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ノルマンディー(ロバート・ハーマン監督)

2008-01-03 | Weblog
ストーリー;1944年5月末。兵力の温存を考える連合国司令部は空爆によるドイツ軍への攻撃重視からヨーロッパを救済するための大陸上陸作戦へと方針を転換。フランス上陸への総責任者として英国首相チャーチルはアイゼンハワーを指名した…。
出演;トム・セレック 、アイアン・キューン 、ジェームズ・レマー
コメント;ノルマンディー上陸作戦を指揮したアイゼンハワーの意思決定と計画遂行までを描く。ノルマンディー上陸作戦の戦闘描写については「プライベート・ライアン」の冒頭のシーンが生々しいが実はこの映画には戦闘シーンはまったくでてこない。しかも19日間で撮影した割には、とてもそうとはおもえない仕上がりである。予算と時間の不足を白黒写真で補い、見事に完成した歴史小作品といったところだろうか。俳優のほとんどがニュージーランドやオーストラリアというのも、逆に新鮮味がでてきていいのかもしれない。トム・セレックがカンザスの農場出身だったアイゼンハワーの特徴をみごとに活かしている。戦争当時なのでタバコのシーンは大丈夫ではあるがアイゼンハワーはキャメルを一日に4箱吸っていたらしい。
 死体がいくつかとその間を走る犬が朝もやの海をかけぬけるシーンはなかなか見事な演出だろうと思う。
 アイゼンハワーは、当時としてはおそらく最大規模の陸・海・空のすべてを掌握する連合国軍最高司令官としてノルマンディー上陸作戦を指揮する。当時のマスコミに人気が高かったモントゴメリー将軍やパットン将軍なども姿をだすがかなり現実的な描写で英雄というものを映画に出さない姿勢が好ましい。ただしアイゼンハワーはその後大統領に就任し、反共政策を取ると同時に、フルシチョフとの首脳外交により雪解けムードを演出し、またアイゼンハワードクトリンとよばれる中東の反共軍事行動の軍隊出動権限を自らにふすなどノルマンディー上陸作戦当時にえたノウハウをその後に活用している部分がある。ドゴールがややシニカルに描かれているがノルマンディー上陸作戦当時はフランス共和国臨時政府を指揮していたのがドゴール。その後、中国との関係で米ソに並ぶ国際的地位を確立するなど功績も大きいが、第二次世界大戦当時のビシー政権との関係やユダヤ人迫害についてあまりにも消極的な姿勢が一部批判を浴びていたのも事実。この程度の描写はやむをえないだろうか。
 さてこの映画はもともとテレビ番組として作成されたものだが、映像の一部にイエローとブルーが多用されるなどそこそこに面白い演出がある。主に屋内の描写が中心だがチャーチルとアイゼンハワーのやりとりや、計画の遂行について「決めるだけならだれでもできる。小さな積み重ねと確認が難しい」というアイゼンハワーの主張を裏付けるような細かいチェックと積み重ねが続く。これが面白いかどうかは、また人によるのだろうが、当時のアナログ社会であっても秘密保持がいかに大変だったのかを知ると同時に、レクリエーションとして将校が映画をみている場面にも西欧人の一種の「知恵」のようなものを感じる。89分。

 チャーチル首相を演じたのはニュージーランドのアイアン・キューン。あまりアメリカや英国の俳優がでてこない映画だが、演技力はかなりのハイレベル。脇役から主役まで華やかさはないものの「カッチリ」した構成。史実にも準拠しており、脚本もすばらしい。どうしても歴史映画は予算が必要になるがこうした低予算でアイデア勝負の歴史映画がもっと高い評価を受けてもいいのではないか。

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