先日自衛隊の配備がやっと決まったばかりの国境の島、与那国島。この島の現状はけっして看過できるものではありませんよね。以下転載↓
◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
3月に人口減の与那国島、4月に人口増の石垣島
■■■■第309号■平成22年11月22日発行■■■◆
「日本の西端、国境最前線の与那国島(よなぐにじま)の
人口は 1,600名ほど。
平成15年には 1,800名あまりの住民がいましたが、
平成18年に 1,700名になりました。
そしていまや 1,600名ほど。
なぜこんなに急速に人口が減るのか、知っていますか?」
11月19日、ある国際研究所のひとの話を聞いた。
実名を出しても問題ないとは思うが、かりに渡辺さんとし
ておこう。
最近、実態調査のために与那国島に行ってきた渡辺さんか
ら答えを聞いて、「あぁぁァ」とうめいてしまった。
読者の皆さんにヒントを差し上げよう。
町役場のホームページに出ている人口動態表だ:
http://www.town.yonaguni.okinawa.jp/section/soumu/people.htm
■ なぜ3月に島外転出が集中するか ■
人口が減っているのは、高齢化が進んでお年寄りがどんど
ん亡くなっているからだろうか。
そうではない。
人口動態表から分かるとおり、八重山郡与那国町(よなぐ
にちょう)の毎年の出生数と死亡数は、ほぼ釣り合っている。
毎月の転出数に注目していただきたい。
3月に転出が集中している。年々60~80名が3月に転出し
ている。
この数が他の月なみになれば、人口はむしろ微増する。
3月の転出が多いのは、新年度からの就職のために新卒の
若い人たちが出ていくからだろうか。
いや、そうではなさそうだ。
毎年3月の転出者は60~80名。一学年がそれほど多ければ、
与那国島には600名ほどの小・中学生がいることになる。
人口1,600名の過疎の島で、それはありえないだろう。
渡辺さんが正解を教えてくれた。
■ 3月に人口減の島、4月に人口増の島 ■
「3月に転出が多いのは、与那国島に高校がないからです。
かつて高校の誘致に失敗したことを、今でも島の人々は嘆い
ています」
え? それって、どういうこと?
「子供が島外の高校に進学するとき、下宿生活・寮生活を
させて仕送りをしてやれるほど、与那国島の住民は豊かでは
ないのです。
仕方がないから、子供の高校進学を機に一家まるごと島を
出て、石垣島などに引っ越してしまうわけです」
あぁぁァ、そうか、3月の転出者の数は、高校進学を迎え
た子供のいる家族の父母や兄弟らを含めた数なのだ。
念のため、与那国島の東方120キロのところにある石垣島
の人口動向を見ると、こんな具合だ:
http://www.city.ishigaki.okinawa.jp/jinkou/jnkou-all.htm
石垣市の人口は毎年4月に顕著なかたちで増えている。
■“南クリル地区”の高校対抗競技大会の写真 ■
渡辺さんは言う。
「国境最前線の町や村に住民が“ちゃんとそこにいる”と
いうのは、とても大事なことなのです。
国境防衛の基本です。
ドイツなど、国境最前線の町や村の人口が減らないように、
手厚い住民支援の政策を行っています。
そういう戦略的な国境政策が日本には欠けています。
与那国島も対馬も、重要な国境離島です。国家戦略の観点
から住民支援を行う必要があります」
*
わが国の北方四島を不法占拠するロシアは、島に高校を設
けているのだろうか。
調べたところ、小・中・高校一貫の11年制の学校が、択捉
(えとろふ)島・国後(くなしり)島・色丹(しこたん)島
に設けられていることが分かった。
(日本の学制は6・3・3だが、ロシアの学制は3・6・2。
歯舞群島には国境警備隊員がいるだけで、一般住民はいない。)
こんなところでロシア語の知識が役立つとは思わなかった
が、最新の写真をお目にかけよう。
ロシア語で「色丹 学校」でグーグル検索してみた結果だ。
http://www.skr.su/?div=skr&id=89108
ロシアのいう「南クリル地区」の高校対抗競技大会のよう
す。
平成22年11月11日にアップされた記事である。
ロシア語の記事を読むと「色丹と国後の5つの高校が参加
した」と書いてある。
■ 正しい国境政策の見本 ■
独立行政法人「北方領土問題対策協会」のパンフレットに
よると、
≪択捉島、国後島、色丹島には、約16,555人のロシア人(択
捉島6,387人、国後島7,044人、色丹島3,124人)が住んでおり、
歯舞群島には国境警備隊員が駐留するだけです。
〔3島の人口は、サハリン州国家統計局編「クリル3地区の
社会経済状況」(2008年)による。〕≫
≪北方四島の教育制度は、小・中・高校を一貫した11年です。
四島には大学がないのでサハリンや大陸の大学に進学する人
も少なくないようです。≫
≪ロシア政府は 2007年から 2015年までに約 179億4,000万
ルーブル(2009年12月現在の為替レートで 592億円)を四島
等の社会・経済開発に投入する計画であると言われ、道路修
理、港湾整備、ヘリポートの建設などの社会基盤整備が行わ
れています。≫
不法占拠は絶対に許せないが、一国家として“ロシアから
みれば正しい国境政策”を推進中であることは確かだ。
■ 与那国島支援の具体案 ■
では、与那国島の教育支援は、さしあたりどうすればいい
のだろう。
端的にいえば、県立の中高一貫の6年制の学校を与那国島
に作るべきである。
また、島外の高校・大学に子供を通わせる家庭には、家族
が島に残ることを条件に潤沢な奨学金を出して、子供ととも
に家族がそっくり島外に転出するケースを減らす。
県がカネを出さぬというなら、それこそ中央政府が予算付
きで支援政策実施を沖縄県に求めることだ。
国立の中高一貫校を作ってもいい。そこに子供を入れるた
めに与那国島への移住が増えたら、しめたものだ。
与那国島の過疎化が進み、スキが生じて中国につけ入られ
たときの代償を考えれば、安いものである。
高校の授業料を一律無償にすることはバカでもできるが、
選挙で票がほしい政党は、こういうメリハリのある政策を真
剣に検討されよ。
◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
3月に人口減の与那国島、4月に人口増の石垣島
■■■■第309号■平成22年11月22日発行■■■◆
「日本の西端、国境最前線の与那国島(よなぐにじま)の
人口は 1,600名ほど。
平成15年には 1,800名あまりの住民がいましたが、
平成18年に 1,700名になりました。
そしていまや 1,600名ほど。
なぜこんなに急速に人口が減るのか、知っていますか?」
11月19日、ある国際研究所のひとの話を聞いた。
実名を出しても問題ないとは思うが、かりに渡辺さんとし
ておこう。
最近、実態調査のために与那国島に行ってきた渡辺さんか
ら答えを聞いて、「あぁぁァ」とうめいてしまった。
読者の皆さんにヒントを差し上げよう。
町役場のホームページに出ている人口動態表だ:
http://www.town.yonaguni.okinawa.jp/section/soumu/people.htm
■ なぜ3月に島外転出が集中するか ■
人口が減っているのは、高齢化が進んでお年寄りがどんど
ん亡くなっているからだろうか。
そうではない。
人口動態表から分かるとおり、八重山郡与那国町(よなぐ
にちょう)の毎年の出生数と死亡数は、ほぼ釣り合っている。
毎月の転出数に注目していただきたい。
3月に転出が集中している。年々60~80名が3月に転出し
ている。
この数が他の月なみになれば、人口はむしろ微増する。
3月の転出が多いのは、新年度からの就職のために新卒の
若い人たちが出ていくからだろうか。
いや、そうではなさそうだ。
毎年3月の転出者は60~80名。一学年がそれほど多ければ、
与那国島には600名ほどの小・中学生がいることになる。
人口1,600名の過疎の島で、それはありえないだろう。
渡辺さんが正解を教えてくれた。
■ 3月に人口減の島、4月に人口増の島 ■
「3月に転出が多いのは、与那国島に高校がないからです。
かつて高校の誘致に失敗したことを、今でも島の人々は嘆い
ています」
え? それって、どういうこと?
「子供が島外の高校に進学するとき、下宿生活・寮生活を
させて仕送りをしてやれるほど、与那国島の住民は豊かでは
ないのです。
仕方がないから、子供の高校進学を機に一家まるごと島を
出て、石垣島などに引っ越してしまうわけです」
あぁぁァ、そうか、3月の転出者の数は、高校進学を迎え
た子供のいる家族の父母や兄弟らを含めた数なのだ。
念のため、与那国島の東方120キロのところにある石垣島
の人口動向を見ると、こんな具合だ:
http://www.city.ishigaki.okinawa.jp/jinkou/jnkou-all.htm
石垣市の人口は毎年4月に顕著なかたちで増えている。
■“南クリル地区”の高校対抗競技大会の写真 ■
渡辺さんは言う。
「国境最前線の町や村に住民が“ちゃんとそこにいる”と
いうのは、とても大事なことなのです。
国境防衛の基本です。
ドイツなど、国境最前線の町や村の人口が減らないように、
手厚い住民支援の政策を行っています。
そういう戦略的な国境政策が日本には欠けています。
与那国島も対馬も、重要な国境離島です。国家戦略の観点
から住民支援を行う必要があります」
*
わが国の北方四島を不法占拠するロシアは、島に高校を設
けているのだろうか。
調べたところ、小・中・高校一貫の11年制の学校が、択捉
(えとろふ)島・国後(くなしり)島・色丹(しこたん)島
に設けられていることが分かった。
(日本の学制は6・3・3だが、ロシアの学制は3・6・2。
歯舞群島には国境警備隊員がいるだけで、一般住民はいない。)
こんなところでロシア語の知識が役立つとは思わなかった
が、最新の写真をお目にかけよう。
ロシア語で「色丹 学校」でグーグル検索してみた結果だ。
http://www.skr.su/?div=skr&id=89108
ロシアのいう「南クリル地区」の高校対抗競技大会のよう
す。
平成22年11月11日にアップされた記事である。
ロシア語の記事を読むと「色丹と国後の5つの高校が参加
した」と書いてある。
■ 正しい国境政策の見本 ■
独立行政法人「北方領土問題対策協会」のパンフレットに
よると、
≪択捉島、国後島、色丹島には、約16,555人のロシア人(択
捉島6,387人、国後島7,044人、色丹島3,124人)が住んでおり、
歯舞群島には国境警備隊員が駐留するだけです。
〔3島の人口は、サハリン州国家統計局編「クリル3地区の
社会経済状況」(2008年)による。〕≫
≪北方四島の教育制度は、小・中・高校を一貫した11年です。
四島には大学がないのでサハリンや大陸の大学に進学する人
も少なくないようです。≫
≪ロシア政府は 2007年から 2015年までに約 179億4,000万
ルーブル(2009年12月現在の為替レートで 592億円)を四島
等の社会・経済開発に投入する計画であると言われ、道路修
理、港湾整備、ヘリポートの建設などの社会基盤整備が行わ
れています。≫
不法占拠は絶対に許せないが、一国家として“ロシアから
みれば正しい国境政策”を推進中であることは確かだ。
■ 与那国島支援の具体案 ■
では、与那国島の教育支援は、さしあたりどうすればいい
のだろう。
端的にいえば、県立の中高一貫の6年制の学校を与那国島
に作るべきである。
また、島外の高校・大学に子供を通わせる家庭には、家族
が島に残ることを条件に潤沢な奨学金を出して、子供ととも
に家族がそっくり島外に転出するケースを減らす。
県がカネを出さぬというなら、それこそ中央政府が予算付
きで支援政策実施を沖縄県に求めることだ。
国立の中高一貫校を作ってもいい。そこに子供を入れるた
めに与那国島への移住が増えたら、しめたものだ。
与那国島の過疎化が進み、スキが生じて中国につけ入られ
たときの代償を考えれば、安いものである。
高校の授業料を一律無償にすることはバカでもできるが、
選挙で票がほしい政党は、こういうメリハリのある政策を真
剣に検討されよ。