ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

頭上の敵機(ヘンリー・キング監督)

2008-01-05 | Weblog
ストーリー;1942 年英国931部隊は部下思いの大佐のもとでドイツ占領地域の白昼爆撃作戦を実施していたが成果があがらない。「運が悪い」というこの931部隊にたいして「運などは信じない」と断言し、基礎から見直す准将が931部隊の指揮をとりはじめる。デンマークなど各地の爆撃に成功しつつ、そしてまた名誉勲章受賞者をはじめとする全員の異動願いなどが出され、准将は監察官の監査などにその地位が危なくなるが…。
出演 ;グレゴリー・ペック、ディーン・ジャガー、ヒュー・マーロウ
コメント;1949 年の作品で時代設定は1942年の英国で爆撃を繰り返す米国人航空部隊。20世紀FOX録音部がアカデミー録音賞、ディーン・マーロウがアカデミー助演男優賞、主役のグレゴリー・ペックはニューヨーク批評家協会賞を受賞している。白黒の映画でいわゆる「名作」というと、とてつもなく面白いものと途中で眠たくなるものとに極端に分かれるが、この作品は出演者の99パーセントが渋めの男優ばかりで、脚本やカメラワークそのほかむちゃくちゃ面白い。当時の作品としては異例の2時間10分を超える長編だが、時間を感じさせない。作成時代が1949年ということもあり、冒頭の英国の町並みや電車の中の様子などからすでに現在ではみることのできない舞台装置や風景をみることができる。とくにおおがかりなCGはないのだが、実際に空中戦争の様子を撮影したフィルムを使用していることもあり、迫真性が増しており、「そういえば飛行機というのはこれほどまでにも滑らかに着地したり飛行したりするのだ」などと飛行機が飛ぶ姿にも感動する。どぎつい血液の氾濫などといった俗悪なシーンは一つもなく、「航空用の靴」だけで台詞がなくとも「物語」が進行していく。さらに白黒なのに英国の風景や風が画面にみえるというのもすごい。帽子が風にとばされたり、草木が風になびいたりするがこれがまた今の扇風機でおこす風とは微妙に違ったりする。映像技術と映像の美しさとはまた別個であることが確信でき、ドラマに必ずしもアクションは必要ではないことも確信させてくれる。
 役者も全員抑制の効いた美しい動作で特にグレゴリー・ペックの表情やしぐさの一つ一つが美しい。「白い恐怖」にもつながる汗をにじませる演技や椅子の上に硬直し、やがて硬直が解ける瞬間など一人の俳優が特に大げさなしぐさもなくすべてを表現できうるところに一流の所以をみる。そしてロバート・デ・ニーロやアル・パチーノといった役者がいかにハリウッドをだめにしたかもこの映画の役者の演技をみるとよくわかる。
(当時の爆撃)
 ドイツは英国を爆撃すると同時に、英国もドイツを爆撃するという空爆の応酬といった様相を第二次世界大戦はていしていた。当初はこの映画にもあるように軍事工場が攻撃のターゲットだったが、欧州は雲が低くたちこめるため爆撃目標にむかった的確な爆弾投下ができない(その様子は映画の中でもでてくる)。「白昼爆撃」というのは夜に出撃してもターゲットに狙いをつけることができないという地理的事情も大きい。この映画では1942年当時のまだ「美学」があったころだが、この後、どちらも市街地爆撃作戦に目標を転換していく。ドイツ本土への空爆をこの部隊は彼岸にしていたが、ドイツはフランスを占領していたため、市街地爆破のためにはドイツはフランスから航空機を出撃させればよいが、イギリスは本土からベルリンまで飛行しなければならない。また爆撃機の数もドイツのほうが10倍くらいあったものと推定される。なぜここでアメリカ人を描いているかというとおそらくは、ドイツによるロンドン爆撃や英国によるベルリン爆撃など倫理観が麻痺しつつあった欧州戦線でアメリカ人部隊には精密爆撃といった思想が残存しており、当時のルーズベルト大統領もその旨を表明していたためではないかと考えれる。ただしドイツの航空力は相当に高かったからアメリカのB17ややB24が爆撃される「率」も上昇し、その独特の倫理もゆらぎがみえてくる。東京大空襲などは、部隊は違っても欧州戦線での倫理のゆらぎと無関係ではないだろう。映画「パール・ハーバー」でもベン・アフレックが扮するアメリカ人飛行士は、英国から欧州へ飛び立ち、ドイツ空軍に爆撃される様子を描いている。アメリカが真珠湾攻撃で正式に世界大戦に参加するまで、アメリカ人軍人が寄与できるのはこの英国航空部隊だったということを一連の映画は語っているのかもしれない。ちなみに「パール・ハーバー」では米国航空部隊は太平洋湾沿いの軍事工場への攻撃をすることになっているが、実態はそんなものではなかった…というのは周知の事実。譲れない倫理観と語れない倫理観といったところか。ただしこのようなことが映画のよしあしに関係してくるわけでは、もちろん、ない。
(戦艦主義と航空主義)
 語りつくされているこのテーマだが、それでも制空権〔いまだとすると情報か?〕の戦略的重要性は反省してもし足らない。おそらく映画「エニグマ」から類推して、工場建設などの情報解読部隊を航空部隊が入手してターゲットをしぼるという流れだったろう。パールハーバーでは日本のゼロ式の性能が評価されたが、ナチスドイツの制空権もまた「電撃戦」とよばれるすさまじいものだった。ただし「バトルオブブリテン」には失敗するが、飛行距離が短いことなどからイギリス防空部隊に敗北。このときのイギリスの航空機が歴史に名を残すスピットファイア。ただし1935年代の航空機だったわけだが…。またUボートも(映画「Uボート」参照)、戦争初期には活躍したが、護衛空母に搭載された飛行機の対潜戦略が始まると勢いをなくす。
この後、ドイツ本土はアメリカのB17、英国のランカスターなどに重爆を受けて本土が荒廃していく。ドイツの航空機といえばメッサーシュミットだがこの映画ではあまりはっきり機体がみえない。

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