はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

『プラダを着た悪魔』

2006年11月21日 | 映画(2005-06年公開)
     

実はアン・ハサウェイがあまり好きではなかった。
ジュリア・ロバーツの後釜を狙っているのかな?
という印象が拭えないからだ。
面長の輪郭につぶらな瞳と大きな口。
ハリウッドでスター女優として成功する条件なのだろうか?


ジュリア・ロバーツが『プリティ・ウーマン』でブレイクした時にも
オードリー・ヘップバーンを真似ているのか、と憤慨した私。
とは言え、その後の彼女の堅実な仕事ぶりを見て、
今では好きな女優のひとりに数えている。

さらにアン・ハサウェイのハリウッド・デビュー作
『プリティ・プリンセス』でのプリンセス・ミア役も、
オードリー・ヘップバーンの二番煎じではないかと思っていた。
これはスター女優の王道を歩んでいるということなのか?
彼女は次作の『ブロークバックマウンテン』では裸身を晒して
体当たりの演技を見せていたけど、今ひとつの印象だった。

貫禄のメリル・ストリープ
 
本作は元々、悪魔的な(日本流で言えば、鬼?)編集長役の
メリル・ストリープの演技が楽しみで見たようなもの。
でも、今回のアン・ハサウェイはなかなか良かったな。
予告編でのダサ娘から大ヘンシーンのカットが
どうにも気に入らなかったのだけど
(また『プリ・プリ』路線なのか?と思った)
本編を見たら、これが大女優メリルに互して健闘している。

美貌と気立てで幸せを掴んだ『プリティ・ウーマン』の
シンデレラなヒロイン像とは異なり、
努力と才能で自らの人生を切開いて行く
現代女性を小気味よく演じて、
本作のアン・ハサウェイは好印象だった。
今後の課題としては、”役の幅をどう広げて行くか”だろう。
いつまでも”若さ”や”可愛らしさ”を売り物にはできないから。   

悪魔的な豪腕ぶりを見せる編集長

もちろん大女優メリル・ストリープはさすがの貫禄ある演技で、
無理難題な仕事を部下に言いつける”悪魔”ぶりを発揮。
まさに立て板に水の如く言いたいことだけを言って、
最後は"Taht's all!"(以上!)の一言で、
部下の一切の発言をシャットアウト。
これが慣れてくると、一種快感ですらあった(笑)。
メリル・ストリープだからこそ”悪魔”を気高く演じきり、
本作の”品格”さえ上げていると言って良いのではないか。
果たして、伝説のファッション誌『RUNWAY』編集長
ミランダ・プリーストリーは本当の悪魔なのか?
本作はファッションも見どころのひとつ…

私はファッションにもブランドにも疎いので、
本作に登場するファッションについて
詳しく言及するのは無理だけど、
「華麗で」「美しい」ことは、門外漢の私でもわかる。
新米社員であるヒロイン、アンディが、一着数十万円もする服や
バッグを身に付けるのにはリアリティが感じられなかったけど、
あくまでも夢を売る映画だから、これはご愛敬か?
(それとも、パーティで着るドレスなどは会社の経費で
落とせるものなのだろうか?いわば戦闘服のようなものだし)


編集長の右腕とも言えるファッション・ディレクター
ナイジェルが「ファッションは美術作品を超えている」と
言い切ったのには、正直驚いたけど。
それだけ自分の仕事に誇りを持っているということなんだろう。
それにしても時代をリードする業界の、常に張りつめた空気感、
そこで働く人々のアグレッシブな生き方は、
およそ自分とはかけ離れたものだなあと思う。
常に戦闘モードというのは、心身共にタフでなければ無理!
私生活もあるのかないのか…スイッチオフすることはあるのか…
まさに水面下で必死に水かきをしている美しい白鳥のよう。
彼女達はそうした生き方を自ら選択しているわけだけど…

インテリア

とまれ、美しいものを見るのは楽しい。
編集長ミランダの研ぎ澄まされた美意識の象徴である
ファッション、そしてオフィスのインテリアも必見だ。

冒頭からアップテンポな展開で、BGMもセンス良く、
一気に1時間50分を駆け抜けた感じで、
見終わった後は清々しい気持ちで映画館を出た。
「恋に仕事にがんばるあなたの物語」と
宣伝戦略では若い女性をターゲットにしている本作だけど、
ひとりの人間の成長物語として、またヴィジュアル的にも
誰もが楽しめる作品だと思う。

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