飛騨さるぼぼ湧水

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(続)連載小説「幸福の木」 318話 黒船の正体?

2022-08-26 21:59:51 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、ちょっと涼しくなりました、はい、先生の原稿が届きましたが、ちょっと多いので、途中切れになるかもしれません。早速小説に参りたいと思います、はい、では開幕開幕!

318話 黒船の正体?

前方に見える船の黒い影は次第に大きくなっていった。
太陽はもう西の空に傾いていて、高い建物には長い影が伸びていた。
「あっ、あれは黒船だ!アメリカから黒船が来た!って武士が言ってた。きっとそれだ」
太郎が叫んだ。
「まさか?黒船って江戸時代や明治の話じゃろう、もう200年も前の話じゃ、それにしても、なんで勉強嫌いの太郎が黒船を知ってるんじゃ?」
長老達は、そっちの方に驚いた。
「ああ、この前、古い刀や槍のテレビを見ていたら、黒船の絵が出ていた。あの黒い影はそっくりだ、まちがいない」
早速、たちまちに反論が出た。
「200年も前の海の船が、なんでこんな山の村にあるの?おかしいでしょ?」
ハナナが怒ったように否定した。
「あれーっ・・もしかして・・」
ハナが大声を出した。
「もしかしてって、何よ?早く言って、言って」
ハナナが待ち切れなかった。
「ああ、もしかしてノアの箱舟かも?山に辿り着いた大きな船って、言ったら、ノアの箱舟しかないわ」
ハナが答えた。
「何?ノアの箱舟って何だ?」
今度はタタロが聞いてきた。
「ハハハハハー、それは有り得んじゃろう、ノアの箱舟って言ったら、もう何千年も前の話じゃからのう」
修験者と長老が互いに顔を見合わせて大笑いした。
「ノアの箱舟って何?」
何も知らないハナナが質問した。
すると、外国人家族の姉が日本語と英語を混ぜて言い出した。
「あのサ、それはサ、バイブルそう聖書と言う世界一古いキリスト教の本に書いてある伝説の船よ。
昔、大雨が降って地上が海のようになった時、その船に乗っていた人達だけが助かったのよ、その人の名前がノアよ、だからノアの箱舟って言うのよ」
「えーっ、それじゃ、他の人達はどうなったの?」
驚いたハナナが聞いた。
「そう、皆死んじゃったのよ、その船に乗っていた人達が、今の私達の先祖なのよ」
姉は日本語でもスラスラと答えた。
「おお、さすが私達の娘だ、よくキリスト教の聖書を学んでいるな」
ずっと見守っていた外国人夫婦は満足そうにうなづいていた。
「それじゃ、私達も、その子孫って言う事なの?」
ハナナが不意に聞いた。
「バーカ、何言ってるんだハナナ!俺達は、もっと古い過去の時代から来ているんだぞ、忘れたのか?そのノアさんよりも俺達の方がずっと古いんだぞ」
タタロが怒ったように言うと、ハナナは恥ずかしそうにシュンと黙ってしまった。
静かになると、珍しくゴクウが言い出した。
「あの、洪水で地上が海のようになったと言う伝説は世界中にあるみたいです。日本にもその伝説があります。竹の内文書と言う本です、そこには、洪水の後に、ここ飛騨の位山と言う山に天空の浮き船から天皇の先祖が降り立ったと言う話が載っています」
「えーっ、それじゃ、日本人の先祖は・・」
「ブブブーーーウ!」
ちょうどその時、バスが急にスピードを落とした。
「あのあの、いいですか?お客さん方、あそこの黒船に興味があるんでしたら、ちょっと見学していきますか?まもなく着きますので、見学されるならバスを駐車場に止めますが・・?」
皆は、運転手の声にフと我に返った気がした。
行く行く!とうなづきながら、ハナ達が言い出した。
「ああ、そうだわ、そうだわ!運転手さんに聞けばいいんだ、そんな事も忘れていたわ。あの、運転手さん、あの黒船って、いったい何ですか?どうしてここにあるんですか?」
すると、運転手はあっさり答えた。
「ああ、あれはね、村のコミュニーセンターですよ、まあ、大きな集会所って言ったところかな?、中には広い部屋や舞台がありますよ、いろいろな面白い物が集まってますよ、屋上はビヤガーデンにもなりますし、まあ、村の多目的ホールって言ったところかな?」
運転手が話している間に、バスは黒船の近くの広い駐車場に到着した。
「はーい、皆さん、到着しました。それでは降りてください、玄関前のお知らせ掲示パネルには、今日の行事が何も表示されてませんけど、見学ぐらいなら大丈夫だから、玄関の案内係にでも聞いてください、私は他にちょっと用事がありますから」
と言い残して、運転手はサッサとどこかへ消えてしまった。
皆は、少々不安に感じながらバスから降りると、木花咲姫と侍女が降車口にツアーガイドのように皆を見守っていた。
「はーい、皆さん、お知らせします。はい、大丈夫ですよ、先ほどスマホで見学と案内を申し込んでおきました。okの返事もいただいてますから大丈夫です何の心配もありませんよ」
木花咲姫が説明していると、案の定、玄関らしき所?から誰かが出てきた。
黒船の真ん中の脇腹を地面からめくり上げたような出入り口だ。
つかつかとゆっくり歩いて来たのは、制服の若い女性だった。
「こんにちは、ようこそ私達の未来村へ!いらっしゃいませ、お待ちしておりました、私は案内係の歴子と言います、早速、案内させていただきますので付いてきてください」
とてきぱき言うと、歴子さんは、きびすを返して玄関の方へ歩き出した。
皆は、すぐには付いて行く事はできなかった。
巨大な船を目の前にして、初めて見るその大きさに、度肝を抜かれていたからだ。
「わーっ、何だ?この建物は?まるっきり船じゃないか?」
まさしく何千トン級の大型船が、海から綱で引っ張られて陸の上に乗り上げたような感じだった。
見上げて立ち尽くしている皆に気づいて、案内嬢は振り向いて笑いながら説明を始めた。
「あのー、これは本物の船ではありません。外観は船の形をしていますが、内部はふつうの建物です。
でも、外壁の全面がログハウスのように、太い丸太や柱で造られていて、ゆるやかに曲がっていますので、初めて見る人達は大変な迫力を感じます」
案内嬢の説明通り、確かに、巨大な木製の大きく曲がった構造物は、見る人達を圧倒した。
そして、いつまで眺めていても見飽きる事はなかった。
よく見れば、いつの間にか太郎が垂ていた縄ハシゴに掴まって船の巨大な横腹を登っていた。
そして、ゴクウも追うように、丸太の壁を直に登っていた。
その下ではケンが心配して吠えていた。
しかし、そんなちっぽけな姿など見落とすほどの、船の大きさだった。
夕陽に照らされた、大きな船の横腹を見ながら長老が、
「やはり、太古の昔の人達が初めてノアの箱舟を見た時には、きっとワシ等と同じように感動したじゃろうな」
と、しみじみ言うと、ハナ達も、その昔の時代にタイムスリップしたような気になった。
しばらく皆は無言で黒船の丸太の横腹のカーブを見つめていた。
「ああ、そうじゃ、あの高いところにある丸い小さな窓は、ノアの箱舟には無かったじゃろうな、ペリーが乗ってきたアメリカの黒船にはあったじゃろうが・・」
修験者が丸いガラス窓を見上げながら言った。
「はい、その通りです。側面の上部の小さな丸い窓は、旅客船と同じ位置にあります。あの窓は二階広間の採光用の窓となっています」
「ほほう、それじゃ、船の中はいったいどんな風になっているのじゃ?」
長老が、皆の気持ちを代弁するように質問した。
太郎やゴクウもケンももどっていた。
「はい、それでは、船の中に入る前に、簡単に内部を説明いたしましょう」
と言って案内嬢は玄関前に皆を集めた。
建物の玄関は船のど真ん中の横腹下にあった。
その側面に、三メートルほど離して2本の切り込みを入れて、下から壁を持ち上げて、それをそのまま屋根にしたものだった。
もし、その屋根を支えている柱を取り去れば、屋根が船の側面にもどり、船の穴は塞がれる事になる。
「はい、この玄関は、いざと言う時には、ピタッと船の側面にもどって一滴の水も入らない構造になっています」
と、案内嬢が自慢げに説明したので、つい、太郎がからかいたくなった。
「へえーっ、いざと言う時だなんて、とんでもない、それじゃ、あんたはまた日本中が大洪水になるとでも言いたいのかい?そうなったら、それはそれで日本中が大変だ、天皇陛下も位山へ避難しなきゃ、ハハハー」
「しっ!太郎兄ちゃん、ちょっと黙ってなさいよ、!」
慌ててハナが叱った。
そして、ものすごい怒りの目でにらみつけて黙らせた。
すぐに、案内嬢は気を取り直して、再び話し始めた。
「まずここ玄関から入る船底に当る一階には、水族館と魚の養殖槽と事務所等があります」
「えっ、水族館?魚の養殖槽って?」
小さな質問の声が聞こえたが、それを無視するように説明が続いた。
「この上の二階には、大広間があります。そこには客席も設置できて、ステージも舞台もあります。
なので、宴会場や演芸や講演や講習会や様々な教室等々。多目的ホールとして利用しています」
皆は小さな丸い窓を見て、内部を想像していた。
かなり細長い空間だから、大広間の前後に旅客船と同じように
は部屋もたくさんあるのだろうと思った。
「はい、その上はもう部屋はなく、三階すべては船の甲板です。そこには野外ステージも設置できます。
夏の夜には、ビヤガーデンやバーベキュー料理などの野外レストランで賑わいます」
それを聞いてハナ達は質問した。
「それって、お祭りの日だけとか、特別な日だけなの?それとも、毎週やっているの?」
「はい、それはお客さん次第です。特に夏休みにはたくさんの行事があり、お客さん達も多くいらっしゃいますので、ほぼ毎晩営業しております。
そう、時々メキシコ料理やブラジル肉料

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