日に泊まったホテルのルームナンバーが48。もしかして受かるかもしれない、と思ったら合格しました。東京から博多へ行くことになりましたが、父は「自分がやりたいことを精いっぱいやりなさい」と励ましてくれました。
レッスンでは、たくさんの曲を短い間に覚えなくてはならないので、大変でした。ついていけたのは、3歳から9年間バレエを習っていたおかげだと思います。
バレエの先生の指導は厳しかったです。1週間前に習った振りを、突然、「やってみて」と言われ、できないと叱られます。先生に叱られると、みんな泣いていましたが、奈子は泣いている姿を見られたくなくて、いつもこらえていました。だけど、コンクールで入賞したこともあります。体はあまり柔らかくないし、自分では上手だとは思わないけど、踊ることは好きでした。小6で勉強のためにやめましたが、HKT48に入らなければ、また先生の下でレッスンを再開していたと思います。
合格してから3カ月くらいして、AKB48のシングルCD「鈴懸(すずかけ)の木の道で――」H版のカップリング曲「ウインクは3回」のセンターに選ばれました。スタッフさんからは最初、「HKT48の代表になるから」と伝えられました。その時はセンターの意味がわからなかったんです。
会議室で初めて会った選抜メンバーの先輩たちに「矢吹奈子です」と挨拶(あいさつ)すると、「よろしくね」と言ってくれました。すごく緊張していて、咲(さく)ちゃん(宮脇咲良)から、「泣きそう」と言われたので、泣き顔を見せちゃいけないとあせったことを覚えています。
先輩たちは優しかったです。愛ちゃん(多田愛佳)は近くに来て、「ちっちゃ!」と驚いた後で、「かわいいね」とほめてくれたり、隣にいた支配人さんと比べて、「親子じゃん」と笑わせてくれたりしました。ダンスリーダーの本村碧唯(あおい)さんは一緒にインタビューを受けた時に、「奈子ちゃんにダンスで教えてあげたいところはありますか」と質問されて「奈子はダンスが上手なんです」とほめてくれました。うれしかったです。先輩たちが励ましてくれたのでがんばれました。
奈子は劇場公演で、バックダンサーになれたばかり。経験はほとんどありません。いつも一緒に練習している同期生たちがいれば安心できますが、ひとりきり。一番前にいるセンターは後ろから見られるし、少しでも間違えば、みんなに分かってしまいます。DVDを見て必死で振りを覚えました。
曲づくりは初日がレコーディングで、2日目がMV撮影でした。レコーディングの時に選抜メンバーのめるちゃん(田島芽瑠(める))がメールアドレスを教えてくれて、メールをするようになりました。
めるちゃんから「奈子ちゃん、急に真面目な話になるけどごめんね。初めての選抜とセンターで緊張とプレッシャーはある?」とメールがきました。「あります」と答えると、「私もそうだったんだ」。めるちゃんもデビューして間もない時に、シングル曲「初恋はバタフライ」でセンターに選ばれましたが、最初は不安でいっぱいだったそうです。それでもがんばって、センターを務めた経験を伝えることで、元気づけようとしてくれたんです。みんなが励ましてくれたので、がんばれました。
PV撮影では、死ぬかと思うくらいに緊張して、おなかがすかなかったくらいです。
さしこちゃんとは、ずっとお話ができませんでした。HKT48に入って間もなく、セレクション審査の前にキャプテンの穴井千尋さんと一緒に、研究生たちに会いに来てくれました。すごく緊張して、何もしゃべれず、握手会で会ったことも言えませんでした。
MV撮影の時に「奈子!」と名前を呼ばれたけど、そのときも緊張して返事もできなくて。だいぶ後に移動のバスで一緒になった時、「握手会に行ったんです」とお話ができました。「そうなの!」って驚いていました。それから少しずつ話せるようになりました。
先輩たちとよくしゃべれるようになったのは、今年3月に発売されたシングル曲「桜、みんなで食べた」で選抜メンバーになり、全国ツアーが始まった頃からです。ツアーのレッスンで、色々な質問をするようになってから、緊張しなくなりました。
緊張しがちですが、元々は、おしゃべりでいたずら好きです。小学生の高学年の時は、仲良しの友達と一緒によくいたずらをしていました。たとえば、クラスの女の子たちで男の子に「どっきり告白」をしたことがあります。本当は好きではない男の子に「○○くんのことがずっと好きでした」と告白して驚かせるんです。すぐに冗談だとわかるので、笑っておしまいになるのですが、奈子の友達が告白したら、「僕も好きでした」と返されて、逆に驚かされたこともありました。
HKT48の環境に慣れると、先輩たちにもいたずらするようになりました。ガムを取り出そうとすると、おもちゃの虫が飛び出てくるグッズがあって、メンバーのみんなに「ガムどうぞ」と、いたずらを仕掛けました。村重杏奈さんはびっくりして「キャーッ」とリアクションをしていました。
あるとき、テレビ番組を見ていて、さしこちゃんがカエル嫌いだとわかりました。いたずらを思いつき、紙粘土でつくったカエルを投げたら、すごく驚いていました。
奈子は背が低いので、先輩たちの背中を後ろからとんとんとたたいて、しゃがみます。先輩が振り向くと、誰もいない、と一瞬不思議そうな顔をするのが楽しい。今はばれてしまって、めるちゃんにしても、「奈子でしょ」と言われています。いたずらが好きなのは、みんなが笑ったり、喜んだりする顔を見ることができるからです。
将来の夢はまだありません。ずっとそうで、小4の時に「将来の夢」についてアンケートされて困り「画家」と書きました。仲のいい友達と一緒にしたんです。絵が得意でもないのに。
目標はあります。今は色々な表情ができるようになりたい。愛ちゃんは笑顔も、格好いい表情もできる。さしこちゃんはキリッとした表情ができるし、めるちゃんは豊かな表現力があります。私は、特に格好いい表情を身につけて、大人に見られたいです。今は子供に見られますが、「子供じゃない」と思っています。
「子供じゃない」と言うと、(同じ中1で、ユニット「なこみく」の)みくりん(田中美久)は、「そういうところが子供だね」と言います。みくりんよりも奈子のほうがしっかりしていると思います。
地方の仕事の時は、みくりんと一緒の部屋に泊まります。みくりんが洋服を脱いだままにして寝ちゃうので、たたんでおいてあげたら、「お姉さんみたい」と言われました。私は目覚ましをかけて、ちゃんと早く起きますが、みくりんは起こしても、「まだ寝る」と、すぐに起きません。だから、私のほうがお姉さんぽいと思います。奈子のほうが誕生日も早いし。ファンの方から「前より大人になったね」と言われるとうれしいです。
だけど、大人になったらみくりんと歌っている「生意気リップス」も歌えなくなります。「君はかわいいベイベー。背はまだまだ小さいけれど♪」。身長はデビューした時の138センチから144センチになりました。背はどんどん伸びるはずだから。そう思うと寂しいです。
どんな大人になりたい? まだわからないです。後で決めます。もうちょっと大きくなってから。