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湖南オヤジのlast stand

50代オヤジのささやかなチャレンジ記録です。

この世界の片隅に アニメだからできること・・

2017-02-05 22:47:27 | 映画

じわりじわり上映館が拡大し、キネ旬でベストワンに選ばれ、新聞に全面広告まで出た話題作。
昨年秋、NHKで片渕 須直監督の特集が組まれていて、気にはなっていたが、地元になかなか来ない・・・。

で、やっと大津でも上映され出したので奥さんと観てきました。
漫画アクションに原作が10年ほど前に連載されていたのも知らず、数年前にTVドラマになっていたのも知らず、予備知識なしで映像に没入。そして涙腺を押さえながら席を静かに立ちました。


戦争を題材としてアニメは傑作『火垂るの墓』がありますが、強烈すぎて、この作品以上のものはアニメではもう出ないだろうな・・と思い込んでいましたが・・・


『この世界の片隅に』

アニメーションという手法を使って戦争を描いた人間ドラマの傑作です。


水彩画のスケッチような絵作りで、まるで丁寧に描いた絵コンテが動き出したような錯覚を覚えます。舞台となる呉や広島の情景は細部まで丁寧に描かれてある意味VFX以上の臨場感があり、「空間」を感じさせる構図が見事で、観てる側に呉の街中に住んでいる感覚を覚えさせます。

でも、スクリーンから迫ってくる情景は実写やCGで表現されるよりも強烈にリアルに感じられるのはなぜか・・と考えて観ていたわけですが、
広島に原爆が投下されたシーンで、あっ、と気が付きました。

登場人物の描き方は「漫画」。人物を細部まで描かない。表情のリアルな描写で説明しない。観ている自分は感じたイメージのままスクリーンに入り込んでしまっている・・・

「銃後」の人たちが戦争の「前線」から遠く離れた中で、普通の生活を営み、その中で幸せを求めていくが、戦争という「暴力」がじわりじわりとそのささやかな幸せを蝕んでいく・・・


今、争いの渦中にいない私たちの日常に、その「暴力」が振りかざされたら・・・その想いとスクリーンの情景、セリフが接点をもった時、私は号泣せざるを得ませんでした。

エンドロールでこの作品にクラウドファンディングで参加した人達の熱い想いにまた涙して席をあとにしました。じわりじわり観て行く人が増えること祈って、帰路、原作を購入。

 

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沈黙  マーティン・スコセッシ監督

2017-01-29 23:59:59 | 映画

原作は有名であり、テーマとなった歴史的事実も鎖国や島原の乱に興味をもち関連文献を読んでいくと出くわしてしまう。

神社にお参りに行き、仏壇に手を合わせ、ご来光を有り難がる・・・といった宗教感では唯一の神に絶対を求めることはピンとこない。だから、キリスト教文学はキリスト教を信じる人にしか迫ってこない、と思っていて、原作は高校生時分に粗筋把握でざっと読んだ程度でしか無かった。


今回はタクシードライバーやレイジングブル、などでドロップアウトした側で生きざるを得なない者の「もがき」を描いてきたマーティン・スコセッシ監督が宗教をテーマに「魂の救い」をどう切り出して行くのかに興味を持って映画館のスクリーンの前に座った訳であるが・・・

 

2時間20分、ひたすら映像が繰り出す「神の沈黙」を前に信仰とはいったい何なのか・・・・?とへたり込んでしまった。

日本ではイッセイ尾形、浅野忠信、窪塚洋介の演技が好感をもって取り上げられいるが、私はアメイジング・スパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールドの主人公の深い演技に感嘆。映画館で観るべき作品です。

作品としてはマーティン・スコセッシの日本映画への憧れがさりげなく映し出されてニヤニヤしてしまった。小舟で霧の中を密航するシーン、アンドリュー・ガーフィールドとイッセイ尾形が武家屋敷で宗教問答する場面の構図・・・溝口健二や黒澤明の時代劇へのオマージュになっていてともてイタリア系アメリカ人が撮ったものとは思えなかった。

そしてこの映画、讃美歌以外の音楽がほとんど流れない。

エンドロールで森の虫たちの鳴き声が延々と鳴り続けるのだが、虫たちの声を音楽のように聞こえてしまうのは日本人だけ、という何かの研究結果を思い出してしまった。

他者を理解することは根っこのところでは無理なのだろうか・・・と映画館を後にした。

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生と死の向こうに山が・・・ メルー

2017-01-07 22:16:57 | 映画

年末に鼻から気管にかけて炎症をおこし、おまけに右脹脛の軽い肉離れで、正月早々からリハビリモードで冴えない3連休初日。

近場の場の山には雪はなく、あっても足故障中で登れないの、滑れないので年末公開した話題作、MERUを京都に奥さんと観に行く。

MERU

トップクライマー達を寄せ付けない、ヒマラヤのメルー中央峰のシャークスフィンと呼ばれる難攻不落の壁からのダイレクト登頂。

クライミング人生を賭けてコンラッド・アンカーは、ジミー・チン、レナン・オズタークという次代のトップクライマーとチームを組んで初制覇を目指すが・・・

そして、その後の3年間、三人はそれぞれの生死の葛藤を乗り越え、再びシャークスフィン攻略にメルーの麓に集まる・・

この映画、ナショナルジオグラフィックなどの写真を手掛けてきた山岳写真家でもあるジミー・チン小型カメラを携帯し命がけで撮影したドキュメンタリーであるが、臨場感や人物描写はドキュメンタリーとは思えないつくりこみでまさに映画でしかできない構成となって、観る者を画面に引き込んでいく。

ベースキャンプやドローンで撮影したと思われるメルーの昼夜の風景に息をのみ、エンドロールを見ながら静かに頬を流れるものを抑えきれなかった。エンディングのAndra Dayが歌うThe Light That Never Falls は名曲です。

ぜひとも映画館で観ることをお勧めします。

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VFXとイメージ補完 海賊と呼ばれた男

2016-12-17 23:59:59 | 映画

中学生の社会の授業で、確かオイルショックが起こった背景を先生が説明していた時だったと思うが、話が脱線して、「君たち、戦後、国際石油資本に属さない一企業の出光にどこも石油を売ってくれなかった時、出光佐三という人は石油を買い付けるためにイギリスに撃沈されるかもしれない危険を冒してまでイランに自前のタンカー出して石油を日本まで運んだんだぞ!! 何も心配することはない! やる気になればどんな危機も乗り越えられる!」

というような演説。うぶな中学生は、戦前の人はすごいなーとただただ感心。

そんな記憶があり原作は読んでもいなかったが、映画化にあたり、監督が、『ALWAYS 三丁目の夕日』永遠の0で有名なVFXの使い手、山崎貴監督ということもあって別の興味もあり観に行く。

原作は読んでないので比較コメントはできないが、ストーリーとしてはNHKの大河ドラマになりそうなボリュームなのだが岡田准一の好演もあり、飽きさせずにワクワクしながら観ることができた。

困難に立ち向かう勇気がでる映画。

岡田君、どんどん正統派の役者になっていくな・・・

さて、作品としては、ストーリーの中でとくにカットに凝るとか役者の演技を引っ張り出すような演出があったとは思えない。

イメージとして、舞台の劇を丁寧に積み上げて行った映画だな・・・という感想。

 

舞台美術はイメージであり、役者の演技、セリフと観る者のイメージがシンクロして見えないものを見せる、というものであるが、VFXの高度化でSFやアクション物以外で特殊効果だな・・と見ていて思わなくなったことが普通になってきている。

リアルな空襲、広大な焼野原、船の沈没シーンで見る側の想像力が大してなくても物語の背景にある現実にあった悲劇に感情移入できることは、その昔、ロック評論家の渋谷陽一が「産業ロック(売れ筋のリズムとコードでアルバムを構成し大量に売りまくる・・)」と批評していた流れに似たようなものだなぁ・・と席を後にした。

 

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生きる証として闘うこと・・・聖の青春

2016-11-23 23:28:55 | 映画

将棋は・・・駒の動かし方しか知りませんが、「聖の青春」を見ました。

その世界では伝説となっている村山聖八段の亡くなるまでの四年間を羽生善治三冠との死闘を軸に描いた作品。

(一部脚色もありますが)

死期が迫っているなかで戦いに生きる意味を求め続けた村山八段を松山ケンイチが名演。対局の異様な緊迫感が伝わって来ました。

将棋を指さない人間にはしんどいかな・・・と思って出かけたのですが、いっしょに出かけた奥さん曰く、「将棋を知らない人も引き込まれる」配役陣の妙があり

人間ドラマとして充分に素敵でした。

最後の羽生三冠との死闘。命を懸けている緊迫感に満ちた松山ケンイチの演技は文句なし。

生きる証として追い求めるものがある人を羨ましく思える年齢になりました。

コメント (2)
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