昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

東亜天文学会 天界6月号で天体スペクトル観測キットの記事

2021-06-10 20:06:54 | 分光観測





東亜天文学会の機関誌 天界の6月号ですが、天体スペクトル解析ソフトRSpecで解析したこと座のベガのスペクトルが表紙を飾っています。
さっそく紙面を見ていくと、モノクロ2ページで鳥取県 足利裕人様の「入門用分光観測キット」の記事が掲載されていました。

足利様は昨年天体スペクトル観測キットを購入して以来、精力的にスペクトル観測に取り組んおり、その成果と観測キットを天界で発表されました。限られたページ数の中で、観測キットの紹介から実際のスペクトル撮影・解析について簡潔にまとめられています。

この記事は反響があり、記事を見たというメールをいただいたり、この記事がきっかけで天体スペクトル観測キットを購入した方もいらっしゃいました。東亜天文学会は天体観測にウエイトを置いていることもあり、そうした点からも天体スペクトル観測キットが注目されたのかも知れません。

改めて記事を書かれた足利様にお礼を申し上げるとともに、今後の観測成果も期待したい思っています。


ネオワイズ彗星のスペクトルなど観測事例紹介

2020-07-30 10:22:30 | 分光観測

石川県柳田星の観察館満天星 学芸員の田口様より、天体スペクトル観測キットを使ってこと座のベガとネオワイズ彗星のスペクトル観測できたと報告をいただきました。特にネオワイズ彗星のスペクトルは貴重なのでブログ掲載を相談ところ了承いただきましたので紹介させていただきます。

デジタル一眼レフの標準ズームレンズに回折格子STARANALYSER100を取り付け、固定撮影をしています。彗星核は日周運動で少し流れていますが、むしろスペクトルに幅が出て、彗星の輝線スペクトルが良くわかるようになりました。同条件で撮影したベガの水素Hβ線の吸収スペクトルの位置をまずRSpecで測定し、ネオワイズ彗星のスペクトルを解析すると2つの炭素原子が結合したC2と1個の窒素原子に水素原子が2個結合したNH2分子の輝線であることがわかります。

ネオワイズ彗星くらいの規模になると天体望遠鏡を使わなくても十分に彗星のスペクトル観測ができる良い事例になりました。

また同施設ではスペクトル観測のワークショップ活動もしていて、参加者に観測体験をしていただいているとのことです。天体の光を虹色に分けることで宇宙のいろいろなことがわかることを知っていただけたのではないかと思います。

最後に観測データを提供いただいた石川県柳田星の観察館満天星 田口様に改めてお礼申し上げます。

石川県柳田星の観察館満天星
http://mantenboshi.jp/

天体スペクトル観測キットについて
http://gototelesco.co.jp/spectroscopy_kit.html


天体スペクトル観測キットによるクエーサーのスペクトル

2019-05-14 09:37:26 | 分光観測

天体スペクトル観測キットをお使いいただいている岡山県の池田様よりおとめ座のクエーサー3C273のスペクトルを観測・解析し赤方偏移を確かめることができたとメールをいただきました。

池田様のブログによりますと、20㎝ニュートン式反射望遠鏡に天体撮影用CMOSカメラを使って3C273のスペクトルを撮影し、水素Hα線・Hβ線の輝線スペクトルが赤方偏移によって長波長側にずれていることを確認できたとのこと。波長のズレが解析できるとそこからクエーサーの後退速度と距離を求めることができるので自身の観測で宇宙の広がりを感じていただいけたのではないかと思います。

ブログは池田様の了解をいただきましたので下記リンク先をぜひご覧ください。

池田様のブログ「月夜見命」
http://tsukuyominomikoto.seesaa.net/

観測記事「令和の始まりに広がる宇宙を想像してみる」
http://tsukuyominomikoto.seesaa.net/article/465639972.html

情報を提供いただいた池田様にはあらためてお礼申し上げます。(kon)

 


天体スペクトル観測キットの観測事例を提供いただきました

2018-12-18 10:17:46 | 分光観測

弊社で販売している天体スペクトル観測キットをお使いの小澤様から観測作例をいただきました。ご本人から許諾もいただいたので掲載いたします。使っている望遠鏡は25㎝ F4.8のニュートン反射で、ZWO社のカラーCMOSカメラで撮影したとのことです。

最初はカシオペア座γ星です。「M」の配列で真ん中にある星です。この星をスペクトルを観察すると1か所明るいところがあります。これは太陽のプロミネンスや散光星雲でおなじみの水素Hα線(波長6562.8Å)が輝線スペクトルとして見えています。下のスペクトル画像でも明瞭に確認できます。(各画像はサムネイルなのでクリックして拡大してください。)



これを解析ソフトRSpec(日本語版)で解析すると下のようなグラフになります。グラフにするとHα線の部分がはっきりわかります。

更に、話題のウィルタネン彗星のスペクトルにも挑戦したとのこと。彗星は淡いため25枚コンポジット処理をしています。

これもRSpec(日本語版)で解析すると下のようなグラフになります。
太陽光を反射しているため連続スペクトルとして表れています。彗星の状態によってはC2分子等の輝線スペクトルが観測できる場合がありますが、今回の作例は確認できていません。

今回観測データを提供いただいた小澤様にはお礼申し上げます。
天体スペクトル観測キットのユーザー様でスペクトルだけでも結構ですのでこんなのが撮影できたとかございましたらぜひ拝見させてください。またお許しいただければブログで作例を引き続き公開させていただければと思います。(kon)

 


天体スペクトル観測入門キット販売について

2018-05-28 10:37:13 | 分光観測

前回紹介した天体スペクトル(分光)観測入門キットについて、おかげさまで最初のロットが完売しました。購入していただいたみなさまにはお礼と今後の活用を期待しています。なお、次のロット分はオーダー中なので少しお時間をいただければ幸いです。

今日は、なぜこの製品を出してみようかということについて述べてみたいと思います。

筆者が天体スペクトルを観測するようになったのは割と最近のほうで、それまでは本格的な分光器と学術用の解析ソフトが必要と思っていたところ、2012年スカイ&テレスコープ誌で分光観測入門記事を見つけました。英語なので大筋を読む感じでしたが、簡易な機材と方法ながらいろいろな天体スペクトルから果てはクエーサーの赤方偏移から距離を求めるなど、宇宙の図鑑で書かれていた内容のかなりのところが自分が持っている機材を使って確かめられることに興味を覚えさっそくやってみることにしました。実はその記事を書いていたのが解析ソフトの作者でもあるTom Fieldさんで、彼は天体スペクトル観測の普及に努めており、RSpecは入門向けのスペクトル解析ソフトがない中で貴重な存在でした。

観測を始めてみた最初の頃はすでに分かっていることを追認するということでしたが、こうした観測プロセスを得て現在の天文学が成り立っているわけですからその体験を自身の観測でできるだけでも感動したものです。他にもいるか座新星、アイソン彗星、系外銀河の超新星といった突発的な天文現象においても威力を発揮しスペクトル観測の魅力にはまったわけです。そうした中で新たな製品の企画をしているときにこのようなツールを扱ってみたら面白そうと考えてみました。しかし現在のアマチュア向け天文市場は撮影が中心で正直ヒットするかと言われれば迷うところで、さりとて他社と同じことをしてもどうなのだろうと考えた上で販売に踏み切りました。これはRSpecが日本語対応にできたことが大きいと思います。あと売りっぱなしにもできないと思ったので半ば独学になりましたが「はじめての分光観測」というガイドも作り付属させましたので少なくとも筆者がこれまでやってきたくらいの観測はなんとかやっていただけるのではと思います。

本製品は天文アマチュアの観測活動だけでなく、天文施設を持つ科学館や博物館でのワークショップや中学・高校等の天文教育活動にもお勧めしたいという狙いもございますのでご用命お待ちしています。

あらためてですが本製品が、みなさまの宇宙への興味と探究、そして感動の一助となることを願ってやみません。(kon)

製品紹介は下記にアクセスしてください。
http://gototelesco.co.jp/spectroscopy_kit.html