第8話 126歯+音叉発振でゆこう
この物語も8回を数えましたが、これから5回ほどはマークX赤道儀のモータードライブ(以下MD)のお話をさせていただきます。
マークX赤道儀は赤経、赤緯のウォームホイル共に126歯という、ちょっと特殊な数が採用されています。当時の望遠鏡では144歯という規格が多かったので、これはどうしてですかという質問が発売当時とても多かったものです。
マークXは天体写真の撮影を目的のひとつにしていたため、どうしてもMDの追尾速度は恒星時が欲しかったのです。24時間すなわち1440分の太陽時追尾の場合は144歯が望ましいのですが、恒星時は23時間56分4秒という数値です。当時パルスモーターで自由な発振周波数を設定するのが難しい時代で、1、2、5rpmといった決まった回転数をモーターに与えてやるのが、製造数量の少ない製品の場合に有利でした。126歯の場合、1rpmのモーターと組み合わせると、4枚の平ギアの組み合わせで恒星時にほぼ等しい追尾速度が得られることが分かりました。
また正確なパルスを発振するために当時も今と同じく水晶発振が一般的でしたが、この方式だと分周回路にかなり消費電力が食われてしまうことが分かりました。発振周波数の低い音叉発振器を採用することに決めました。回路はマイナス30℃までの使用を想定してICの選定をおこないました。こうして当時としてはめずらしい手のひらに載る大きさのMDコントローラーができあがったのです。
このMDで200mm望遠レンズ20分ノータッチ追尾をめざしたのです。そのためにはピリオディックモーションという、見えない敵を退治しなくてはなりません。これについては次回のこのブログでご紹介します。(suzu)
画像:発売当初のマークX用MD。手のひらに乗る大きさが売りだった。