筆者がこのタイトルの書籍を知るきっかけになったのは古本で手に入れた1972年6月の月刊天文ガイドでした。この号は1971年の火星大接近の読者による観測記事が特集されており、その中に火星のスケッチが何点か掲載されていました。
その中に鈴木壽壽子(すずこ)さんという四日市市の主婦が描いた火星のスケッチに何か惹かれるものを感じました。筆者も火星は結構見ていると自負していますが、スケッチを描けと言われたら自信はなく、現在主流になっているPCカメラによる動画撮影+画像処理に走ってしまうクチです。
描かれた火星の様子は南極環と主要な地形をしっかりとらえているのですが、それは口径6cm屈折望遠鏡というのだからびっくりです。このスケッチでコメントをしたた東亜天文学会の佐伯恒夫先生も鈴木さんのスケッチについてはその観察力だけでなく、当時の様子を記した文章にも賞賛を惜しみませんでした。
それ以降、鈴木壽壽子さんのことをネットで調べたところ、誠文堂新光社から「星のふるさと」という本を出版していたこと、すでにお亡くなりになっていることがわかりました。それではせめて「星のふるさと」だけでも一度読んでみたいと思ってましたがなかなか見つけることはできず年月が経ってしまいました。
ある時、筆者の脳裏に「もしかしたらあそこならあるかも・・・・」とひらめきがありました。それは下記のホームページをご覧ください。
(笹川重雄文庫について ドームなび 児玉光義 「星夜の逸品」より)
http://www.domenavi.com/ippin/2013/04_3.html
さっそく、笹川重雄文庫がある部屋に入り探し続けたところ、ついに「星のふるさと」を見つけることができました。灯台下暗しとはまさにこのことです。
許可をいただいて借りてみましたが、まさに目から鱗が落ちる思いがしました。火星のスケッチに見られる観察眼もさることながら、彼女の星に対する思いや接し方がとてもやさしく、かつ暖かかく感じられたのです。星のふるさとが出版されてから来年で40年を迎えようとしていますが、その間天体望遠鏡や観測機材など相当進歩してきた反面、星とふれあう気持ちは果たして進歩しているのだろうか。ひょっとしたらその反対になってしまっているのではないかと考えるようになりました。
また「一字の橋」というエッセイでは彼女の観測者としての道をささやかながら歩もうという決意のところなのですが、筆者としてはこの道(天文業界)を選んだからには自分なりの「一字の橋」を考えていろいろやっていけるようにと思うようになりました。
もしこの本を見つけることができましたらぜひお読みください。(kon)