丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

「疑惑」を観た!

2009年01月26日 | 趣味
 松本清張原作のサスペンスです。何度も映像化されているそうで、子供の頃に桃井かおりと岩下志麻が出ていた映画を観た記憶があります。粗筋はうろ覚えでしたが、車のブレーキに詰め物をして……という件は覚えていました。
 今回は主役の悪女・球摩子を演じているのが沢口靖子。正直「え~? 沢口靖子ぉぉ?」って感じでしたが、蓋を開けてみたらばこれがまたどうした事か、予想以上の良いお仕事ぶりでした(笑)。
 ファンの方には申し訳ないですが、沢口靖子って女優さんはどうもあんまり好きではなくて……。確かに綺麗な顔立ちだとは思うんですが、演技がいつも一緒って感じがして。だいぶ昔に「タンスにゴン」のCMをしてらした時にはぶったまげましたが、基本的に何をやっても一緒なんですよね~。それに基本的に「芝居臭い」演技に見える。もっとも気の毒なのは、二時間ドラマにしても連続ドラマにしても役としての性格が似通ったものばかりというのもありますけどね。明るい、健気、一生懸命、どんくさい、どっちにしてもポジティブな役どころばかりでね。
 だがしか~し! 今回の球摩子ちゃんは一味違いました。 貧乏神に魅入られたような不運な出来事てんこ盛りの人生を送り、どんどん歪んでいく球摩子ちゃん。人生を演技する事で本当の自分を守るしかないという役どころ。劇場型人格とでもいいましょうか、球摩子の必死の「芝居」に沢口靖子特有の「芝居臭さ」がぴったりはまったとでもいいましょうか。ある意味、大正解なキャスティングだったように思いました。
 球摩子の夫を小林念二。この俳優さんもいい俳優さんですね。老いの哀しみを噛み締めながらも恋に身を焦がし、悲劇への道を選択するという心情が、ごく自然なものとして受け止められたのはこの職人的な俳優さんの実力のなせる技でしょう。
 球摩子の無実を証明していく弁護士に田村正和。……あえて何もいいますまい。ただ一言いうならば、ちょっと格好良すぎ(笑)。重い過去を背負って、ジャズピアノ弾いてる弁護士なんて……(爆)。
 そして球摩子を犯人として書き立てる新聞記者に室井滋。いやあ、憎ったらしい女記者でした(笑)。実際、最近の事件でマスコミ先導で捜査が進んだだろう! という事件も少ない無いという現実を考えると、非常に怖い存在でした。それと同時に、今自分達が目にしている報道と言うものの信憑性を測るにはどうしたらいいんだろうかと考えさせられました。推理小説を読むような感覚で、報道を見ている自分というのも確かに存在します。これはちょっと反省しつつ、自分を戒めなきゃな~、なんて思いました。

 ところで、最近「砂の器」「鬼畜」などのリメイクが続いていますがこれにはあまり賛成できませんね。良い作品は勿論良いんです。それは充分にわかります。でも「砂の器」にしても「疑惑」にしても、昭和という時代が背負っていた陰があるからこその名作なのですよ。病への偏見だったり、貧乏人の子沢山という風潮だったり、そういう背景から二次的に生まれてくる悲劇が事件の発端になっていることが多いですよね。そういう昭和の時代の陰が、はたして平成の現在の陰にリンクするんでしょうか。確かに、色々な形に置き換えられていて、なんとかして普遍性を描こうとしているのはわかるんですけど……。正直、無理があるなぁ……。
 平成には平成の陰がある訳です。それは理解しがたい陰だったりしますが、あえてそこに焦点を絞って新しい人間ドラマを描いて欲しいですね~。松本清張氏は元々新聞記者だったと思うのですが、やはり彼は記者として時代をえぐっていたからこそ、ああいう作品が書けるのだと思うのですよ。テレビはテレビの視点で、もっと現代をえぐってほしいなぁ……。

 な~んて、えらそうなことを書いてますが、私には書けません。わはは。


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