カーボンアンテナの特徴の一つとして、短縮率がプラスになることが挙げられる。これは明らかに、カーボン釣竿の段間の静電容量によるものと考えられる。ここでは短縮率の周波数特性からカーボンアンテナの持つ静電容量を推定してみる。
ダイポールの1/λ共振点付近でのリアクタンス変化の直線モデル化
ダイポールアンテナの特性カーブを見ると、1/2波長付近におけるリアクタンスの変化は、0.05波長に対して100Ω程度である。変化を直線近似すれば、Xオームのリアクタンスをキャンセルするために必要なエレメントの長さLは、
L=X・0.05・λ/100=λ・X/2000 (m)
Lを1/2λの長さで正規化、rであらわすと
r=L/(1/2λ)=X/1000
短縮率による静電容量の見積もり
すなわち周波数fで10%の正の短縮率が発生したとし、それが静電容量によって起こったとすれば、
0.1=1/(1000×2πfC)
今回の実験では、12MHzで概ね10%程度の正の短縮率だったので、これを代入すると、
C=132pF
が得られる。(周波数と短縮率の間には反比例の関係があるので、周波数の逆数と短縮率をプロットすれば、その直線の傾きから、もっと正確に静電容量が求められるはず。)カーボン竿の格段の静電容量が数百pF程度と見積もられているので、コンデンサの直列接続でトータルがこの程度の値になるのもまあまあではないかと思う。いずれにしても短縮率が静電容量の大きさ見積もるファクターになっている。静電容量が大きくなればなるほど正の短縮率は大きくなり、そのために実効的なアンテナの長さが短くなる。
段間静電容量のアンテナ性能への影響
静電容量そのものはエレメントの追加あるいはマッチング回路によってキャンセルされるので、それ自身がアンテナの性能を劣化させることはない。しかし、実効的なアンテナの長さが短くなるため、その分放射抵抗が小さくなり、その分がアンテナの効率を悪化させる。したがって、静電容量によるリアクタンスを小さくするためにアルミ箔を巻き付けるなどの作戦はあまり効果がないばかりか、アンテナの実行長を短くするデメリットがあると思われる。