彦中三八ブログ 

彦島中学校を昭和38年3月に卒業した同期生のためのブログ。 掲示板「彦中昭和38年卒同期会」にもお立ち寄りください。

夢 三、セレブ修行 樹脂からプラスチックへ

2014年03月16日 13時50分47秒 | イベント・出来事・生活
僕たちは南仏だか、エーゲ海の島だかに、到着した。
「セレブってことになると、やっぱ、西欧が本場ってことだよな。
 上等だ!」とタラップから降りた僕は乗ってきた船を振り返った。

船は、真っ白な豪華遊覧船だった。
ポアロさんが登場するTVドラマで見た船の形に似ているような気がした。
※覚醒後、検索してみましたが、船の画像は発見できませんでした。
 が、ドラマの名前は判りました。名探偵ポアロシリーズの「ナイルに死す」です。
 
 このおっちゃんが出演しているドラマね。

この遊覧船、船首が丸っこくて、船底も平で喫水も浅い、こんな船で
外洋を航海できたもんだと、ちょっと不思議な感じがした。

僕たちと書いているけど、乗船中や上陸後のある程度の期間までは、
彼女と一緒だったような気がする。
たけど、初めから別々の行動を強いられていたのかもしれない。

何故なら、このシーンでは彼女は確としたイメージでは、一度も
登場していないからだ。
ただ、「修行」の前期ぐらいまでは、行動を共にしていたいたような
感覚は残っているのだ。「一緒感」とでも言おうか、そんな気配は
記憶している。

僕たち(あるいは僕)は色々なレッスンを受けた。
が、個別のレッスンの課目はまったく憶えていない。

教えられた通りに行動するだけでは、その課目の卒業は許されないのだ。
教えられたという痕跡をみじんも感じさせない、自らが自然に会得した
行為に見えて、初めて卒業を許されるのだ。

だから修行した全ての課目を、僕は憶えていない。
言葉を自然に獲得した幼児期のことを思いだせないように、僕は
修行の内容を思いだせないのだ。

ただ、最後のレッスンだけは憶えている。
ドッジボールぐらいの大きさの樹脂を僕は与えられ、「それを君の手だけで
鍛練しなさい」とだけ告げて、教師は去った。

まあ、とにかくやってみましょうかと、僕は渡された樹脂と向き合った。
樹脂はある程度の弾性もあり、粘りけもあったが、べたつきはなかった。

「いい子だ。でさ、君は何になりたいの?」僕は樹脂に語りかけた。
なでたり、軽く押したりしながら、話しかけた。まるで猫の背中を
なでるような感じでね。

「何になりたいなんて!? そんなこと分からないわ。今はあなたに
 こうして触っていただくと心地いいだけよ。ただ、心地よさが私の
 中で、満杯になったら、次の欲求が生まれると思うの。その時になったら
 またお伝えするわ」
 
喉をゴロゴロとは震わせなかったが、樹脂は満足そうに答えてくれた。
樹脂はステップ毎の終わりに、僕に「ご要望」を伝えた。

合計で20ステップぐらいの工程だったと思う。僕は樹脂さんの
ご要望に応えて、いろんなことをした。

陶芸の粘土をこねる作業のような工程。
パン生地の空気抜きみたいに、作業台に何度も叩き続ける工程。

大きな木槌でたたき伸ばし、広がった樹脂さんを折り重ねて、また
木槌で叩きのばす作業を繰り返す。

電動のサンダーや研磨機で削ったり、磨いたりもした。

このステップはもう終りだと思うのに、樹脂さんの「ご要望」が
聞こえないので、僕は訊きました。

「次はどうしてほしいのですか」
樹脂さんの声が消えていた。
僕は樹脂さんを見た。

樹脂はプラスチックに変っていた。
プラスチックのゼンマイバネになっていた。
ぐるぐる巻きのゼンマイバネは直径が30㎝ぐらい、幅は4㎝ぐらいの
大きさだ。

そうか、樹脂はプラスチックに変成したのだ。だけど、樹脂さんは
樹脂の属性に依存していたからおれなくなったなったんだろう。
すっと消えるなんていいね。いい消え方だよね。
樹脂さん、さようなら。また会えたらいいね。

それにしても樹脂からプラスチックに変わったゼンマイバネは
恐ろしく綺麗な色を見せていた。緑色や青色の系統のあらゆる名称を
捜しても、当てはまる名称がないと言ってもいいほどの美しさだ。
この世のものとは思えない素晴しい発色だった。
(ハハ、この世の世界の出来事ではないのにね)

ゼンマイバネに語りかけても、ゼンマイバネは沈黙していた。
まだ、命が宿っていないようだった。

「いいよ、今のこの美しさだけで充分だ。『ゼンマイバネさん』と
 話しかけられるようになるには、時間がかかるかもな。その時
 また話そうよ」

[続く]
by K

最新の画像もっと見る

コメントを投稿