チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「希望の樹」第4章 ここいいて、いい人 その15

2012-07-31 19:05:30 | 福祉の現場から「希望の樹」
 ミキサーも始まったし、そろそろお片づけ。
「続きは午後にしましょうね。」
工作に使った道具をとりあえず、箱に集めて、テーブルを拭き、アルコール消毒。そうだ、重度さんのトイレチェック。
「畳に移動してもらいましょう。」
その時、
「わ!床が濡れてる!」
え?
「とりあえず、拭いてください!・・・タマキさん、洗面所の下に雑巾があるので、お願いします!」
わかりました!
 失敗だ。介助のためにやってきたサカキさん。彼を抱き上げて、
「うわー、ズボンもびしょびしょ。着替えさせないと。車椅子のクッションも濡れてますので・・・」
この大雨、外で干すとかえって湿る。どうしよう?
 これを契機に、一斉にトイレチェックを始めるサカキさん、アライさん、トクダさん。今日は男手が多いからいいけど・・・障害者さんって、何故か男の子が多いんだよね。ここだって、若い重度さんで女の子はミホちゃん、アズサちゃん、アカリちゃんぐらいのものだ。所長さんも言ってた。もっと男性のスタッフを募集したいって。出来たら、三十代までの人で。でも、そのぐらいの年齢の男性は、なかなか来てくれないみたいだ。
「着替えてもらいましたので、その旨、連絡帳にお願いします。」
アコーディオンカーテンの隙間から、鋭い目つきでこちらにを睨んでくるサカキさん。
「ユキ君、マイナスです。」
「ケンタロウ君、プラスです。」
時計を見て、記録票に記入する。そこへ、ヨシナガさんが
「タマキさん。ミホちゃんのトイレ介助、覚えていただけますか?サカタニさんと一緒に入ってもらって。」
お願いします!
「そうですね、始めてですし、抱えてもらう方がわかりやすいかな?」
トイレの中で待機する私。サカキさんはミホちゃんの車椅子をトイレに侵入させ、リクライニングを起こした。
「じゃあ、ベルトをはずして、お願いします!」
よいしょ!わぁ、ミホちゃんって背が高い!
「私より大きいですね!」
こりゃ、小柄な人じゃ彼女を持ち上げるなんて無理だわ。
 大仕事を終えて、ようやくお食事。
「ヒロノさん、ありがとうございます。いただきまーす!」
今日のメニューはすき焼き。
「タカオ君、美味しそうだよ。」
食欲旺盛だから、食べさせていてもやりがいがあるよ。