昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

2013年を振り返り、新しい年へ

2013-12-27 10:35:17 | 会社情報

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2012年9月に誕生した五藤テレスコープ株式会社は、この年末で1年3か月を迎えました。

2013年の1年間は公開天文台とアマチュア用天体観測機器の新製品ラインナップを目標にしました。前者はおかげさまで製品群がそろい、6月の日本公開天文台協会(JAPOS)での発表をおこうことができましたが、アマチュア用のものはわずかに双眼鏡StarCruise842を販売にこぎつけることができたのみに終わりました。しかしこの双眼鏡を発売してみて、アマチュア天文家のみなさまがいかに広角で性能の良い双眼鏡を求めていらっしゃるかが、本当に良く分かりました。

この1年間、開発をおこなった新製品が試作や設計段階に入っております。2014年はこれらをアマチュアのみなさま方にご覧いただき、ご評価をいただきたいと考えております。

2013年は彗星の年と言われていました。アイソン彗星太陽接近の11月27日からはSOHOのC2/C3カメラのサイトにくぎ付けでした。写真はsuzu自宅屋上のC11望遠鏡にチムニーを取り付けて、太陽に接近したマイナス等級の彗星頭部を狙うつもりだったのです。会社は29日を公休としました。でもまさか消滅してしまうなんて…… 本当は12月中に彗星の講演会、観測会が目白押しだったのですが、それらはすべてキャンセル。静かな年の瀬を迎えることになりました。ヘール・ボップ彗星から16年、そろそろ大彗星が現れてもいいですよね。
2014年もどうぞよろしくお願いいたします。(suzu)

写真:チムニー望遠鏡


星夜の逸品(望遠鏡最初の付属品 ~世界的発明と称された『太陽投映機』~)

2013-12-19 11:09:50 | うんちく・小ネタ

GOTO投映応援サイトドームなび内のコラム「星夜の逸品」ですが、昨日から「望遠鏡最初の付属品 ~世界的発明と称された『太陽投映機』~」の連載が始まりました。タイトルは長いですが、創業者 五藤齊三が考案したユニークな太陽観測機器の話です。(kon)

GOTO投映応援サイト ドームなび
※コラムは会員登録なしで見ることができます。
http://www.domenavi.com/


マークX物語(10)

2013-12-12 16:41:49 | マークX物語

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第10話  手動式MDとなった減速微動装置

マークXシステムの発売当初よりある駆動用付属品として、減速微動装置という製品がありました。これは超焦点の写真レンズや望遠鏡で天体写真を撮影する場合に、赤経はモータードライブ(MD)のコントロールボタンで微妙な追尾が可能ですが、赤緯方向はウォームを手で回すことになるので微妙な動きが出しづらく、このためにウォームの回転をおよそ1/10に減速する付属品が必要となったのです。

実はこの装置、MDの減速ギヤーをそのまま使っているのです。物語第8話でも書いた通り、当時のパルスモーターは1, 2, 5rpmといった決まった回転数のものが入手可能なため、MDのモーターには1rpmが使われていました。このモーターをウォーム軸に連結するために使われた4枚の歯車が、そのまま減速微動装置にも使われました。減速比はおよそ1/11.4になり126歯のウォームホイルに伝えられます。

すなわちこの装置はMDのモーターを取り外し、それにつまみを付けたものということになります。すると……、そうです。このつまみを1分間1回転すればMDの代わりになることに気づきます。つまみには5秒おきに12等分目盛が入っていて、アナログ時計の秒針を見ながらつまみを回転させれば、恒星時追尾が手動でできます。

物が豊かな現在の天文屋さんには考えられないことですが、高価なMDが買えなくてこの減速微動装置をMDとして使っておられた往年の天文屋さんも多いはず。本当にご苦労をかけてしまいました。反省!(suzu)

画像上:MXカタログに表れた減速微動装置
画像下:減速微動装置とアナログ時計


超新星 SN2013gv

2013-12-09 17:47:25 | 天体観測

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五藤光学研究所 嶋 邦博さんがおひつじ座の銀河IC18902個目の超新星を発見しました。発見は、125日未明に、五藤光学研究所 八ヶ岳観測所の45cmカセグレン式望遠鏡に0.33倍レデューサーを装着、冷却CCDを使って44000万光年かなたの星の大爆発をとらえることに成功しました。

嶋さんのこの発見は、国内アマチュアによる確認観測及び東広島天文台口径1.5mのかなた望遠鏡による分光観測を経て、IAU(国際天文学連合)からSN2013gvの正式番号がつきました。超新星のタイプは分光観測によって白色矮星の爆発によるⅠa型と確認されています。

嶋さんの超新星発見は、昨年10月、ふたご座の銀河NGC2370に発見したことに続き2回目となりますが、前回の発見は認定されたものの、分光観測の連絡体制の事情から番号がつかずに終わってしまっていましたので、正式番号がついた初めての超新星になりました。

実は、今回の超新星発見に用いられたのは筆者の冷却CCDカメラでした。サッカーで言えば嶋さんのゴールを筆者がアシストした?ような気持ちでとても嬉しいです。しかし、このようなことに遭遇すると今度は自分も超新星捜索に挑戦したくなりますね。

嶋さん、発見おめでとうございます。(kon)

画像上:発見した時の観測画像
画像中:2日後の観測画像(超新星が少し明るくなっています)
嶋 邦博氏撮影
画像下:筆者が12月10日に撮像・処理した画像(16cmアストロカメラと冷却CCD)


今度は「水星」(水星食)

2013-12-02 19:39:10 | 天体観測

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最近は何かと「彗星」の方に注目が行ってましたが、今朝は「水星」が月に隠される水星食がありました。

しかし、新月前日のとても細い月と高度が低いという厳しい条件のため、自宅から出現だけを狙いました。6時30分ごろ、だいぶ空は明るくなってましたが、月の夜の部分から水星が出現する様子をとらえることができました。

他の惑星と違ってなかなか観測しにくい水星でしかも食というのは珍しかったと思います。ちなみに12月2日という日は奇しくも1989年の同じ日に金星食があったことを思い出した人もいるかも知れませんね。(kon)

画像:出現後の様子
7.7cm屈折望遠鏡+デジタル一眼レフカメラで撮影