昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

火星接近へ

2016-05-30 10:55:29 | 12.5cm屈折望遠鏡



明日、5月31日は火星が接近する日ですが、今週前半は東京では天候に恵まれない感じです。
なので、少し遡りますが28日(土)にGTL125/1200APOで火星を観測した様子を紹介したいと思います。

この日は南中近くになるとちょうど火星の名所である大シルチス・サバ人の湾・子午線湾が見えています。低空なのでシーイングの影響を受けてしまうためXO5mm(240倍)で見ると、それなりに揺らいではいますがこれまでよりは良好で、火星面の模様がはっきり確認できます。この点は副鏡による中央遮蔽がなく、コントラストが高いアポクロマート屈折は威力を発揮しているのではないでしょうか。

しかし、見え方については天文ソフト等で確認し、自身の経験や望遠鏡の性能もあって模様が確認できると感じており、小望遠鏡と経験が少ない人が火星を見た場合、言われると何となく模様があるような気がする程度になってしまい土星のようなインパクトを感じにくいかも知れません。それだけに観測することに経験を必要とする天体ですが、そのハードルを乗り越えれば、模様だけでなく、極冠や白い雲、砂嵐などダイナミックな様子を楽しむことができるかと思います。火星は観測者を鍛えてくれる天体なのかも知れません。

それを実証されたのが、以前ブログで紹介した鈴木壽壽子さんの著書「星のふるさと」でしょうか。氏の観測は口径6㎝ながら表面の様子をしっかりとらえているだけでなく、その日の情景にも触れたり、地球にも思いを馳せながら火星を見ていることでしょうか。筆者は氏には到底及びませんがそのような視点で火星と接していければ良いなと考えています。(kon)

惑星を撮影した画像は下記のギャラリーに掲載中です。
http://gototelesco.co.jp/gallery3_planet.html


GTL125/1200APOレビュー(3惑星を中心に・・・・)

2016-05-24 13:22:15 | 12.5cm屈折望遠鏡



GW中はあまり天候が良くなく、GTL125/1200APOを使うチャンスは限られていました。しかし、ここに来て天候が良い日が続いたので夕方の木星、夜半には接近中の火星、さらに土星を観測・撮影をしてみました。

5月14日(土)・15日(日)
この日は山梨県内でおこなわれた望遠鏡愛好者のイベントにGTL125/1200APOを持ち込みました。筆者はこの仕事に関わる以前から何回か参加していたのですが、天候に恵まれず実際の天体を見る機会はほとんどありませんでした。今回も予報では曇りがちでダメかなと思っていたところ、時折雲が通過しましたが、おおむね晴天で好シーイングにも恵まれたので明け方3時くらいまで月・木星・火星・土星などを見ていました。木星はちょうど大赤斑が見えてきたので、そのオレンジ色の濃さと縞模様のディテールを、火星は模様と周辺に出ている白い雲、土星はカッシーニのすきまの見え方を参加された方にいろいろと評価してもらいました。ちなみに持ち込まれた国内外の一流機との見比べとなったため戦々恐々ではありましたが2枚玉長焦点アポクロマート機としての性能は評価いただけたようで内心ホッとしました。

5月21日(土)
金曜は出かけていたため、木星は間に合わず、夜半の火星と土星を見てみました。この日は18日(水)よりもシーイングが良かったのでXO5mm(240倍)Or6mm(200倍)Or7mm(170倍)で見てみました。火星は気流で常に揺らいではいますが、オーロラ湾・アギダリアの海といった主要な地形はしっかり確認できました。また土星も本体の縞模様とリング内のカッシーニのすきまはしっかり見えるのでずっと見ていたいなという印象です。

5月22日(日)
この日はまず木星からスタートしました。視直径は既に40秒を切っていて、シーズンも終盤かも知れませんが、シーイングは良好なのとちょうど大赤斑が出てくるところから見ることができました。XO5mm(240倍)Or6mm(200倍)Or7mm(170倍)を使ってあらためて見ると大赤斑の色(オレンジ色系)が濃いこと。2つに分かれたSEBよりも濃い印象で、他にもSEBやNEBのディテールとEZも薄暗い斑がチラチラ見えるという感じでした。夜半に入るとうす雲の影響をうけましたので火星のみに絞って見てみると、子午線湾が沈み、オーロラ湾とアギダリアの海が大気に揺さぶられながらも濃く見えています。よくよく思うと最初に見はじめたころよりも視直径はあきらかに大きくなっていることがわかります。

5月23日(月)
天気予報では明日から崩れるというので、一旦見納めになると思い、木星からスタートしました。昨日同様シーイングが良く、表面の様子をしっかり見ることができます。この日は表面を黒い点が横切ったので最初はガリレオ衛星の影と思いましたが、あとで確認するとカリストそのものが表面を通過していました。あと火星は昨日同様なのですが、22時くらいから見はじめたおかげで子午線湾は見やすかったです。ただ低空故に木星のようにはびしっと安定しないのが悩みどころです。最接近まで1週間ほどなので火星は要注目ですね。


惑星を撮影した画像は下記のギャラリーの方をご覧ください。

http://gototelesco.co.jp/gallery3_planet.html


GTL125/1200APOレビュー(4月30日 木星の大赤斑を見る)

2016-05-09 06:17:50 | 12.5cm屈折望遠鏡



今年のGWは長めということもあり、この間にGTL125/1200APOで木星・接近中の火星・土星を存分に観測してみようと思ったのですが、昼間は晴れていても夜になると曇ってきたり、やたら風が強かったり、あげくにシーイングが悪かったりと悪条件が続き、結局のところ2晩くらいしか使うことができませんでした。関東地方の方は筆者と同じように少々残念な思いだったことでしょう。

そのような状況ではありますが、木星についてはちょうど大赤斑が見えるところで観測ができました。4月30日の夜になりますが、この日はシーイングも比較的良好で、XO5mm(240倍)Or6mm(200倍)Or7mm(170倍)を使って見た感じとしては大赤斑のオレンジ色っぽさが目立ち、2本の縞(SEB:南赤道縞とNEB:北赤道縞)と色彩の差が良く分かりました。またSEBが上下に分かれているところやNEBの濃淡もシーイングの良さもあって前回より明瞭に見ることができたので十分楽しめたのではないかと思います。しかし、大赤斑自体は縮小が進んできた感があり、この後どこまで見ることができるのか気になるところではあります。

眼視で観測した後、いつも通り2.2倍バロー+延長筒+PCカメラで動画撮影を行い、その後画像処理をおこないました。GTL125/1200APOは眼視を意識した光学設計をしていますが、かなりのディテールが記録できるので撮影用途としても十分通用するパフォーマンスがあると自負しています。

結局のところ火星・土星までは観測ができず持ち越しになってしまいましたが、そのレビューは引き続きブログで書きたいと思いますのでご期待いただければ幸いです。(kon)

木星の画像について大きいサイズは弊社ホームページのギャラリーで公開しています。
http://gototelesco.co.jp/gallery3_planet.html