ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いよいよ飛騨も梅雨に入って、早速、今夜は豪雨で飛騨川の増水サイレンが鳴っています。
暑さより涼しい梅雨の方が有難い!とウチの先生が願っています。その先生の原稿が届きましたので、早速、小説に参りたいと想います、はい、では、開幕開幕!
406 村長のトンビの夢と熱気球と風船の夢?
ハナ達一行は、「道の駅」の案内所兼売店の建物の中にいた。
「この案内所には物知りの爺さんがいて、虫の事なら何でも聞けるから子供達にとってはいいわね」
ハナが爺さんや子供達を見ながら言った。
すると、ハナナも、
「それにさ、大人の女性の人達も草木染だって何でも教えてもらえるわよ」
と村長と話している元マドンナの草木染の先生を見ながら言った。
太郎や爺達は、ずっとながめていたスクリーンのコン虫情報も、もう見飽きたようだった。
するとタタロが太郎に話かけた。
「あのさ、隊長、こんなにいろいろな詳しい情報があるんだから、きっと釣の情報もあるはずだよ」
それを聞くと太郎も
「あっ、そうだ、そうだよ、気づかなかった!こんな大事な事に」
と慌ててスクリーン用のスマホを覗き込んだ。
「あっ、あった、あった、これだ!渓流釣情報だ」
太郎は、そう叫んでボタンを押した。
すると、スクリーン上に水色の川が多数はっきりと表示され、所々に黄色い点や赤色の点が多く現れた。
そして端に黄色は岩魚、赤色はあなご等々と魚名が表示されていた。
太郎とタタロは食い入るようにスクリーンに近寄って水色の川を凝視していた。
それを見ていたハナとハナナが、
「ああ、きっとあのエアロビクスの先生と一緒に行く魚釣りの場所を探しているんだわ」
と、冷ややかな目で兄達をながめていた。
「私達もせっかくだから、何か役立つ事を探しましょう!何か知りたい事はないかしら?」
と言って、ハナとハナナもスクリーン用のスマホを覗き込んだ。
いろいろな項目が並んでいた。
ホタルの出る場所とか、リスのいる場所とか、スズランの咲いている場所とか、いろいろ探したが、興味が湧くお目当てのような物は見つからなかった。
「あの、村長さん、村長さんは何か見たいものとか、知りたい事等はありませんか?」
と元マドンナと話し終わったような村長に聞いた。
すると村長は、
「ああワシはのう、前にも話したんじゃが、ワシはずっと昔から、トンビのように高い所からこの里山やもっと遠くの山々をゆっくりとながめたいんじゃ。
なので、前にプロジェクトを始めた頃は、熱気球や巨大な風船まで考えたんじゃ。
しかし、いざ実行となると、強風や場所や予算の関係で実現できなかったんじゃ、じゃから、今もその夢をワシは持ち続けているんじゃ」
すると虫に詳しい爺さんは、その話を聞いて、
「へえーっ、トビのように上空からゆっくり山々をながめるなんて、いやいや、まことに子供の夢のような話じゃのう、はっはっはー」
と楽しそうに大笑いした。
すると元マドンナのおばさんが、
「村長さん、分かりました、そんなに上空からながめたいんなら、私がその夢を叶えてあげましょう」
と真顔になって大きな声ではっきりと言った。
「えーっ?夢を叶えてあげるって?・・・」
ハナやハナナ達は驚いた。
長老や修験者の爺達も、また太郎達も驚いて、元マドンナのおばさんの顔を見た。
すると、おばさんは、真顔のままきびきびとした口調で尋ねた。
「それじゃ、村長さん、急いで準備をしてください!服装はそのままでいいですか?それに、トイレはいいですか?水などの飲み物は持っていきますか?」
村長が、訳も分からないままうなづいていると、
元マドンナのおばさんが、村長の肩を押して、建物の外へ案内するように連れ出した。
皆も半信半疑のまま、後に続いた。
「いったい、どうするって言うの?」
「何だ、何だ、どうするんじゃ?」
ハナ達や太郎達や爺達は互いに怪訝な顔を見合わせていた。
元マドンナのおばさんは、スマホで誰かと連絡を取っていたようだった。
しかし、皆は何事が起こるのか、さっぱり見当がつかなかった。
それも少しの間の事で、やがて、事がはっきりしてきた。
「パタパタパタパタ!」
遠くから音が聞こえてきた。
「あっ、ヘリコプターだ!ヘリコプターがこっちへ向っている」
遠くの空を見上げていた太郎が叫んだ。
ヘリコプターはすぐに上空に来て、その姿が大きく見えてきた。
元マドンナのおばさんが、手を大きく振り回してヘリコプターの操縦士に合図して、駐車場に降りるように片手で示した。
「パタパタパタパタ!」
ヘリコプターはさらに大きな音を立てて強い風を起こしながら、駐車場の中央に降りた。
すると、元マドンナのおばさんが、素早く村長を案内してヘリコプターに乗せた。
さらに店の従業員が運んできたダンボール箱も同じように乗せた。
「ゴーパタパタパタ!」
ヘリコプターはエンジン音を上げて大きな風切り音と強い風を起こしながら上昇して、たちまちの内に空高く舞い上がってしまった。
残されたハナや太郎や爺達は互いに顔を見合わせながら、元マドンナのおばさんの顔を見た。
「ああ良かった!、ちょうどいいタイミングだったわ」
元マドンナのおばさんは、ようやく緊張気味の顔をゆるませて安堵したように言った。
「あのさ、あのヘリコプターはこれから御岳山の山頂の山小屋に食糧を運ぶところなのよ。私が連絡して、村長さんもついでに乗せてあげて、上空からこの辺りの山々を見せてあげて!って頼んだのよ」
それを聞いてハナ達が、
「えーっ、なーんだ、そう言う事だったんですか?」
と、ようやく口を開いた。
「あのさ、詳しく言うとさ、実は昨日電話があってさ、あのヘリコプターの操縦士さんからよ、彼とはもう長年の付き合いよ、今日の御岳山頂の山小屋にヘリコプターで配達するんだけど、今回は運ぶ量が少ないので中型ヘリコプターで観光客も二名ほど乗せる予定だけど、空席があるから久しぶりに山小屋を見に行かないかって言う誘いがあったのよ。タダだからokしてたのよ。
そしたら、ちょうどタイミングよく村長さんが上空から気色を見たいと言うから、私が譲ってあげたのよ。私はまだこれからもいつでもチャンスがあるからね」
「へえーっ、いつでもチャンスがあるなんて、そんなにヘリコプターに乗ってるんですか?
ハナ達が驚いた。
「ああ、山小屋にいた時は、たびたび乗ったわ。それにあの操縦士さんは若い頃からの付き合いでさ、今でも今回のように誘ってくれるのよ」
するとハナナが、
「へえーっ、それじゃ、マドンナさんのファンと言うか、オシなのね?」
と言った。
すると、ハナが、
「ああ、分かったわ!きっと若い頃に彼を振ったのよ、なのでヘリコプターで通っていたんだわ、そして今も誘ってくれるのよ」
「と言った。
すると、マドンナのおばさんは大笑いした。
ハハハハ、なるほど、御想像におまかせするわ」
さて、飛び立った村長はと言えば、
何がどうなったのか思い出せないほどまたたく間に、知らぬ間にトビのように上空の人となっていた。
まさしく、夢の実現だった。
ベルトで固定された席からは、透明の円形窓を通して目の前に飛騨の山々が眼下に広がっていくのが見えた。
「フワー、フワー!
目の前の眼下の風景が、操縦士の後ろ姿や機体全体と共に地震のようにフワーッと揺れた。
操縦士が振り向いて答えた。
「ああ、気流ですね、今日は天気がいいけれど、高い山の近くには気流が発生するんですよ。この御岳山の近くにも気流が発生しているんですよ、私達は慣れているから大丈夫です、安心してください」
と皆を安心させた。
「あの、ちょっと気流を避けて遠回りして向こう側から御岳山頂へ向いますので、その間、皆さん方は飛騨の山々の気色を楽しんでください。aあそこに見えるのが乗鞍で、その奥には三千メートル級の他の山々が並んでいますよ」
「おお、これじゃ、これじゃ、ワシが見たかった眺めじゃ、ワシ達の里山と奥山の地形が、特に道から見えない裏側がどうなっているかを見たかったのじゃ」
と言って村長は、シートベルトが切れそうなほど身を乗り出して眼下の山や谷を覗き込んでいた。
「ほほう、なるほど、なるほど、あそこはあんな風になっているのか?なるほど、なるほど、あそこを平らにすれば素晴らしい庭に囲まれたかくれ宿ができそうじゃ」
村長は、眼下の山や谷の起伏を見ながら、何か大きな構想を考えているようだった。
「ワシは何とか、この山や谷を生かしながら、広大な自然とうまく調和した子供達や都会の人々が住みたくなるような楽園を造りたいんじゃ。
もちろん、そこは、海外の観光客にも日本の老人達にも誰にも夢のある、今までに無い楽しい楽園じゃ」
村長の熱弁に操縦士も隣の観光客も圧倒された。
(つづく)
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