明けましておめでとうございます。今年も皆様のご多幸を祈っております。
さて,年が明けるやいきなり北朝鮮による日本人拉致問題をめぐり,複数の民主党関係者が昨年の夏以降,数回にわたり中国北京で北朝鮮側と極秘に接触していることを明らかにする報道が飛び出しました。
この接触は,政権交代の実現する少し前から始まり,鳩山内閣の発足とともに本格化したとのことですが,小沢幹事長に近い人物がほぼ月に1回の割合で北京の北朝鮮大使館を訪問しており,昨年10月中旬には,別の党関係者が首相官邸サイドの意向を踏んで訪中し,仲介者を挟んで北朝鮮の高官と会い日朝間の諸懸案について意見交換をしているというものです。
この日朝間の交渉の中で,北朝鮮側は,名前や身分などを明かすにはしないが「体を壊した人がいる」などと返事をして何人かの拉致被害者の生存を示唆したのです。体を壊した人と言われると,やはり横田めぐみさんのことを連想してしまいますが,北朝鮮としても,究極の対日カードの存在を匂わせてきたところは,改めて北朝鮮のしたたかな外交テクニックを見せ付けられる形になりました。
このような経緯と相前後して,鳩山首相は,昨年12月,記者会見で,条件が整えば自らが訪朝することの可能性にも言及していることからも,この間の極秘の日朝交渉が煮詰まりつつあることを想起させるのです。
そして北朝鮮側の対応如何によっては,今年夏に行われる参議院選挙前にも日朝間の公式協議は開始される可能性もあり,それが鳩山内閣の支持率の回復や小沢幹事長の政治資金規正法違反問題との関連にも影響することが予想されます。
しかし北朝鮮は,当然拉致被害者の開放を小出しにしながら,日本から可能な限りの経済的援助を引き出し,さらに米朝交渉を有利に進める材料にもしようとする意図があるのは明白なのですから,民主党としても党利を優先させようとして焦り,安易な妥協をするとしたら,大きな国益の損失になりかねないことを十分認識すべきでしょう。
ところで,警察当局は帰国した拉致被害者に対する事情聴取を進めており,蓮池さんら帰国した拉致被害者から詳細な証言を得ていることが明らかになりました。日本から北朝鮮に拉致された被害者たちは招待所に収容されて,対外情報操作部という工作機関で日本語教育などの教官をさせらていますが,昭和53年,54年そして61年に大規模な工作機関の組織改編や人事異動が行われ,その都度拉致被害者が選別されて,その後それら拉致被害者の消息が不明になっているそうです。
同拉致被害者は,「組織改編は61年のときが特に大きく,それまで一緒に招待所で暮らしていた日本人の大半がそのとき姿を消しました。当時蓮池さん夫妻,地村保志さん夫妻,横田めぐみ・田口八重子さんの各ペアは,忠龍里内の2地区の別棟の家屋に住んでいて,その他に2名の男性もいて,忠龍里には少なくとも8人の日本人が住んでいました。そして61年の大規模組織改編の後,それまで忠龍里に住んでいた日本人の大半が姿を消してしまい,田口さんにはその後会っておらず,2人の男性の行方も分からなくなってしまいました。残った蓮池さん夫妻と地村さん夫妻,それに横田めぐみさん5人はその後大陽里の収容所に転居したことが後でわかりました。」などと証言していますが,横田さんを除く蓮池さんら4人はその後日本に帰っているのです。
このような61年ころの出来事は,北朝鮮側が日本側に,田口八重子さん(当時20)や増本るみ子さん当時22)らの消息が不明になったと説明した時期と一致していることからも,妙に信ぴょう性を帯びていて,田口さんらの消息が気掛かりとなります。
北朝鮮側は,そのころ,利用価値の高い拉致被害者とそれ以外の者を選別し,利用価値の乏しい者の存在を闇の中に葬ってしまった可能性があると考えるべきでしょう。
もちろんこれらの証言は,当然政府も把握していることであり,昨年来の極秘の日朝交渉もそうした事実関係を前提にして行われているものと考えられます。しかし政府としては,小泉元首相が過去に訪朝して,蓮池さんら拉致被害者を日本に連れ戻していますが,その際,その他の拉致被害者である横田めぐみさんらはすでに死亡している旨北朝鮮から通告されたことを家族らに報告すると,これが国民の北朝鮮に対する強硬姿勢に火をつける形になり,その後北朝鮮が横田めぐみさんの元夫に横田さんの死亡を証言させたり,横田さんの偽の遺骨を持ち出したりした事情も重なり,日朝交渉が決裂状態になってしまった経験があるので,これと同じ轍を踏むわけにはいきません。
そこで政府としては,今後,中途半端な解決により国民感情を刺激してしまうことを避けつつ,一定の成果を得るため,綱渡り的な交渉を模索しなければならないのです。
日本,北朝鮮双方は,お互いの国状を尊重しつつ,大胆な決断をしなければならない時期に来ていることを認識し始めているようにも考えられます。私個人としては,生存する拉致被害者がいるのであれば,その取り戻しを最優先させる政治決断をするべきだと思います。
この問題は,拉致という行為の責任を問う刑法上,国際法上の犯罪行為として捉えるだけでは本質的な解決には絶対ならないと思います。 第二次大戦後,朝鮮戦争を挟んで継続して,経済的にも軍事的にも極限状態にあった国により行われた一種の戦争行為の清算という側面が強いと言うべきなのですから,拉致被害者家族の説得という高いハードルはあっても,それを乗り越えて,大胆な政治決断を断行すべきです。喉に深く刺さった小骨を抜いて拉致問題の解決を前進させられるかどうか,その真価が問われる年になりそうです。
さて,年が明けるやいきなり北朝鮮による日本人拉致問題をめぐり,複数の民主党関係者が昨年の夏以降,数回にわたり中国北京で北朝鮮側と極秘に接触していることを明らかにする報道が飛び出しました。
この接触は,政権交代の実現する少し前から始まり,鳩山内閣の発足とともに本格化したとのことですが,小沢幹事長に近い人物がほぼ月に1回の割合で北京の北朝鮮大使館を訪問しており,昨年10月中旬には,別の党関係者が首相官邸サイドの意向を踏んで訪中し,仲介者を挟んで北朝鮮の高官と会い日朝間の諸懸案について意見交換をしているというものです。
この日朝間の交渉の中で,北朝鮮側は,名前や身分などを明かすにはしないが「体を壊した人がいる」などと返事をして何人かの拉致被害者の生存を示唆したのです。体を壊した人と言われると,やはり横田めぐみさんのことを連想してしまいますが,北朝鮮としても,究極の対日カードの存在を匂わせてきたところは,改めて北朝鮮のしたたかな外交テクニックを見せ付けられる形になりました。
このような経緯と相前後して,鳩山首相は,昨年12月,記者会見で,条件が整えば自らが訪朝することの可能性にも言及していることからも,この間の極秘の日朝交渉が煮詰まりつつあることを想起させるのです。
そして北朝鮮側の対応如何によっては,今年夏に行われる参議院選挙前にも日朝間の公式協議は開始される可能性もあり,それが鳩山内閣の支持率の回復や小沢幹事長の政治資金規正法違反問題との関連にも影響することが予想されます。
しかし北朝鮮は,当然拉致被害者の開放を小出しにしながら,日本から可能な限りの経済的援助を引き出し,さらに米朝交渉を有利に進める材料にもしようとする意図があるのは明白なのですから,民主党としても党利を優先させようとして焦り,安易な妥協をするとしたら,大きな国益の損失になりかねないことを十分認識すべきでしょう。
ところで,警察当局は帰国した拉致被害者に対する事情聴取を進めており,蓮池さんら帰国した拉致被害者から詳細な証言を得ていることが明らかになりました。日本から北朝鮮に拉致された被害者たちは招待所に収容されて,対外情報操作部という工作機関で日本語教育などの教官をさせらていますが,昭和53年,54年そして61年に大規模な工作機関の組織改編や人事異動が行われ,その都度拉致被害者が選別されて,その後それら拉致被害者の消息が不明になっているそうです。
同拉致被害者は,「組織改編は61年のときが特に大きく,それまで一緒に招待所で暮らしていた日本人の大半がそのとき姿を消しました。当時蓮池さん夫妻,地村保志さん夫妻,横田めぐみ・田口八重子さんの各ペアは,忠龍里内の2地区の別棟の家屋に住んでいて,その他に2名の男性もいて,忠龍里には少なくとも8人の日本人が住んでいました。そして61年の大規模組織改編の後,それまで忠龍里に住んでいた日本人の大半が姿を消してしまい,田口さんにはその後会っておらず,2人の男性の行方も分からなくなってしまいました。残った蓮池さん夫妻と地村さん夫妻,それに横田めぐみさん5人はその後大陽里の収容所に転居したことが後でわかりました。」などと証言していますが,横田さんを除く蓮池さんら4人はその後日本に帰っているのです。
このような61年ころの出来事は,北朝鮮側が日本側に,田口八重子さん(当時20)や増本るみ子さん当時22)らの消息が不明になったと説明した時期と一致していることからも,妙に信ぴょう性を帯びていて,田口さんらの消息が気掛かりとなります。
北朝鮮側は,そのころ,利用価値の高い拉致被害者とそれ以外の者を選別し,利用価値の乏しい者の存在を闇の中に葬ってしまった可能性があると考えるべきでしょう。
もちろんこれらの証言は,当然政府も把握していることであり,昨年来の極秘の日朝交渉もそうした事実関係を前提にして行われているものと考えられます。しかし政府としては,小泉元首相が過去に訪朝して,蓮池さんら拉致被害者を日本に連れ戻していますが,その際,その他の拉致被害者である横田めぐみさんらはすでに死亡している旨北朝鮮から通告されたことを家族らに報告すると,これが国民の北朝鮮に対する強硬姿勢に火をつける形になり,その後北朝鮮が横田めぐみさんの元夫に横田さんの死亡を証言させたり,横田さんの偽の遺骨を持ち出したりした事情も重なり,日朝交渉が決裂状態になってしまった経験があるので,これと同じ轍を踏むわけにはいきません。
そこで政府としては,今後,中途半端な解決により国民感情を刺激してしまうことを避けつつ,一定の成果を得るため,綱渡り的な交渉を模索しなければならないのです。
日本,北朝鮮双方は,お互いの国状を尊重しつつ,大胆な決断をしなければならない時期に来ていることを認識し始めているようにも考えられます。私個人としては,生存する拉致被害者がいるのであれば,その取り戻しを最優先させる政治決断をするべきだと思います。
この問題は,拉致という行為の責任を問う刑法上,国際法上の犯罪行為として捉えるだけでは本質的な解決には絶対ならないと思います。 第二次大戦後,朝鮮戦争を挟んで継続して,経済的にも軍事的にも極限状態にあった国により行われた一種の戦争行為の清算という側面が強いと言うべきなのですから,拉致被害者家族の説得という高いハードルはあっても,それを乗り越えて,大胆な政治決断を断行すべきです。喉に深く刺さった小骨を抜いて拉致問題の解決を前進させられるかどうか,その真価が問われる年になりそうです。
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