大阪ブリコラージュ展覧会が迫り来て、まだやらねばならぬ仕事が山ほどあるのに、
こういったジョーキョーの時に限って釣りに出たい気持ちが強くなるのは、どーゆーわけか、困ったもんである。
山積みの仕事に背を向けて逃げるごとく海に向かう。
イカ釣りのために10月は展覧会を避けたのだが、甘かった。
11月はじめの展覧会のために仕事をせんといかんのだ。
10月をぽっかり空けるには11月も展覧会を入れてはいけないのだった。
といっても、自転車操業の人生、そんなことでは暮らしが成り立たない。
この矛盾。ああ、一度、金持ちになってみたい・・・・。
などと思ってみても所詮、虚しい。かえって寂しさが増すではないか。とほほ。
だからそういったことは考えないことにする。
駐車場に着くと、二人の先客が帰るところだった。
彼らのクーラーボックスは満杯。
「爆釣ですか、いいね。」
「こんなに釣れたの初めてよ。重くて帰り道二回も休憩したよ。」
と満面の笑み。分かるなあ。
「このところ釣れなかったけどまた釣れはじめたな。」
「何時からやってるんですか?」
「夕方から」
「釣れるのに帰るんですか?」
「少し前からアタリがなくなったからね。」
さてと、釣り座に立ちキャストを始める。
先ずは試しのロッドで。
実は今回二本ロッドを持って行ったのだ。
前回、アクシデントがありロッドの先が折れちまった。
で、長い間使ったこともなかった予備のロッドの出番である。
もう一本は昨年、息子の青が根掛かりのまま思い切りしゃくりロッドのバッドを折ったのだが、そのロッドの竿先を残しておいた。
で、前回のバッドにその竿先を付けてみたら少し緩いがワックスを沢山付けるとなんとかうまくはまったので実際使えるかどうか試してみたかった。
試しのロッドは何の問題もなさそうだった。
キャストもシャクリも。
しかし、海は彼らの言う通り祭りの後だった。
アタリも雰囲気もない。
数投目、キャストした瞬間、変な音とショック。
ガイドに絡まったわけではないが、ラインブレイクでエギは遠くに消えちまった。
こんなことは今期初のこと、何か嫌な予感がした。
PEを組み直してリーダーを付けるのが面倒なので簡単修理ロッドの試しはそれで終え、本番の予備ロッドに替えてキャスト開始。
この予備ロッドは基本的にこれまで使って来たオリムピック、カラマレッティと同じだが、いつだったか、信じられないほど格安でネットオークションに出ていたので予備ロッドとしてゲットしていたもの。
普段やったことのない、ロッドを二本持参なんて、そのうち一本が駄目になり二本持って来て良かったという状況になるんじゃないのか、なんて嫌な予感がふと頭をよぎった。
使っていなかったせいか、ちょっと堅い感じがするが、そんなもんだろう。
南の追い風に乗ってエギは遠くに飛んで闇に消える。
波は1メートル、釣り易い状況。
カウント40~45で着底。
活性はないようだが底ベタを意識するとヒットした。
まあ釣れなくはないようだ。
今夜が今期最後の釣りになるかもしれない。
朝までのんびりやろう。
なんて考えていると根掛かった。
このポイントは深くて根掛かりしても大したことなく、
これまでエギのロストなんて殆どなかった。
この根掛かりもタカをくくって簡単に外れるだろうと思ったが
外れそうもない。がっちりと何かに食い込んでいた。
思わず、大きくしゃくってみた。
その瞬間、ガキッ!!という嫌な音。
あんららー!!!
ロッドがバッドからパキンと折れちまった。
信じられなかった。
これまで根掛かりでしゃくったことも何度もあるし、そうとう乱暴なこともしたが、ロッドがバッドから折れるなんて一度もなかったし全くの想定外だった。
根掛かったルアーを折れたまま回収しながら、そうだ前回先を折ったロッドと同じやつだから、そのバッドにこの穂先を付ければ完品がひとつできるではないか。
と思いきや、穂先もトップガイドから折れていた。
まさに予感的中なんである。
前回のアクシデントいい、続いての今回のアクシデント。
かなりの精神的ダメージではあった。
がしかし、ここで帰るわけにはいかない。
もう一本ロッドはある。間に合わせの修理ロッドではあるが。
ここでちょっくら休憩。
連合いがポットに入れてくれた熱いお茶を磯に座って流し込む。
釣りはじめにぽつぽつと降っていた雨もやんでいたが、空は厚い雲に覆われ、星1つ出てはいない。暗闇の釣りである。
誰もいない暗闇に自分だけが佇んでいる。
この感じは悪くない。
煙草に火をつける。
さて、気分を新たにイカ釣りである。
間に合わせのロッドは問題もなく機能してくれていた。
朝に近づくに従って、アタリは次第に戻りはじめたようだった。
そのうち、背後からヘッドライトが近づいて来た。
「ゴロスケさんですよね。」私を見てそう言う。
「はい、そう言う貴方は?」
「昨年、ここで会ったSですよ。」
そこで思い出した。
昨年、輪島のイカ釣りダービーの最後、若者に一位を奪われ、最終日、再逆転を狙って一キロ級を掛けたものの玉網入れに失敗、バラした直後に出会ったのがSさんで、その時の口惜しさを彼に話したのだった。
「隣でやってもいいか?」と彼。
勿論。
隣で軽くキャストするSさん。
彼がしゃくるとジージーとドラグの音がする。
緩いドラグ設定だ。
相当手慣れた釣り師である。
朝に近づくにしたがってアタリが戻りはじめていたが
それにしても彼はよくヒットさせる。
「ドラグ緩くしてあるんですね?」
「きつくすると根掛かった時、食い込みますからね。」
そういえば、私の場合、イカ釣りにしてはドラグは堅く設定している。
エギを鋭く動かすにはそれがいいと思っていたが・・・・
ロッドが折れたのもそのせいかも知れぬ。
藻に掛かれば少々のショックでも藻が受け止めるだろうが
いきなり岩などに根掛かりし、強いショックを掛けるとロッドに相当の負担がかかるだろう。
いろんな条件が偶然重なれば、バッドもいとも簡単に折れちまうのだ。
彼くらい緩くしておいたら、先ずロッドが折れるなんてあり得なかった。
それに、ドラグの堅い、緩いはエギの鋭い動きには関係ないのかもしれぬ。
ちゃんとしゃくれば、エギは鋭く動くだろうし、連続ダートも出来るだろう。
ただ、緩いとダート幅が小さいかもしれぬ。
問題はスラックを利用してカツンとカウンター気味にしゃくれるか、だ。
ダート幅の小さい方が好きな私にとってはいい方法かもしれぬ。
などと考えている間も、彼は間断なくヒットさせている。
私もまずまずのヒットが続いた。
「アタリが戻ってきましたね。」
「そのようだね。」
「サイズも上がってきました。」
「ほんとな。」
彼とのダブルヒットも度々。
時折でかいのも掛かった。
といっても22センチくらいか。
S氏のロッドは柔らかいのか、デカイのが来ると抜き上げず、丁寧にラインを持ってあげている。
「いい調子だね。」
「一ヶ月前の満月の時、こことは違うポイントでしたが、夜中やって100杯以上釣りましたよ。あの時は楽しかったなあ。」
100杯とな。私の最高はやはり満月の時、このポイントで70杯だった。
上には上がいるものだ。
彼は地元の建設会社で現場監督をしているのだという。
仕事の合間を見て釣りをしているらしい。
いや、彼の釣行ぶりを聞いていると、どうも釣りの合間に仕事をしているようだ。うっはー。
それほどの釣り好きらしい。幸せ者なのだ。
夜が空ける直前、入れ食いの活況になったが、明るくなってからパタリとアタリは止まった。
このところのいつものパターンである。
海面を見ると青物が来ていた。
あちらこちらでボゴッ、ボゴッと海面が動き補食している。
よし!!と釣りを切り替える。
前回、デカメバル用のアイスジグで一本上げたが、今回はそれを狙ってルアーを沢山もって来ていた。
しかし、青物のルアーが分からない。
これまで、あまりやったことがないのだ。
スズキ用の小さめのシンキングペンシルでやってみると時折アタックするがもうひとつ。
青物用のメタルジグをぶん投げてグングン巻き上げるが、こいつは全く反応がない。
で、前回のアイスジグでも駄目だった。
「沢山釣れたら、一本下さいね。」とS氏。
シンキングペンシルに一度ヒットしたが鋭い走りをいなしている間にバレてしまい、
そのうちアタリはなくなった。
うむ、簡単じゃないな。と一息。
ここでS氏は帰り支度。
「帰りますか?」
「今日も仕事ですから。」
彼が帰った後、ルアーの箱の隅にワインド釣法のワームとジグヘッドがあったので、そいつをぶん投げてみた。
と、ワインドの間もなく着水した瞬間、ヒットした。
バラさないように慎重に引き寄せ抜き上げる。堅いエギロッドならではの抜き上げである。
こいつはルアー丸ごと呑み込んでいた。
その直後、再びそいつをキャストすると、ワインドして来る間にワームを半分齧り取られていた。
ワームの替えを持っていなかったので最初からやり直し。
さて、どのルアーが効果的か?
ふと、箱の中に横たわっているトップウォーターが目に入った。
レッドペッパー110である。
レッドペッパーベイビーはクロダイ用に持っていて、その動きやら雰囲気やらを大いに気に入り、いつかスズキにも使ってやろうとでかいタイプ110をゲットしていたのだ。
それに、もともとこのルアーには思い入れがある。
私が釣りを始めたのは福井越前の釣り師つーさんと出会ったからだが、忘れもしない11年前、初めて一緒にスズキ釣りに出かけ、ルアーなんてオモチャみたいなもので魚が釣れるんだということを現実に見せてくれた。その時、彼は83センチのスズキを釣ったのだが、そのルアーがレッドペッパーであった。
なんだか縁を感じるルアーなんである。
そいつを付けてキャストしてみる。
でかいタイプを実践で使うのは初めてだった。
クロダイでやっていたように、小刻みなトゥッチで引いて来る。
海面をルアーがチョンチョンと動き回りながらやってくる。
弱ったイワシが逃げ惑っているような活き活きとした動きだ。
時々、ルアーを追っかけアタックして来るが空振りだ。
確かに反応はある。
しかし、ロッドの動きが大きいせいか、直ぐにラインがフックに絡まりうまくいかない。
で、そっとやってみる。
絡まないように海面をそっとただ引きしたり、チョンチョンと動かしてみたり、ともかく小さいアクションで誘うように。
すると・・・・・・突然、海面が盛り上がり、ガバッ!!と来た。
次のキャストでもヒットした。
そうか、このパターンなのだ。
入れ食いではないが、数投しているうちにアタックして来る。
トップウォータでの釣りはやはり面白くコーフンするんである。
海面のルアーの動き、それに食いつく魚の様子、みんな見えるのだ。
4匹目だったか、こいつの引きは強かった。
強めのドラグが鳴った。
イカ用のラインが切れるかとも思った。
走る走る。それをいなす、いなす。
近くまで寄せて、下の岩礁に潜らないように必死だ。
流石にこいつは抜き上げが出来ず、でかいイカ用に持って来ていた玉網を使った。
その後もレッドペッパーは調子が良かった。
8時になり、待ち合わせの時間があったので終わりにした。
結果、二本はバラしたものの、6本を上げることができた。
早朝の一盛り、独りの祭りだった。
それにしても、レッドペッパーはいいルアーだ。
(帰って気が付いたが腹のフックが一本折れていた。)
前回と似ている。
アクシデントはあったが、S氏の釣りに考えさせられたこと、それなりにイカが釣れたこと、そして最後にコーフンの青物。
やはりドラマチックではあったのだ。
悪いことあれば、いいこともある。
いいことも二度続かないが、悪いことも二度続かないのだ。
いや、ロッド折れは二度続いたぞ。
二度あることは三度ある。
というのを気をつけた方がいいか。
ところで、フクラギだと思っていたが、アップした写真を見て、金沢、福井の友人釣り師たちからコメントあり。どうやらこの魚、黄色の線と口の丸みからフクラギではなくヒラマサではないかと。
どうりで美味いと思ったのだが、それは釣り立てだからだろうと思っていた。
ヒラマサなら、一段と嬉しいが、知らずに釣ったのだから、自慢にはならんわな。
しかし、驚いたぜ。ヒラマサなんてな。
S氏がもう少しその場にいたら、ヒラマサ、持って行ってもらったのになあ。
バットから折れたロッド。穂先も。驚くほど丈夫なカーボンロッドも折れるときはいとも簡単に折れるんである。
青物(恐らくヒラマサ)釣果
こういったジョーキョーの時に限って釣りに出たい気持ちが強くなるのは、どーゆーわけか、困ったもんである。
山積みの仕事に背を向けて逃げるごとく海に向かう。
イカ釣りのために10月は展覧会を避けたのだが、甘かった。
11月はじめの展覧会のために仕事をせんといかんのだ。
10月をぽっかり空けるには11月も展覧会を入れてはいけないのだった。
といっても、自転車操業の人生、そんなことでは暮らしが成り立たない。
この矛盾。ああ、一度、金持ちになってみたい・・・・。
などと思ってみても所詮、虚しい。かえって寂しさが増すではないか。とほほ。
だからそういったことは考えないことにする。
駐車場に着くと、二人の先客が帰るところだった。
彼らのクーラーボックスは満杯。
「爆釣ですか、いいね。」
「こんなに釣れたの初めてよ。重くて帰り道二回も休憩したよ。」
と満面の笑み。分かるなあ。
「このところ釣れなかったけどまた釣れはじめたな。」
「何時からやってるんですか?」
「夕方から」
「釣れるのに帰るんですか?」
「少し前からアタリがなくなったからね。」
さてと、釣り座に立ちキャストを始める。
先ずは試しのロッドで。
実は今回二本ロッドを持って行ったのだ。
前回、アクシデントがありロッドの先が折れちまった。
で、長い間使ったこともなかった予備のロッドの出番である。
もう一本は昨年、息子の青が根掛かりのまま思い切りしゃくりロッドのバッドを折ったのだが、そのロッドの竿先を残しておいた。
で、前回のバッドにその竿先を付けてみたら少し緩いがワックスを沢山付けるとなんとかうまくはまったので実際使えるかどうか試してみたかった。
試しのロッドは何の問題もなさそうだった。
キャストもシャクリも。
しかし、海は彼らの言う通り祭りの後だった。
アタリも雰囲気もない。
数投目、キャストした瞬間、変な音とショック。
ガイドに絡まったわけではないが、ラインブレイクでエギは遠くに消えちまった。
こんなことは今期初のこと、何か嫌な予感がした。
PEを組み直してリーダーを付けるのが面倒なので簡単修理ロッドの試しはそれで終え、本番の予備ロッドに替えてキャスト開始。
この予備ロッドは基本的にこれまで使って来たオリムピック、カラマレッティと同じだが、いつだったか、信じられないほど格安でネットオークションに出ていたので予備ロッドとしてゲットしていたもの。
普段やったことのない、ロッドを二本持参なんて、そのうち一本が駄目になり二本持って来て良かったという状況になるんじゃないのか、なんて嫌な予感がふと頭をよぎった。
使っていなかったせいか、ちょっと堅い感じがするが、そんなもんだろう。
南の追い風に乗ってエギは遠くに飛んで闇に消える。
波は1メートル、釣り易い状況。
カウント40~45で着底。
活性はないようだが底ベタを意識するとヒットした。
まあ釣れなくはないようだ。
今夜が今期最後の釣りになるかもしれない。
朝までのんびりやろう。
なんて考えていると根掛かった。
このポイントは深くて根掛かりしても大したことなく、
これまでエギのロストなんて殆どなかった。
この根掛かりもタカをくくって簡単に外れるだろうと思ったが
外れそうもない。がっちりと何かに食い込んでいた。
思わず、大きくしゃくってみた。
その瞬間、ガキッ!!という嫌な音。
あんららー!!!
ロッドがバッドからパキンと折れちまった。
信じられなかった。
これまで根掛かりでしゃくったことも何度もあるし、そうとう乱暴なこともしたが、ロッドがバッドから折れるなんて一度もなかったし全くの想定外だった。
根掛かったルアーを折れたまま回収しながら、そうだ前回先を折ったロッドと同じやつだから、そのバッドにこの穂先を付ければ完品がひとつできるではないか。
と思いきや、穂先もトップガイドから折れていた。
まさに予感的中なんである。
前回のアクシデントいい、続いての今回のアクシデント。
かなりの精神的ダメージではあった。
がしかし、ここで帰るわけにはいかない。
もう一本ロッドはある。間に合わせの修理ロッドではあるが。
ここでちょっくら休憩。
連合いがポットに入れてくれた熱いお茶を磯に座って流し込む。
釣りはじめにぽつぽつと降っていた雨もやんでいたが、空は厚い雲に覆われ、星1つ出てはいない。暗闇の釣りである。
誰もいない暗闇に自分だけが佇んでいる。
この感じは悪くない。
煙草に火をつける。
さて、気分を新たにイカ釣りである。
間に合わせのロッドは問題もなく機能してくれていた。
朝に近づくに従って、アタリは次第に戻りはじめたようだった。
そのうち、背後からヘッドライトが近づいて来た。
「ゴロスケさんですよね。」私を見てそう言う。
「はい、そう言う貴方は?」
「昨年、ここで会ったSですよ。」
そこで思い出した。
昨年、輪島のイカ釣りダービーの最後、若者に一位を奪われ、最終日、再逆転を狙って一キロ級を掛けたものの玉網入れに失敗、バラした直後に出会ったのがSさんで、その時の口惜しさを彼に話したのだった。
「隣でやってもいいか?」と彼。
勿論。
隣で軽くキャストするSさん。
彼がしゃくるとジージーとドラグの音がする。
緩いドラグ設定だ。
相当手慣れた釣り師である。
朝に近づくにしたがってアタリが戻りはじめていたが
それにしても彼はよくヒットさせる。
「ドラグ緩くしてあるんですね?」
「きつくすると根掛かった時、食い込みますからね。」
そういえば、私の場合、イカ釣りにしてはドラグは堅く設定している。
エギを鋭く動かすにはそれがいいと思っていたが・・・・
ロッドが折れたのもそのせいかも知れぬ。
藻に掛かれば少々のショックでも藻が受け止めるだろうが
いきなり岩などに根掛かりし、強いショックを掛けるとロッドに相当の負担がかかるだろう。
いろんな条件が偶然重なれば、バッドもいとも簡単に折れちまうのだ。
彼くらい緩くしておいたら、先ずロッドが折れるなんてあり得なかった。
それに、ドラグの堅い、緩いはエギの鋭い動きには関係ないのかもしれぬ。
ちゃんとしゃくれば、エギは鋭く動くだろうし、連続ダートも出来るだろう。
ただ、緩いとダート幅が小さいかもしれぬ。
問題はスラックを利用してカツンとカウンター気味にしゃくれるか、だ。
ダート幅の小さい方が好きな私にとってはいい方法かもしれぬ。
などと考えている間も、彼は間断なくヒットさせている。
私もまずまずのヒットが続いた。
「アタリが戻ってきましたね。」
「そのようだね。」
「サイズも上がってきました。」
「ほんとな。」
彼とのダブルヒットも度々。
時折でかいのも掛かった。
といっても22センチくらいか。
S氏のロッドは柔らかいのか、デカイのが来ると抜き上げず、丁寧にラインを持ってあげている。
「いい調子だね。」
「一ヶ月前の満月の時、こことは違うポイントでしたが、夜中やって100杯以上釣りましたよ。あの時は楽しかったなあ。」
100杯とな。私の最高はやはり満月の時、このポイントで70杯だった。
上には上がいるものだ。
彼は地元の建設会社で現場監督をしているのだという。
仕事の合間を見て釣りをしているらしい。
いや、彼の釣行ぶりを聞いていると、どうも釣りの合間に仕事をしているようだ。うっはー。
それほどの釣り好きらしい。幸せ者なのだ。
夜が空ける直前、入れ食いの活況になったが、明るくなってからパタリとアタリは止まった。
このところのいつものパターンである。
海面を見ると青物が来ていた。
あちらこちらでボゴッ、ボゴッと海面が動き補食している。
よし!!と釣りを切り替える。
前回、デカメバル用のアイスジグで一本上げたが、今回はそれを狙ってルアーを沢山もって来ていた。
しかし、青物のルアーが分からない。
これまで、あまりやったことがないのだ。
スズキ用の小さめのシンキングペンシルでやってみると時折アタックするがもうひとつ。
青物用のメタルジグをぶん投げてグングン巻き上げるが、こいつは全く反応がない。
で、前回のアイスジグでも駄目だった。
「沢山釣れたら、一本下さいね。」とS氏。
シンキングペンシルに一度ヒットしたが鋭い走りをいなしている間にバレてしまい、
そのうちアタリはなくなった。
うむ、簡単じゃないな。と一息。
ここでS氏は帰り支度。
「帰りますか?」
「今日も仕事ですから。」
彼が帰った後、ルアーの箱の隅にワインド釣法のワームとジグヘッドがあったので、そいつをぶん投げてみた。
と、ワインドの間もなく着水した瞬間、ヒットした。
バラさないように慎重に引き寄せ抜き上げる。堅いエギロッドならではの抜き上げである。
こいつはルアー丸ごと呑み込んでいた。
その直後、再びそいつをキャストすると、ワインドして来る間にワームを半分齧り取られていた。
ワームの替えを持っていなかったので最初からやり直し。
さて、どのルアーが効果的か?
ふと、箱の中に横たわっているトップウォーターが目に入った。
レッドペッパー110である。
レッドペッパーベイビーはクロダイ用に持っていて、その動きやら雰囲気やらを大いに気に入り、いつかスズキにも使ってやろうとでかいタイプ110をゲットしていたのだ。
それに、もともとこのルアーには思い入れがある。
私が釣りを始めたのは福井越前の釣り師つーさんと出会ったからだが、忘れもしない11年前、初めて一緒にスズキ釣りに出かけ、ルアーなんてオモチャみたいなもので魚が釣れるんだということを現実に見せてくれた。その時、彼は83センチのスズキを釣ったのだが、そのルアーがレッドペッパーであった。
なんだか縁を感じるルアーなんである。
そいつを付けてキャストしてみる。
でかいタイプを実践で使うのは初めてだった。
クロダイでやっていたように、小刻みなトゥッチで引いて来る。
海面をルアーがチョンチョンと動き回りながらやってくる。
弱ったイワシが逃げ惑っているような活き活きとした動きだ。
時々、ルアーを追っかけアタックして来るが空振りだ。
確かに反応はある。
しかし、ロッドの動きが大きいせいか、直ぐにラインがフックに絡まりうまくいかない。
で、そっとやってみる。
絡まないように海面をそっとただ引きしたり、チョンチョンと動かしてみたり、ともかく小さいアクションで誘うように。
すると・・・・・・突然、海面が盛り上がり、ガバッ!!と来た。
次のキャストでもヒットした。
そうか、このパターンなのだ。
入れ食いではないが、数投しているうちにアタックして来る。
トップウォータでの釣りはやはり面白くコーフンするんである。
海面のルアーの動き、それに食いつく魚の様子、みんな見えるのだ。
4匹目だったか、こいつの引きは強かった。
強めのドラグが鳴った。
イカ用のラインが切れるかとも思った。
走る走る。それをいなす、いなす。
近くまで寄せて、下の岩礁に潜らないように必死だ。
流石にこいつは抜き上げが出来ず、でかいイカ用に持って来ていた玉網を使った。
その後もレッドペッパーは調子が良かった。
8時になり、待ち合わせの時間があったので終わりにした。
結果、二本はバラしたものの、6本を上げることができた。
早朝の一盛り、独りの祭りだった。
それにしても、レッドペッパーはいいルアーだ。
(帰って気が付いたが腹のフックが一本折れていた。)
前回と似ている。
アクシデントはあったが、S氏の釣りに考えさせられたこと、それなりにイカが釣れたこと、そして最後にコーフンの青物。
やはりドラマチックではあったのだ。
悪いことあれば、いいこともある。
いいことも二度続かないが、悪いことも二度続かないのだ。
いや、ロッド折れは二度続いたぞ。
二度あることは三度ある。
というのを気をつけた方がいいか。
ところで、フクラギだと思っていたが、アップした写真を見て、金沢、福井の友人釣り師たちからコメントあり。どうやらこの魚、黄色の線と口の丸みからフクラギではなくヒラマサではないかと。
どうりで美味いと思ったのだが、それは釣り立てだからだろうと思っていた。
ヒラマサなら、一段と嬉しいが、知らずに釣ったのだから、自慢にはならんわな。
しかし、驚いたぜ。ヒラマサなんてな。
S氏がもう少しその場にいたら、ヒラマサ、持って行ってもらったのになあ。
バットから折れたロッド。穂先も。驚くほど丈夫なカーボンロッドも折れるときはいとも簡単に折れるんである。
青物(恐らくヒラマサ)釣果