貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

プルームテクトニクスと水

2023-03-08 20:55:06 | 地球のお話

地球科学っつうのは、20世紀に始まった新しい学問で、今隆盛の「プレートテクトニクス」理論なんていうのができたのが1960年代。ついこの間、あちきが綿飴食ってた頃だよ。(オジジw)
プレートテクトニクスというのは、陸がすいすい動いてぶつかったり離れたりして、海底は陸の下に潜り込んでいったりするというやつね。(そんな単純じゃねえw)
今の研究者の多くはこれを支持していて、ほとんど「定説」みたいになっている。庶民に関係の深い地震や噴火なんかもこの理論を使って説明されるしね。「南海トラフ」なんて皆さん恐怖の的。

これは前にも上げたエクロジャイト
玄武岩質の海底プレートが大陸地殻の下に沈み込み、高圧で安山岩質成分(シリケート質)が絞り出されて、「残り滓」のように形成されたものと言われている。こういう「残り滓」はやがてマントル深部へと落ちていく。そう説明されるとなかなかエキサイティングではないですか。


ところが、1990年代になって、新たな「プルームテクトニクス」という理論が出された。つい先ごろのことですな。(ジジイ過ぎw)
プルームとは plume で、発音はプルーム。フランス語「プリューム」からの転用英語で、この理論が出だした初期はプリュームとも書かれた。いろいろな意味があるけど、ここでは「噴き上がる水の柱」というような意味。転じて、マントル内の物質の塊の浮沈・対流を指す。
このプルーム理論、プレート理論ではうまく説明できなかったプレート移動の原因を、マントル全体の対流という概念で解こうとしている。さらには、これまでどうも「ばらばら」だった「核」「下部マントル」「上部マントル」「地殻」を「巨大な物質対流」という枠組みで捉えようとしている。さらには(繰り返すな)様々な学問を学際的に統合して「全地球史」の新たなパラダイムを作ろうとしている。ううむ。壮大ですなあ。
この「プルームテクトニクス」理論、まだ「定説」的な位置にはないらしい。リードしているのは主に日本人研究者で、欧米の研究者はいささか冷淡だとか。まああの連(やめとけ)
あちきのような素人にはよくわからんし、どれが正しいだの間違いだのと言う資格もない。ただ面白い。
科学の新展開というのはとてもエキサイティングで、素人が聞いても興奮が伝わってくる。

     *     *     *

『プルームテクトニクスと全地球史解読』(熊澤峰夫・丸山茂徳編、2002年、岩波書店)をちょっと囓り出したのですけど、まあすごいんですわ。
これまで海洋地殻は大陸地殻の下に潜り込んで、さほど深くないところでマントルの中に消えるとしていた。
ところが、この沈み込んだ海洋地殻の一部は「残骸(スラグ)」として上部マントルの底に溜まるらしい。そして次第に巨大化すると、今度はがらがらと崩壊して再び沈み込み、「核」にまで降りていく。これが「コールドプルーム」。それに対抗して核から噴き上がるように上昇するマグマの柱がある。これが「ホットプルーム」で、ハワイの火山なんかはこれが地表に噴き出たものだという。
できた当初はばらばらだった大陸地殻を寄せ集めて「巨大大陸」を作ったのはこのコールドプルーム=下降流の引き込み力によるものだという。またかつてあった巨大大陸を分裂させたのも、上昇流の「スーパーホットプルーム」ではないかという。
で、この地表から核にまで至る壮大な対流によって、地球はダイナミックな動きを続けており、様々な元素や水も移動している。地球の磁場を作っている「外核」の対流も、独立したものではなくこの全体の対流の一部である。などなど。
同書より一つの模式図。

細かいところはさっぱりわからん。
何せ三次元だし、成分、温度、圧力、比重、粘性、壊れやすさ、元素間の親和性などなど膨大な変数がある。超複雑系。あちきの単純な頭ではとっても無理。

しかしですね、一番面白いところは、やっぱ「水」なのですよ。

《なぜ、水(水素)に注目するのか? これまでのダイナミクス研究では、地球の動態は熱機関として働く熱対流による、という固定観念があったであろう。しかし、冷静に考えてみると、熱もさることながら、物質が駆動する“物質対流”を否定する根拠はほとんど存在しない上に、水が決定的な鍵を握っていると推察するに十分な兆候や資料はすでに散発的ながらかなり存在する。……水(水素)の果たす役割が地球の動態解明に不可欠で、地球ダイナミクスの統一的理解に大きな刷新をもたらす可能性が期待されるのである。》(同書あとがきより)

水は、プレート沈み込みによってマントルにもたらされるだけではない。何と、「核」から水が発生しており、それが「プルームテクトニクス」の主動源だという。

《外核から放出される水素がD''層(外核とマントルの境界)中で酸化してH2Oになり、これが組成差を誘発して浮力発生の原因となるとともに、岩石を流動しやすくする効果を持つためにマントル底の物質がスーパープルームとなって上昇を開始すると考えられる。》(同前)

前にも書きましたけど、あちきらは普通水というのは海から蒸発して雲になって雨として降ってまた海に帰るという地上だけの循環を思い描きますけど、水はプレート沈み込みによってマントルに運ばれ、火山噴火によってまた海に帰る。そういうマントルまでの循環がある。さらには、核からにじみ出した水がマントルや地殻を動かすということもある。とんでもない水のサイクルがあるのですねえ。

あちきらが賛美する石たちの多くは、その壮大な水サイクルの中の、特異な一角。地球のダイナミズムは時間も質量も壮大だけど、その末端の繊細な精華として、これらの美しい石たちがある。地球という奇跡中の奇跡を生み出したあちきらにはわからない知性的営みは、こうした細部にまで宿っている。そしてそれを支えている、媒介しているのは「水」。

ちなみに余計なことを言えば、あちきらの脳の中心には「松果体」があってデカルトはこれが「霊魂の座」だと考えたけど、実はそのまわりには大量の水があって、霊魂と肉体を結ぶのはこの水だという見解がある。もちオカルトですけど。水は物質世界と不可視の世界とをつなぐものかもしれない。幽霊だって水場に出るしね。(ほんと余計なことを書きおって)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿