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From Hiron to many NetWalkers♪

【テイク 5】残り物には福がある

2008年03月21日 22時00分05秒 | Hikki
「想像以上にへんてこりんに出来上がってびっくりした」というコメントとは裏腹に、この歌に魅力を感じる私はひねくれ者なのか、それともワビサビに敏感な日本人らしいのかな?
と、CDでーたのセルフ・ノーツと過去のメッセを引用させてもらってる訳ですが。
何だか本当に、”いい匂いがしそう”で”ひんやりした土の気持ちよさまで伝わってくる”ような歌詞だなと思うのです。
人が残したエビフライの尻尾が好きだったりだとか、蓋にこびり付いたヨーグルトを舐める事にクライマックスを感じたりだとか、満開の桜より散り積もった桜の花びらをこそ艶っぽく感じたりだとか、主人公よりも脇役のキャラが好きだったりだとか。
そういう今にも消え入りそうな、無くなってしまいそうなものに惹かれるセンスというか、感性を持っているヒカルが、敢えて鬱の状態に自分を追い込みながらも追い求めた歌詞がここにはあります。
自分の体温を冷たい草に託し、真冬の空に溶け込ませていく。
感動も感情も何も無い状態へ、自ら導いていく。
けれど最後には、思い立ったように自分の家へ戻ろうとしている。
人が極限まで追い込まれた時に残るものはとてもシンプルな感情なのだと、分かっていた答えをもう一度手繰り寄せるかのような歌。
限りなく死に近い匂いを漂わせながらも、微かに、でも確かに残る意識が描かれているように思いました。


追記:またここ(Invitation)に辿り着きました(笑)Hikkiのコメントを抜粋しておきます。
「(前略)曲作りでも歌っているときでも、極限の集中状態まで昇りつめていくと、すごく居心地がよくて懐かしくて気持ちいい場所まで突き抜けるんです。(中略)自分が存在しない無の状態で、何かに溶け込んでいる感じがある。そのときが一番「生きてるな」って感じるの」

【Stay Gold】ノース2号の巻

2008年03月21日 20時29分01秒 | Hikki
人間臭さをいかにして消すかが勝負だったというピアノの音色。無心に、そして無機質に。けれどその中には奥深い訴えがあるみたいな感覚で。
そうある為に、ヒカルはひたすら平常心を装って何度もくり返し弾き続けました。そして終に目を閉じ感覚だけで弾く事で、この音に辿り着く事が出来たのだと言います。
何を思いながら、或いは何も思わないで弾いたのか・・・。
ネジを巻けば誰にでも奏でられるオルゴールのように、ただただ綺麗なピアノが物悲しく響く歌です。

浦沢直樹さん著『PLUTO』1巻の中には、ほんの誤解から愛を疑い続けた一人の老人の心が、心を持たない筈のロボットに告げられた真実によって漸く溶かされるシーンがあります。
ノース2号という名のロボットが奏でるピアノはきっと、こんな音色だったのではないでしょうか。