厚紙に鬼の顔を描いて
毛糸の切れはしを眉毛に貼り
眼の部分と裂ける口を大きく切り抜く
手作りの鬼のお面は父の顔を覆っていく
「ガオーッ!」
鬼はそんな叫び声はあげないだろうけれど
お面をつけるとそんな声を発してしまう
「キャッ、キャッ…」
息子たちが幼稚園に通っていた頃だろうか
無邪気な笑い声をあげながら、走り回っている
「豆を鬼にぶつけてやっつけるんだよ…」
「鬼は外…」
「福は内…」
可愛い声が響き渡る
直に豆をばらまくと、掃除も大変なので
殻付きの落花生を鬼にぶつけ、部屋にまいていく
それは数十年前の話…
長男は大学に通うべく、家を離れている
次男はセンター試験を終え、2次試験の追い込みの日々
もう節分といっても家族で豆まきなどはしない
我が家にとって鬼は何だろう…
父のお腹には鬼も潜んでいるかもしれないが
豆を食べてしっかりやっつけて、大人しくしてもらおう
我が家の福は…
今年は何といっても、次男の春がやってくることだろう
それと、みんなが健康で健やかに過ごせますように…
そんな願いを込めて、歳の数以上の豆をいただいて
誰もいない部屋にも豆をまいてこようと思う
今年は殻付き落花生じゃなくて、小袋入りの味付け豆らしいが…