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ダークフォース 第三章 中編 VIII 下書き

2010年10月12日 20時51分07秒 | ダークフォース 第三章 中編(仮)
   Ⅷ

 この時、ヤマモトは表面では冗談じみた言葉を交わしていたが、
 その裏では、真剣にこの化け物じみた存在であるウィルローゼの事を、
 冷静に分析していた。
 まさに『女帝』の名に相応しい実力を持ち合わせているのは、
 彼女が全力を出していない今でもわかる。
 資質で言うならば、彼ヤマモトの兄である『覇王 サードラル』を、
 超えているのではないかとさえ、思わせるほどだ。
 単純に、彼ヤマモトとウィルローゼの実力を天秤にはかけられはしないが、
 ヤマモトはその膨大な経験値により、格は彼女の方が上だと考えている。
 実際に当たってみないと何とも言えないが、
 ウィルローゼのその未知なる力は、ヤマモトの測定範囲の外側にある。
 ヤマモトは、彼女ウィルローゼの実力を体感してはいるが、
 見切れてはいないというのが本音だった。
 まだ、底知れぬ何かを隠し持っているような気さえ、ヤマモト程の戦士にさせるだ。
 ちなみに、ヤマモトはマスタークラスと呼ばれる戦士の中では、
 最高クラスの実力を持っている。
 ヤマモトは、地上最強の攻撃力をその手に握りながら、
 困惑と期待と血のたぎる興奮を覚えつつも、努めて涼しい顔でいた。

 その二人のやり取りを、エストとはまた別に、見つめる傍観者がいる。
 マイオストと、バルマードの二人だ。
 彼らは、バルマードしか知らない秘密の覗き窓から、その状況を見届けていたが、
 ヤマモトとウィルローゼの会話の内容は、エストと違って聞き取れていた。
 テレパシーのような思念を読み取る能力を、マスタークラスの戦士である二人は、
 持ち合わせている。
 これは、音速を超えた戦いをする戦士にとっては、不可欠な能力でもある。
 乙女の居室を覗く変態中年の二人だが、
 先に口を開いたのは銀髪の男、マイオストだった。

「・・・見てはいけないモノを見ている気がするのですが、
 私の身の保障の方は、大丈夫ですよね?
 口封じとか、されないですよね?」

 そんなマイオストに、バルマードは豪気に言った。

「あははははっ!!
 そんなつもり、万に一つしかないからねッ!!」

「ま、万に一つはあるのですか。」

 二人の存在は、ヤマモトとウィルローゼには気付かれてはいないし、
 音漏れのない便利な壁を、ウィルローゼの方から作ってくれている。
 マイオストは、続けてこう言った。

「しかし、ウィルハルト王子に姉君がいらっしゃったとは。
 私もてっきり王子は中性だと思っていたのですが。」

 バルマードは言う。

「あはは・・・、ウィルハルト自身は中性だよ。
 かみさんが男の子と女の子の両方が欲しいっていったから、
 今みたいになってるけど、実は本当に姉妹にもなれちゃうんだね。」

「なんと!?
 それでは、オーユ様とうちのセリカみたいな関係ですなぁ。
 オーユ様は、中性に生まれ、覇王の妃となられたお方。
 あなたの師匠同様、私も、オーユ様には恋焦がれたものです。
 甘酸っぱい、マイメモリーですがね。」

 そう言ったマイオストに、少しだけ困った顔をしたバルマードは、
 彼にこう言う。

「だと良かったんだけどね。
 むしろ、君なら知っているだろう、あの『邪王 アトロポジカ』の方に近いんだよ。」

「邪王 アトロポジカ!?
 そりゃまた、大変なお方の名前が出てきましたね。
 お姉さんのアリスさんの方には、二度と合いたくないといっても過言じゃないです。
 妹さんのフェノさんがとてもお優しい方だったから、
 今も生き長らえているみたいなものですからな。」

 バルマードは、ダメ元で、マイオストにある品物が手に入らないかを尋ねてみる。

「ねぇ、マイオスト君。
 君の才能で、邪王が所持している『ジュエル オブ ライフ』みたいなお宝が、
 手に入らないものかねぇ?
 カネに糸目は付けないからさぁ。」

「ジュ、ジュエル オブ ライフですか!?
 あれは、生命すら創生出来るいわば『神器』ですよっ。
 あれさえあれば、自分の理想の女の子(男の子)だって誕生させることが出来ちゃう、
 至高のレアアイテム。
 私程度が手に入れられるものなら、とっくの昔に俺の嫁!を誕生(デビュー)させて、
 大家族の一員ですよ。
 少子高齢化に歯止めをかける馬力を見せてあげちゃうくらいです。」

 バルマードは、無茶な要求であることは理解していた為、
 マイオストに、すまないねといった感じのウィンクをした。
 そして、バルマードは言う。

「いやーね、ウィルローゼの姿を見せることで、
 君に何らかのヒントを提示出来るんじゃないかなって、そう思っただけなんだよ。
 ウィルハルトも、ウィルローゼも、
 一つの命を共有しているから、それが不憫でね。
 家族三人、仲良く肩を並べたいんだけど、表に出ていられるのはどちらか一方だけでね。
 そこは話が長くなるから、別の機会があれば話そうと思うけど、
 レイラの、妻の母体を守る為にウィルローゼがそう望んだというかね、
 意地悪そうな子に見えるけど、実はとてもいい子なんだよ、あの子は。」

 そう言って、父親の顔になるバルマードに向かって、
 マイオストは言った。

「そうですな、始めから無理と決め付けては、芸がありませんし。
 私の、ファールスの端末へのアクセス権はセリカ並みに高いですので、
 情報収集してみることにしてみますよ。
 ですが、さすがに『神器』に関わるデータですので、コソコソと嗅ぎ回ってみます。
 バルマード殿は、ウチのマベルをご存知かはわかりませんが、
 セバリオスの所のフェルツ同様に、魂の器の生成に関する情報は、
 大変デリケートなものでして。
 『ジュエル オブ ライフ』のように安定して存在する物の方が、
 むしろ、奇跡と言えますので。」

「感謝するよ、マイオスト君。
 では、見学の続きと行こうか。」

 そう言ったバルマードに、マイオストは興味本位でこう尋ねる。

「ヤマモト師匠の錬気は、凄まじいものがありますな。
 どのくらいの攻撃数値を叩き出していると思いますか?
 私の予想は『2000』ですけど。」

「ハッハッハッ、
 私や君が300~350くらいだから、
 多分、その遥か上を師匠は行っておられるだろうね。
 ここまでの技は、私にすら見せた事はないからねえ。
 1000の数値を超えてる時点で、もう人の域を超えてはいるね。
 そうだねぇ・・・、私の予想は『9000』だよ。」

「9000!?
 守りの壁の物理防御力5000を越えて、
 空間そのものを異界へと繋げるほどの威力ですか。
 伝説の剣皇は、今なお健在といった所ですなぁ。」

 そのバルマードとマイオストの視線の先で、
 未だじっと対峙し続けるウィルローゼとヤマモトの姿がある。
 ウィルローゼの方は、ちょこちょこと手を出しているのだが、
 常人の目にはまるで止まっているかのように、着衣すら乱れさせない。
 ウィルローゼは高い能力を持ってはいるが、剣術の知識が皆無な為、
 その単調な攻撃がヤマモトをかすめる事は無い。
 父親のバルマードなどにキチンと手ほどきを受けていたなら、
 とっくの前に倒されていただろうと、ヤマモトは思う。

(しかし、なんちゅー規格外のスペックを持っとるんじゃ、
 この悪い魔女さんは。
 神速を誇るこのワシと、大して変わらぬ動きをしておるぞ。
 オメガの重たさに助けられておるが、慣れるのは時間の問題じゃろうて。)

 ヤマモトの言うように、
 ウィルローゼの手にする伝説の剣・オメガは、とても重たい。
 それも、持つ者の力量に応じて重量が増す為、
 ウィルローゼは大槌よりも重たい物を振り回しているということになる。
 原因は、オメガに埋め込まれたダーククリスタルが
 使用者に反応してその力を増幅しているからなのだが、
 現在、そのオメガの重量は、
 この堅牢なる王城、ドーラベルン城の質量に匹敵するといっていい程に激しく重たい。
 鋼鉄どころか、アダマンタイトでさえ紙のように引き裂く威力を持ってはいるが、
 肝心のウィルローゼが、その剣に振り回されている。
 それでも、その速度を微塵も鈍らせないのは、やはり流石と言えた。
 ウィルローゼは、オメガの切っ先を指先で撫でながら、ヤマモトに言う。

「当たらなくては、どんな宝剣も持ち腐れですわね。
 私個人と致しましては、
 お父様の持つそのオメガと同形のこの剣を手にしているだけでも、
 十分にうっとりとしてはいるのですが、
 自己満足もほどほどに、ヤマモトさんに一撃当てるか、
 もしくは、ヤマモトさんのその奥義が咲かせる色を、見てみたいものです。
 2000回近くも空振りしている、今のこの私の技量では、
 ヤマモトさんのその安物の泥色の服さえかすめるのは、到底無理な話でしょうけど。」

「ド、ドロ色て・・・。や、安物で悪かったな!!
 そりゃ、お前さんが着ておる皇族仕様のレトレア織のドレスに比べれば、
 どんなオートクチュールの作務衣を着たとて、
 安物呼ばわりされてしまうじゃろうがの!!」

「よろしかったら、今度、ゴールドとプラチナの糸で編んだ作業着を、
 ヤマモトさんに差し上げましょうか?
 私、ウィルハルトの裁縫技能を利用することが出来ますので、
 上等な物を仕立てて差し上げましてよ。」

「そんな派手で嫌味な服、いるかぁ!!」

「あら、残念。
 そうですわね、ウィルハルトのボケが、
 もう少し剣術の腕を磨いていたなら、その技能を横取りして、
 もっと華麗に舞うことも出来たのでしょうに。
 まあ、よいでしょう。他の解決法を探せばよいだけなのですから。」

「・・・なるほどの。
 ウィルちゃんをバルマードのヤツが花嫁修業させるわけじゃて。
 こんな、悪い魔女が憑りついておるのじゃからのう。」

 ウィルローゼは、そんなヤマモトの皮肉にも満面の笑みで応える。
 その様相は、まるで絵に描いた天使の微笑みだが、
 きらめきを放つゴールドの瞳の裏には、次なる悪戯を考える悪い魔女がいる。
 ウィルローゼは、ヤマモトにこう言った。

「ヤマモトさんの必殺剣の軸線上に、エストさんが重なるようにしようかしら。
 私、一応、これでも気を遣って、
 エストさんへ害が及ばない立ち位置を取っていますのよ。
 私の守りの壁を越えて、エストさんに攻撃が当たってしまうことを考慮した上で、
 せっかく、ベストな立ち位置にいて差し上げていますのに。
 ああ、そうですわ。
 いまさらエストさんに逃げろと仰っても無駄なことですわよ。
 音声の方は遮断されておりますので。
 ジェスチャーでしたら、幾らでもして差し上げて結構ですけれど。
 ウフフフフ・・・。」

「ふん、用はさっさとかかって来いと言うわけじゃな。」

「察しがよろしいようで、助かりますわ。」

 ヤマモトはやむなしといった感じで、その奥義の体勢に入る。
 ウィルローゼとヤマモトの距離は、3,5メートル。
 太刀・第六天魔王のリーチならば、踏み込むだけで当てられる距離だ。
 ヤマモトは、その必殺剣を当てる自信は十分にあった。
 しかし、ヤマモトには別に考えがある。
 この絶世とも言える美姫であるウィルローゼを、
 出来れば無傷で手に入れたいという欲だ。
 その美しさたるや、他に類を見ないほど神々しいといってもよい。
 あれほど美しいウィルハルトの、さらに上を行く美しさだ。
 さらにその美しさは成長の過程にあり、
 ヤマモトが欲して手にすることの出来なかった、
 あの『覇王妃 オーユ』にも匹敵する強さと美を兼ね備えている。
 その類まれなる資質を持った彼女を、
 純粋に覇王を目指した者の一人として、ヤマモトは欲した。
 この好機を取り逃す術はない。
 故に、他の何者にも見せることを拒んだ究極の秘奥義すら躊躇わずに出した。
 ウィルローゼの実力は本物だと、ヤマモトの戦闘経験は告げる。
 半端な必殺剣など、第五の太刀が防がれた時点で錬気の無駄だと理解した。
 ヤマモトは、人の戦士を相手に戦った経験が極端に少ない。
 彼の相手を出来る者が、いなかったと言った方がより正しい。
 よって、ヤマモトの剣皇としての戦闘経験は、熾烈な異界の神々とのモノが大半となる。
 ヤマモトは、リミッターを解除し、圧倒的な超攻撃力を発揮する戦い方は得意だが、
 逆に加減は苦手である。
 ヤマモトが戸惑っていたのは、まさにそれで、
 ウィルローゼの持つ強大な防御力を貫いた上で、
 彼女の存在を消失させることなく打ち伏せる術を模索していた。
 歯がゆい事に、ウィルローゼは自身の身体のみに鉄壁を誇る『守りの壁』を纏わせてはいない。
 それは、第五の太刀を打ち込んだ時に、彼女が僅かに傷を追った事で証明されている。
 ウィルローゼは、自分の持つその優位性を利用する事無く、
 純粋に戦士としての能力のみで、彼ヤマモトを相手しているのだ。
 それは、誇りに満ちた気高い行為ではあるが、少々、度の過ぎた火遊びでもある。
 単純に、一戦士としての防御力には、どれほどの天賦の才があろうとも限界というものがあるからだ。
 ヤマモトは、その太刀の切っ先だけを触れさせて勝負を着ける気でいた。
 ヤマモトは叫ぶ! その秘奥義の名を!!

「剣皇剣・覇、第九の太刀『暗黒』!!!」


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