福島第一原発から目が離せない。
アメリカでも福島第一原発から飛散してきたと思われるキセノン−133が検出された。
無視できる放射線量なのが幸いだ。
ただ放射線の測定値が正直に報道されてないのが不気味だ。
例えば、今回の事故は多くの放射性物質を気体の形で大気中に放出している。
上空に吹き上げる量が地上に向けて放射される量よりも多いはずだ。
にもかかわらず、公表されるのは地上の測定値のみ。
実際、4号炉上空の放射線量はやや離れた地点でも毎時300ミリシーベルトに達するいう情報が一旦発表された。
ただ、正確な地点が不明でその後の観測値も公表されていない。
アメリカの被曝基準は日本より厳しく、放射線取り扱い従事者の年間許容線量は50ミリシーベルトまでだ。
日本は100ミリシーベルトだったものを250ミリシーベルトまで基準をゆるめた。
これらの数字と比べるとかなり大量の放射線量が放出されているのが分かる。
少なくとも、敷地内では冷却装置の復旧作業にとって足かせとなる放射線レベルだろう。
上空に放出される放射性物質の弊害のひとつは汚染範囲が広いことだ。
実際、農作物や牛乳から放射性物質が検出されている。
チェルノブイリでは生物学的濃縮によって放射性物質を多く含む牛乳を摂取することによって健康被害が大きくなったことが知られている。
さらに風評被害も心配だ。
今回の対処には多くの疑問がある。
- 1週間経って初めて各国からの技術援助を受け入れるというのは遅すぎる。
事故直後のアメリカからの援助申し出を断っておきながら、「そのような事実を把握していません」と平然と答える政府は信用できない。 - 現在現場で戦っている人の健康被害は必至だ。
彼らに健康被害に対する正確な情報が伝えられていないとすると、人道的観点から問題がある。
少なくとも彼らには知る権利がある。 - 第一原発は第二原発と違い安全性に問題のある原発だ。
冷却装置がストップした段階で廃炉を当然視野に入れるて対処を進めるべきだった。
アメリカからの技術・物資援助は廃炉を前提としているので受け入れられないとした政府の立場は間違っている。
Mark 1 原子炉について無知なのは、明らかな勉強不足による。 - 情報管理はパニックを防ぐためという大義名分かもしれないが、情報はきちんと開示するべきだ。
「観測点の一つで線量の増加が認められたが...」は何も伝えていない。
どの地点でどういう数字が出たか地図と表で示して欲しい。 - マスメディア側の勉強不足も否めない。
的外れな質問をやめて、本質に切り込める人材はいないのだろうか。
正確な情報収集をすすめて、国民の知る権利を守るのがマスメディアの使命ではないのか。
今回の問題の一つに、寿命が来た40年前の原子炉を無理して使用しているという事情もある。
科学技術はこの40年間に大きく進歩した。
例えば、大阪万博の目玉の一つIBM館には日本語のタイプが出来ますというコンピューターがあった。
そのための設備はビルのサイズだった。
今ならタブレットの iPad でも日本語文書をカラーで印刷出来る。
70年代の車と最新モデルの車をを比べてもその違いがよく分かる
もっと積極的に新規原発を推進して古い原子炉を早期に停止させるべきではないか。
原子力発電は資源小国の資本では生命線にもかかわらず「原子炉は悪だ」、という建前が存在する日本社会の歪みが露出した。
福島第一原発と第二原発は微妙に立地条件が違うので正確な比較ではないが、片や大事故でもう一方は無事という現実を前にすると原子炉の型の違いも要因の一つかと思わざるを得ない。
今後、原子力発電政策を転換するなら、ますます状況は厳しくなる。
古い原子炉の退役が遅れるからだ。
かといって20世紀以前の生活様式に戻るというのは現実的でない。
現在首都圏では電力不足からくる不便を余儀なくされている。
日本の製造業に対する信用も揺らいだ。
例えば、部品調達が出来なくなったGMは工場の一時閉鎖に追い込まれた。
安全のために取引先の多様化(日本以外からの調達)を進めてくる可能性がある。
これを機会に日本のエネルギー事情を真剣にそして本音で議論するべきだ。
心臓移植の二の舞になって割を食らうのは国民だからだ。
最後に Fukushina 50 に深く感謝すると共に、彼らの無事を願う。