ボク、オーストラリアからお土産としてやってきました
そのボクを使ってお姉さんが撮影会をしようと思い立ちました。
お姉さんは、ブログに載せる写真が欲しかったらしく「ちょうどいいんじゃないー?」
って軽い気持ちで始めたわりには、意外とうるさいです。
撮影と言っても携帯電話のカメラで撮るので、ズームもライトも使えない。太陽が出ている間、勝負です。「急ぎましょう」さっさこ準備は進んでいきます。
「あー、もっと笑って」
笑う、ですか?
「ほら、オーストラリアの太陽を思わせるような・・・」
オーストラリアの太陽ですか?
ボクは記憶を呼び起こそうと頑張ります。空

、太陽

、海・・・

。ボクの頭の中におぼろげながら故郷の景色が浮んでは消えていきます。
ふと頬を伝うものがあります。
「あれ、何で泣いてるの?」
泣くつもりなんてないのに。
「いやだー。ホームシック?」
お姉さんはボクの顔を覗きこんでいます。ボクは恥ずかしくなりました。
もうボクは日本へ来たんです。頑張らないといけないんです。
ボクは笑いました。
「それって爆笑でしょう?」
・・・そうか。
「でもいいよ、それくらいが君っぽい」
けれど言われた次の瞬間ボクの目から大粒の涙がこぼれました。
しばし撮影は中断です。
いい人に買われるといいね。
また、頭の中に故郷の風景が浮びました。
ボクがまだお店にいた時、店番をしていたお姉さんはよくボク達にそう言っていました。
その3日後、ボクを可愛いと手に取ってくれた人がいました。花嫁

になったばかりの人でした。
いろんなことを考えていたら、今、ボク、どんな顔をしているのでしょう?もう判らなくなりました。
お姉さんは1人でよく喋りカシャカシャとボクを撮っていましたが、
「あ、紫外線が」
とひと言呟いて、あっけなく撮影は終わりました。
太陽の日差しの強い所にいつまでもいると紫外線でシミができると心配したようです。
結構適当な人だなぁと・・・と思いました。
そんなお姉さんはホイップクリームと薔薇が好きらしいです。それがあれば機嫌がいいらしいのです。
今度姉さんにホイップクリームか薔薇を買ってあげたいな。