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ハイブリッドカーボンロッドアンテナ

2022-04-28 21:18:06 | アマチュア無線

1/4波長バーチカルアンテナにおける接地抵抗の影響

1/4波長バーチカルアンテナでは、給電点におけるインピーダンスが低いため、給電点において大きな電流が流れる。この電流は空間に電波として放射された後、地面を介してアンテナに戻されることになる。したがって、接地抵抗が大きいとそこで消費される電力が大きくなりアンテナの効率を著しく低下させる。実際にアースをとることによってこの抵抗を小さくすることは困難であることから、カウンターポイズやラジアルといった構成によってこの問題に対応している。ちなみにカウンターポイズは、導線によってアースを模擬するもので長さは適当でよく本数を増やすと効率が向上、ラジアルの場合は、ダイポールを折り曲げたような構成のため1/4波長に調整する必要があり、他の導電体から距離をとる必要がある。

 

参考:木下重博、カウンターポイズとエレベーテッド・ラジアルCQ Ham Radio 2017,6, pp.94-97

 

カーボンアンテナにおける抵抗の問題

カーボンアンテナにおいては炭素繊維の持つ抵抗が放射エレメントに含まれる。この抵抗がアンテナの性能にどのように影響するかが問題となるが、アンテナから電波が輻射されてアースを通って還流する回路を考えるとき、アンテナエレメントに直列に入っているこの抵抗は、前述のバーチカルアンテナの接地抵抗と全く同じ位置づけになることは明らかである。つまり、アンテナに供給される電力は、通信に寄与するアンテナの放射抵抗と接地抵抗(あるいはカーボン抵抗)によって分圧されることになり、カーボン抵抗を放射抵抗に比べて相対的に小さくすることがアンテナの効率を高める要点となるはずである。

 

アンテナの放射抵抗について

カーボン抵抗そのものが小さくできればよいが、それは材質によって決まってしまうのでユーザーとしてはあまり改良の余地がない。他方、放射抵抗はアンテナの構成によっていろいろ異なるのでカーボンアンテナに向く構成を考えることが有用である。よく知られているように、1/2波長ダイポールの放射抵抗は約73Ωになる。100Ω程度のカーボン抵抗があると想定すると、1/2波長ダイポールにおける放射効率は抵抗がない時に比べて約半分程度に低下することが考えられる。一般にエレメント長を長くすると放射抵抗は増加する方向に変化し、1波長の時の放射抵抗は93.4Ω、1.5波長で105.5Ωになる。逆にエレメント長を短くすると、0.35波長で40Ω程度となる。例えば7mのエレメント長のダイポールアンテナは7MHzにおいては0.175波長しかないことから、7MHzにおける放射抵抗は20Ω程度しかなく、カーボンアンテナでは効率は20%程度に低下する。

ここで注意しておくことは、エンドフェッド型アンテナのようにアンテナの端から給電するタイプのアンテナにおいては、給電点の抵抗は数キロΩになるが、アンテナそのものの放射抵抗が大きくなるわけではない。1/2波長ダイポールであれば、その場合でも放射抵抗は73Ωになることからアンテナ効率が改善されることはない。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p31

 

カーボンアンテナ向きのアンテナ構成

 

バーチカルタイプ

上記のような議論から、カーボンアンテナにおいてはできるだけエレメントを長くして、放射抵抗を大きくした構成のアンテナが効率の面からは有利になる。少なくとも1/2波長程度以上の長さがあれば、アンテナとして十分動作するものと思われる。さらにアンテナを長くして例えば5/8波長程度まで長くすることができれば、放射抵抗の増加並びに電流の最大部分を高い位置に持ってこられるのでさらに有利であろう。1/4波長のバーチカルの場合、アンテナの高さを高くした方が放射抵抗は大きくなることから、給電点を少しでも高くしたほうが、放射抵抗は大きくできるのではないだろうか。他方注視しなければいけないことは、エレメントの長さが長くなればその分カーボン抵抗も大きくなることである。カーボン抵抗の増加を上回る放射抵抗の増加が必要となる。なお、給電点において電流の大きなアンテナでは、接地抵抗の問題も考えなくてはいけないので、できればエンドフェッドのような電圧給電に近いタイプのアンテナの方が望ましい。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.155

 

ダイポールタイプ

ダイポール型の構成では、エレメント間の角度ができるだけ水平に近いほど放射抵抗は高くなるので、インバーテッドV型の構成よりも水平型の構成の方が望ましい。また、放射抵抗はアンテナの高さにも依存し、アンテナ高さが極端に低いと(0.2波長以下)放射抵抗も著しく低くなることからできるだけ地上から離した位置での展開が望まれる。ダイポールの場合、カーボンポールを2本使って構成するので、例えば7m×2本=14mとなり長尺のアンテナを作りやすいメリットもある。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.148

 

カーボンハイブリッドアンテナ

カーボン釣竿を使ったアンテナを利用する最大のメリットは、その軽量性と強靭性である。山岳運用などの場合にこの2つのメリットは相当大きい。一方で上記のようにカーボン抵抗によってアンテナとしてのいくつかの制限があることも明らかになった。そこで、カーボンアンテナの下部に導線を接続することにより、アンテナの全体を長くして放射抵抗を増加させる方式を提案する。銅線を追加することから抵抗値はほとんど増加せずアンテナ長を長くすることができ、アンテナ性能の改善も期待できる。他方カーボン釣竿のメリットを生かして、木に引っかけて設置すれば容易にエレメントを展開できて高い位置からの電波の輻射が可能になると思われる。

 



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