じわりじわり上映館が拡大し、キネ旬でベストワンに選ばれ、新聞に全面広告まで出た話題作。
昨年秋、NHKで片渕 須直監督の特集が組まれていて、気にはなっていたが、地元になかなか来ない・・・。
で、やっと大津でも上映され出したので奥さんと観てきました。
漫画アクションに原作が10年ほど前に連載されていたのも知らず、数年前にTVドラマになっていたのも知らず、予備知識なしで映像に没入。そして涙腺を押さえながら席を静かに立ちました。

戦争を題材としてアニメは傑作『火垂るの墓』がありますが、強烈すぎて、この作品以上のものはアニメではもう出ないだろうな・・と思い込んでいましたが・・・
『この世界の片隅に』
アニメーションという手法を使って戦争を描いた人間ドラマの傑作です。
水彩画のスケッチような絵作りで、まるで丁寧に描いた絵コンテが動き出したような錯覚を覚えます。舞台となる呉や広島の情景は細部まで丁寧に描かれてある意味VFX以上の臨場感があり、「空間」を感じさせる構図が見事で、観てる側に呉の街中に住んでいる感覚を覚えさせます。
でも、スクリーンから迫ってくる情景は実写やCGで表現されるよりも強烈にリアルに感じられるのはなぜか・・と考えて観ていたわけですが、
広島に原爆が投下されたシーンで、あっ、と気が付きました。
登場人物の描き方は「漫画」。人物を細部まで描かない。表情のリアルな描写で説明しない。観ている自分は感じたイメージのままスクリーンに入り込んでしまっている・・・
「銃後」の人たちが戦争の「前線」から遠く離れた中で、普通の生活を営み、その中で幸せを求めていくが、戦争という「暴力」がじわりじわりとそのささやかな幸せを蝕んでいく・・・
今、争いの渦中にいない私たちの日常に、その「暴力」が振りかざされたら・・・その想いとスクリーンの情景、セリフが接点をもった時、私は号泣せざるを得ませんでした。
エンドロールでこの作品にクラウドファンディングで参加した人達の熱い想いにまた涙して席をあとにしました。じわりじわり観て行く人が増えること祈って、帰路、原作を購入。