昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

修理依頼品トラブルについて

2023-04-03 13:53:41 | 望遠鏡・双眼鏡

最近ですが、依頼される修理品について、各所の不具合・欠品がある機材が増えています。お客様に状況をうかがってみると、ネットオークション・フリーマーケットで入手し、機材が届き確認したら欠品があったり動作しないころがわかったので何とかしてほしいという相談です。おそらく出品時の画像だけで判断して機材を入手され問題に気づいたものの、返品もなかなかできないという状況のようです。

そうした場合は弊社にご相談ください。できる限り対応させていただきまます。ただし追加料金が発生したり、状況次第ではそのままお返しする場合もございますがその点についてはご了承いただければ幸いです。

またお願いになりますが、このような出品物を検討する場合は疑問があれば出品者に質問してみましょう。回答に納得いかない場合は潔く見送る方が良いと思います。

久しぶりのブログ記事ですが、今回はぜひ注意いただければということで書かせていただきました。







天体望遠鏡博物館のはなし

2016-06-30 09:50:08 | 望遠鏡・双眼鏡



昨日ですが、日本望遠鏡工業会の関係者向けの研修会に参加してきました。

今回は3月にオープンした香川県かがわ市の天体望遠鏡博物館についてで、理事長である村山氏自ら講演をいただきました。

この施設を作った経緯や展示している大型望遠鏡の引き取りなどは同施設のホームページ等で十分語られているかと思うので、今回は運営についてスポットを当てることにしました。

同館の運営のポイントですが・・・
・正職員は置かず、ボランティアスタッフのみで構成。よって基本的に土・日のみの開館
・廃校となった小学校を利用し、過疎化しつつある地域の活性も考慮

こう見ると博物館を呼称するからには、機材の蒐集・調査をする学芸員や来館者対応をするにはボランティアを束ね、接客等を指導をする職員がどしても必要ではないかと思っていたのですが、村山氏の考えは経営リスクを考慮して現在のスタイルに決めたとのことです。

運営コストを最低限にして、経済状況や大家である自治体の方針が変わるなどして、状況が悪くなっても施設維持を優先できるようにするということでしょうか。これは80年代~90年代にかけて全国に文教施設・公開天文施設が多く作られながらその後は運営が厳しいという背景を考慮していると思いました。

また、現在は公共施設運営も民間業者に委託するようになっており、評価の指標として入館者数や運営コスト削減の実績を求める傾向が強く、その尺度のみで考えてし待った場合、天体望遠鏡だけをテーマにした同館の場合は最初から成り立たないのは明白でしょう。その分同館のエリアを核にした地域のコミュニティづくりや望遠鏡を活用した地道な活動を長期にわたって続けていくことが大事かと思いました。

何にせよ、まだ始まったばかりですが、同館が新しい施設運営の好事例となり、他の施設にも影響を与えるようになればと思い陰ながら応援させていただこうと思います。(kon)

関連記事 天体望遠鏡博物館オープン
http://blog.goo.ne.jp/gototelesco/e/a21a0cef1a0f426a46b30296ab4654fa

天体望遠鏡博物館HP
http://www.telescope-museum.com/


温故知新(50年以上前の15㎝屈折赤道儀)

2016-06-08 14:23:34 | 望遠鏡・双眼鏡

現在、南の空には木星・火星・土星と3惑星がそろい踏みですが、関東地方も梅雨入りしてしまいました。火星は接近中だけに、この時期にかかってしまうのは残念ですが梅雨明けまで我慢するしかなさそうです。

さて、先週ですが、都内の高校に用事があり出かけていました。そこには設置されてから50年以上になる五藤光学研究所15㎝屈折赤道儀が設置されています。この日は天候に恵まれていたことと、高校の天文クラブが一晩合宿するということもあり、夜まで残ってこの望遠鏡で実際に惑星を見る機会に恵まれました。

何分古い機材なので、対物レンズはコーティングもなく、口径比1:15のアクロマートレンズと今となっては平凡なスペックです。最近は大口径屈折もアポクロマートレンズが普及しているので、性能を比べてしまうのもいささか無理があるでしょう。

最初は薄暮中ですが木星を見ることにしました。アイピースはLV12mm(187倍)だけ使っています。シーイングも良かったこともありましたが、とても良く見えていたのです。アクロマートなので当然色収差が・・・と思っていたのですが、若干は認められるものの、最近は長焦点と言われるF8クラスのアクロマートレンズようにシャープでも、青~紫色が拡散することでカラーバランスが変わってしまうということもありません。

日が暮れるにつれ、ちょうど大赤斑が出てきただけでなく、衛星ガニメデが表面を通過するようになりました。大赤斑のオレンジ色っぽい色調や縞模様のディテールも口径相応に確認でき、またガニメデも影とは違ってグレーぽい色味で確認できました。

それから高度は低いものの、火星に向けてみました。木星に比べシーイングの影響がありましたが、それでも正面に黒々と大シルチス、ヘラスの白雲、北極冠と火星らしい光景が見えています。大気分散で周囲に赤・青のにじみが出るものの、色収差は木星同様目立ちません。

今回のクラブ合宿は年に何回か実施されるものの、天候になかなか恵まれず15㎝屈折赤道儀でじっくり見るチャンスはなかったとのことで、生徒・先生に大好評でした。特に木星の大赤斑が自転によって位置が変わっていく様子をちょうど観測できたというのは学校内の天文活動ではなかなかないと思います。

筆者としても、意外に思うかも知れませんが、15㎝屈折赤道儀で夜に天体をじっくり見るという機会はなかなかなかったので、タイトル通り「温故知新」の経験となりました。

また、生徒・先生のみなさんにもこの望遠鏡が古いながらもしっかり天体を見ることができるということを知っていただけたのではないでしょうか。これを機にこの望遠鏡を末永く活用していただくことを願ってやみません。(kon)


天体望遠鏡博物館オープン

2016-03-15 09:11:56 | 望遠鏡・双眼鏡







3月12日の土曜日、香川県さぬき市の天体望遠鏡博物館がオープンしました。当日はオープン式典があり、こちらからは2名が出席しました。(残念ながら筆者は留守番でした。)

光学機器の展示に関してはこれまで国立科学博物館・国立天文台・日本カメラ博物館・ニコンミュージアム等がありますが、天体望遠鏡を専門としたところは同館が世界でも初めてになるかと思います。

収蔵・展示品は大小入れて200台と言われていますが、五藤光学研究所製について紹介すると15㎝屈折赤道儀と香川県の五色台少年自然の家(現:香川県立五色台少年自然センター)の25㎝屈折赤道儀が展示されています。25㎝屈折赤道儀は大型のスライディングルーフに格納され、夜間は観測ができるよう整備されています。

suzuによると、この望遠鏡の各種検査と現場で極軸調整作業をやったことがあり、この望遠鏡と45年ぶりの再会を果たすこととなり感慨深かったとのことです。

施設の方も廃校となった小学校を改修して利用、また、専門職員をおかずボランティアで運営するというスタイルとなっており、これまでの博物館施設とは趣が異なっています。いよいよ始まったというところですが、天文分野は天体望遠鏡が持つ役割は不可欠なものとなっていますので、今後の発展と活躍を期待したいと思っています。(kon)

天体望遠鏡博物館
http://www.telescope-museum.com/


眼視用長焦点屈折について

2015-06-17 09:47:08 | 望遠鏡・双眼鏡

先日、屈折望遠鏡GTL125/1200APO開発についてホームページで発表をしたところ、GTM100/1000APO同様多くの問い合わせをいただきました。弊社の屈折望遠鏡は眼視用長焦点というコンセプトで出しているのですが、少ないながらも要望があったことと、市場で主流となっているフォトビジュアルタイプで競合しても難しいということが理由なのですが、筆者個人としても眼視用長焦点を再び出してみたいという気持ちがありました。

とはいえ、昨今の縮小した望遠鏡市場では眼視用長焦点屈折のニーズはさらに限られ、GTM100/1000APOも当初はなかなか売れないのではないかという懸念もあったくらいです。ところが、ふたを開けてみるとGTM100/1000APOは抽選となり、多くの希望者には選外になったという連絡をせざるをえない結果となりました。

五藤ブランドという要因があるにせよ、あえて眼視用を売りした望遠鏡がここまで反響があるとは思いもしなかったのですが、根強いニーズが今もあることを確認できたのは収穫でした。続いてGTL125/1200APOをやることにしたのもその結果があってと思います。

そのような中、StarCruise842の販売をいただいているスコープタウン様でも何と6㎝ F20という超長焦点屈折が発表されました。1960~80年代に同じスペックの鏡筒がありましたがまさか現在によみがえるとは思いませんでした。

NAGAMITSU-60MAXI
http://www.scopetown.co.jp/SHOP/HSDX6120.html

口径は6㎝なので、ベストを尽くしても口径以上のことはできないと思いますが、ここで思い出したのは昨年ブログにも書いた鈴木壽壽子さんの「星のふるさと」でしょうか。そのことを思うと、この望遠鏡は使い続けることで観測者やファンを育ててくれるような望遠鏡になるかも知れません。

いずれにしても眼視用長焦点屈折が静かに注目されているという現象は興味深いと感じています。
(kon)