木村伯龍のひとり言

大阪のミナミはアメリカ村の占い師の日記

化け猫のお話!

2007-08-31 16:19:39 | Weblog

 昔のお話です。ある男が、遠くの親戚に用事があるので出かけました。山を越え、谷を渡り歩いて行きました。夕暮れが差し迫った時、一軒の旅館が見えてきました。
男はその旅館に足を踏み入れました。男は何度も泊まっている常連さんなので、旅館のご主人とも仲が良く、一番良い部屋に案内されました。その部屋は障子を開けると廊下があり、両横には向かい合わせで部屋が並んでいます。部屋の中には、旅館のご主人の先祖からの鎧(よろい)や長槍などが飾られ、雰囲気としては荘厳な感じです。
お女中さんが、お茶を持ってきました。顔見知りなので、気さくにおしゃべりします。「向かいの部屋の方は、夜遅くこちらに着くと思われるので、深夜に音がすると思われますがよろしくお願いいたします」と言って出て行きました。
食事も済ませてお風呂にも入り、”さあ寝よう”と思い布団に入りました。うつらうつらとはしていたのですが、中々寝つけません。そのうちトイレに行きたくなり、障子を開けて廊下を抜けてトイレに行きました。トイレを済ませ、その帰りしなに隣の部屋を見ると、まだお客さんは来ていない様子で行灯(あんどん)の灯りだけが点いていました。男は自分の部屋に帰ると、灯りを消して寝ました。
しばらくすると、ゴトゴトと小さな音がして、その後にスーッと障子を開ける音がしまた。”隣の客が来たのだろう”と思って耳を澄ませていると、それから音はしません。”あれっ?おかしいな?”と思い障子を少し開けて向いの部屋を見れば、真向かいの障子には大きな化け猫が行灯(あんどん)の油を舐めている姿が影になって映っていました。男は怯えて声も出せず、布団に包まって震えていました。
次の日の朝、食事の時に旅館のご主人が挨拶に来られたので、男は昨夜の事をご主人に話ました。
猫は前々から飼っていた猫が亡くなって、代わりに二ヶ月前から新しい猫を飼いだしたとの事でした。「その猫が来てから、色んな物が無くなっていたので納得です!」とご主人は言いました。そして男に向って「確かめたいので、よろしければ手伝っていただけませんか?」と言われたので男は「急いでいませんので構いませんよ」と居残る事になりました。
チャンスは直ぐに来ました。その夜の事です。ご主人が夜回りをしようと、男の部屋にやってきました。少しお話をして、さぁ!出かけようとした矢先の事です。庭の方からバシャン!と音がしました。そっと小窓を少し開けると、月夜の下、猫が池の鯉を取って食べているではありませんか。主人は急いで部屋の槍を取って飛び出し、猫に向って槍を突き立てました。猫は身軽に体をかわしましたが、槍は猫の右手を切りつけていました。驚いた猫は、庭から外へ逃げ出して行きました。「もう、これで帰っては来ないでしょう」とご主人は言いました。