明治時代の技術では、現在のような透明で可視性の優れたガラスは存在せず、どれもガラス窓の向こうは歪んだ空間となっている。これは内から眺める景色と外より室内を見る双方に共通したことだが、特に内から眺める分厚いガラスレンズの世界を見ていると、歪んだ空間がこの世のものとは思えず、寧ろこちら側の世界の澱みに引き込まれる不思議な感覚になってきます。
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カメラでいうと、写りすぎるデジカメよりも、収差が残った古いレンズがかわいいという気分ですね。
古い写真はそれだけで人を引きつけます。「三笠ホテルの晩餐」の近衛文麿も有島武郎も後年の自分の運命を知らないがごとくです。
夫人たちが美人ぞろいなのにびっくりします。白とびしている手元の料理や酒瓶がもっと見たかったですね。
有島、里見兄弟の妹は三笠ホテル創始者の山本直義の妻ですのでこの写真はごく身内の晩餐でもあったようです。若き日の華族、近衛文麿の写真も珍しいのですが、細川元総理の母方の祖父になるそうですね。有島武郎はこの写真の後数年のうちに自殺しますが、毛利夫人の横に写る姿も心なしか、繊細な面持ちです。三笠ホテルのいたるところに氏の意匠によるものがあり、それが少しばかり不気味となっています。