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「ウナギ 大回遊の謎(塚本勝巳)」という本はとてもオススメ!

2013年07月26日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 「ウナギ 大回遊の謎」という本は、世界で初めて天然ウナギの卵を採集し、ニホンウナギの産卵場を特定するなどウナギ研究で前人未踏の成果をあげてきた著者が、ウナギの生態やウナギの産卵場を特定するまでの経緯・努力等を分かりやすく楽しく説明したものです。

 特にウナギは以下の特徴があるとは驚きましたね。

・卵からふ化すると「プレレプトセファルス」→「レプトセファルス」→「シラスウナギ」→「クロコウナギ」→「黄ウナギ」→「銀ウナギ」と変態などを行う
・シラスウナギを養殖すると、ほとんどが雄になる
・皮膚呼吸が発達していて空気中でも長時間生きていられる
・雌雄でライフサイクルが違う
・すべてが海と川を行き来するわけではない
・効率の良い遊泳運動をしている
・ウナギは磁気コンパスを使って長距離を泳いでいるらしい
・ウナギの祖先は約1億年前の白亜紀に出現したと推定される
・ウナギは5月もしくは6がつの新月に同期して産卵している
・卵が分布している範囲はきわめて狭く、わずか10km四方に収まっている

 また、調査船を使って毎年のように太平洋を航海して調査し、試行錯誤や仮説・検証を繰り返す様子や、採集用具や遺伝子解析等の装置の変遷などの努力には感動しますね。

 そして、フレッシュな発想と感性が研究に大きなブレークスルーをもたらすとは興味深かったですね。

 残念ながら最近ニホンウナギは激減し、ウナギ屋の値段も高騰していることから、これからウナギの生態研究をもっと進めて養殖化等を成功させ、ウナギをぜひ増やしてほしいと思います。

「ウナギ 大回遊の謎」という本は、ウナギのことをよく理解でき、とてもオススメです!

以下はこの本のポイント等です。
 
・ウナギは海で生まれる。「卵」から孵化したした前期仔魚は「プレレプトセファルス」と呼ばれる。下界の餌を食べ始めると後期仔魚期に入り、「レプトセファルス」になる。プレレプトセファルスとレプトセファルスを合わせて仔魚と呼ぶ。ウナギのレプトセファルスは眼以外には色素がなく完全に透明で柳の葉状の形態をしている。レプトセファルスは成長しながら海流によって沿岸に向かって輸送される。最大伸張期に達したレプトセファルスは変態を始める。この間、餌は食べない。変態後の稚魚は透明な「シラスウナギ」だ。シラスウナギは河口域にやってきて着底する。産卵場で孵化してから河口に到達するまで約半年である。着底後、摂餌を再開したウナギは、急速に色素が発現し、シラスウナギから「クロコウナギ」となる。クロコウナギは川を遡上し、やがて定着生活を始める。この時期のウナギは「黄ウナギ」と呼ばれ、背はオリーブグリーン、腹は黄身がかった白色だ。ただし、体色の変異は大きい。黄ウナギとして河川や池で成長する。雄が数年、雌が10年前後、淡水域で成長した後、秋口から銀化と呼ばれる変態が始まる。体は全体に黒ずみ、皮膚にグアニンが沈着して、金属光沢を放つ。この段階は「銀ウナギ」と呼ばれる。わずかに成熟が始まった銀ウナギは、秋から初冬に河川の増水とともに川を下り、海へ出る。外洋の産卵場に帰りついた銀ウナギは、産卵して一生を終える。河口から産卵場に至る「産卵回遊」過程の詳細はまだ明らかではないが、産卵期のピークはニホンウナギの場合、夏なので、回遊に要する期間はおよそ半年と考えられている。

・ウナギの産卵場といえば、まず北大西洋のサルガッソ海、ヨーロッパウナギとアメリカウナギの産卵場だ。太平洋のマリアナ諸島西方海域は、ニホンウナギとオオウナギの産卵場である。セレベス海はセレベスウナギとボルネオウナギが産卵するとみられ、フィジー西方海域はオーストラリアウナギ、ニュージーランドウナギ、ニュージーランドオオウナギ、ラインハルディウナギの産卵場と考えられている。インド洋には二カ所、マダガスカル島東方海域とスマトラ島西方のメンタワイ海溝である。前者ではモザンビークウナギが、後者ではベンガルウナギが産卵するとされる。しかし、これらの多くはおおよその推定海域であって、はっきり産卵場と確認されたものは少ない。

・ウナギが空気中でも長時間生きていられるのは、皮膚呼吸が発達しているためである。通常の魚はエラでガス交換して酸素をとりこむが、ウナギの場合はエラだけでなく体表からも酸素をとって利用する。皮膚呼吸による酸素摂取量が全呼吸の6割以上にもなることがあるという。それを可能にしているのは、体表に分泌される多量の粘液だ。一般に魚の鱗は、外部からの物理・化学・生物的刺激に対して体表を防護する役目をもつが、ウナギの場合、鱗は退化して小さな小判型の鱗が皮下に埋没している。その代わりに、表皮に粘液細胞が発達して、多量の粘液を分泌して体を保護する。と同時に、この粘液を通じて空気中の酸素が体内に取り込まれる。さらにウナギは他の魚に比べて、低酸素環境に強いというメリットも持っている。ウナギの特徴ともなっているぬるぬるの粘液が、陸上における皮膚呼吸と体の保護の役目を果たし、陸上長距離移動を可能にしたのだ。ウナギはほとんど鉛直に切り立った壁もよじ登ることができる。利根川から遡上してきたウナギが、100m近く落差のある日光の華厳の滝を登って中禅寺湖へ入ったという例もある。

・シラスウナギを養殖すると、ほとんどが雄になる。したがってわれわれが蒲焼きで食べるウナギはほとんどが雄といってよい。理由はよくわかっていないが、養殖池の高い個体密度や高温などの要因が雄を産むとも、飼育下のストレスが性を雄に偏らせるともいわれている。一般に性は、遺伝的には性染色体の組み合わせによって決まるものが多いが、環境要因によって性が決まる生物も知られている。爬虫類のワニやカメでは、卵が孵化するときの温度によって性比が偏ることがよく知られている。これは「環境依存型性決定(温度依存型性決定)」と呼ばれ、生物の性的可塑性を示す例である。ウナギのばあいは、基本的に性が決まっていると考えられている。しかし、この遺伝型性も発生の過程で様々な要因によって揺らぎ、たとえ遺伝型では雌であっても、性分化期の環境やストレスによって容易に雄に分化すると思われる。この場合は、紛らわしいのであるが、「温度感受型性決定」と呼ばれる型に分類される。キンギョやヒラメもこのタイプ。天然の生息域では、河川の上流にいるウナギは一般に雌が多く、下流や河口では雄の多い傾向がある。汽水湖の浜名湖でも場所による性比の偏りが知られていて、流入河川には雌が多いが、浜名湖内の性比はほぼ半々である。理由として、個体密度や水温の違いがいわれているが、まだ結論は得られていない。生殖腺の形態的分化が起こり始めて性分化が始まるのは、ニホンウナギでは全長20cm前後である。一方、河川遡上するか、河口もしくは湖内に残るかが決まるのはシラスウナギの接岸から1年半の夏までが多いので、性未分化の状態で生息域は決まる。性が決まった後に移動するわけではない。やはり、定着先の環境要因が雄なり雌なりへの分化を促しているのだろう。

・雄は50cm前後で銀化して産卵回遊に旅立ってしまうので、天然のニホンウナギで体長50-60cm以上の大型魚は、ほとんどが雌と考えてよい。旅立ちの年齢や体サイズは性により異なる。雌のほうがより高齢、大サイズで銀化し、産卵場へ旅立つ。雌が卵を1つ作ろうと思うと、雄が精子1つを作るより遙かに大きなエネルギーがいる。したがって生涯に一度の産卵の際に、少しでも多くの子孫を残すためには、雌雄で成長、成熟、回遊、繁殖など生活史の在り方が違ってくる。すなわち雄は小さいサイズで成熟を始め、若齢で旅立ち、早く繁殖に参加したほうが効率がよい。一方、雌は大きな卵を少しでも多くもって繁殖に臨むほうが有利なので、ゆっくり時間をかけて成長し、十分にエネルギーを蓄えたのち高齢で成熟開始、回遊、産卵したほうが多くの子孫を残せる。つまり雄はライフサイクルを早く回転させ、雌はじっくりと回している。同一種でありながら雌雄別々のサイクルで生きているのだ。それぞれ異なる場所で成長し、両者の接点は唯一産卵場における繁殖のときだけだ。

・最近、ウナギの回遊の原則を覆すような発見があった。ウナギは海と川を行き来する「通し回遊魚」で、外洋の産卵場で生まれたウナギは沿岸へ回遊してきて、その後、すべての個体が河川へ遡上して成長するものと一般に信じられていた。また教科書にもそう書かれている。ところが、産卵回遊中の銀ウナギを捕らえてその耳石微量元素を調べてみると、意外なことがわかった。必ずしもシラスウナギとして接岸後、河川遡上するとは限らず、そのまま河口に居残ったり、沿岸の海域へ帰ったりする個体も数多くいることが明らかになった。ウナギは単純な「通し回遊魚」ではなかったのだ。これは耳石に沈着したストロンチウム(Sr)の濃度を時系列に沿って計測し、個体ごとに回遊履歴を明らかにした結果だ。ストロンチウムは淡水中にはほとんどないが、海水中には比較的多い。この差を利用し、耳石の成長に伴って環境水から耳石に取り込まれたストロンチウムの濃度を測ることによって、その個体がいつごろ海にいて、どのくらいの期間淡水中で暮らしたか、おおよその回遊履歴を知ることができる。

・体重1kgのヨーロッパウナギがサルガッソ海まで泳いでいくのに、わずか60gの脂肪があればよいという実験結果がある。循環式遊泳装置スタミナトンネルの中で6ヶ月間、銀ウナギを泳がし、酸素消費量から回遊に必要なエネルギーを算出した結果、驚くべき低コストで(0.5kJ/km・kg)でウナギは回遊していることがわかった。ニジマスの遊泳に比べ5倍も効率の良い遊泳運度をしているともいわれる。

・ウナギは地球上のどこで起源し、どのように進化してきたのだろうか。ウナギの起源と進化の過程を解き明かすには、その回遊行動の進化を調べなくてはならない。ウナギ目魚類の化石はおよそ4000万年前の地層から出土している。しかし、おそらくウナギ目の祖先種が誕生した年代はさらに古いだろう。2010年に、パラオの海底洞窟で
ウナギ目の祖先種と思われる原始的な魚が見つかった。遺伝子の系統解析から約2.2億年前に出現したものと推定された。

・私たちは6年間で26カ国を訪問し、ついに世界のウナギ18種(当時)をすべて集めることに成功した。こうして集めたウナギ全18種のミトコンドリアDNAの塩基配列を解析した結果、やっと待望の分子系統樹が得られた。これによると世界中のウナギ類の中で最もその祖先に近いものは、インドネシア・ボルネオ島に棲むボルネオウナギという種であることがわかった。また、現在アフリカ東岸のインド洋に生息するモザンビークウナギと大西洋の二種が近縁であるということも驚きであった。このことは、両者が共通の祖先を持ち、それがかつてインド洋と大西洋を結んでいた古代の海に生息していたことを示しているからである。その海は1億年以上も昔、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸の間に存在したテーティス海であったと考えられる。その名残が現在の地中海である。そこで、両者の分岐は遅くともローラシア大陸とゴンドワナ大陸が衝突してテーティス海が閉じ、スエズ地峡ができた3000万年より以前に起きていなくてはならない。したがって、この分岐の年代を今から3000万年前と仮定し、これをもとに分子系統樹全体の年代推定をした。その結果、ウナギの祖先は今から約1億年前の白亜紀に出現したと推定された。この推定は化石資料とも矛盾しない。

・ウナギの産卵期が夏とわかったのも耳石解析の結果だ。全国の河口にやってくるシラスウナギを集め、その耳石の日周輪を計数し、個々の日齢を求めた。すると、生まれてから6~8ヶ月経ったものであることがわかった。これを12月から3月のそれぞれの採集日から逆算して、それぞれの孵化日を求めて集計してみると、そのピークは7月となった。ウナギは産卵時の受精から卵の孵化までわずか1.5日なので、ここでは産卵日と孵化日のズレは全く問題にならない。

・なぜ卵や孵化直後のプレレプトセファルスは採れないのか?冷静になって考えてみると、その理由は、その時期のウナギが高密度で集中分布していることにつきる。産卵場で産み出された卵やそこから孵化したプレレプトセファルスは成長しながら、海流によってゆっくり西へ運ばれる。その際、最初はごく狭い空間に高密度で分布していたものが、次第に分散して広い範囲に低密度で分布するようになる。したがって、比較的大きいレプトセファルスは、しかるべき採集努力さえ払えば数は少なくても必ず採れる。しかし、孵化後間もないプレレプトセファルスや卵は、狭い範囲に集中分布するので、ひとたびこれにヒットすれば大量に採れるが、そもそもヒットする確率は極めて低い。

・7月に採れた全長10~30mmのレプトセファルスは、大きく5月生まれと6月生まれの2群に分かれた。そして、こっら2群の孵化日のモードが、それぞれの月の新月の日にほぼ一致したのだ。これはつまり、ウナギが各月の新月に同期して、いっせいに産卵していることを示している。それまでにウナギは夏を中心とした約半年間におよぶ長い産卵期をもつことがわかっていたが、その間、毎日だらだらと産卵しているわけではないらしい。またある日突然思い立って、いい加減なタイミングで三々五々、産卵行動に及んでいるわけでもないことがわかった。新月のいっせい産卵は、受精率を高め、真っ暗闇の夜は被食を減らすので有利といえる。さらに、新月の大潮の速い流れは、受精卵や孵化後のプレレプトセファルスの拡散を促進し、被食の危険を減らす。

・2005年6月の新月当日、1991年の小型レプトセファルスの大量採集から14年ぶりに、ついにその時はやってきた。西マリアナ海嶺南部のスルガ海山西方約100kmの地点で、それまで見たこともなかった全長5mm前後のウナギ目仔魚が計110尾採集された。直ちに船上で遺伝子解析が行われ、確かにニホンウナギのプレレプトセファルスであることが確認された。耳石の日周輪解析によると、孵化後わずか2日しかたっていない仔魚だ。実験室におけるウナギの人工孵化のデータから、水温20度では受精から孵化まで36時間かかることがわかっているので、これらのプレレプトセファルスは新月の約4日前に産卵された卵に由来するものと推察された。現場の西向きの海流を4日間遡ると、ちょうどスルガ海山付近から流れてきた計算になる。これはウナギの個々の産卵イベントをピンポイントで特定することに成功した初めての事例だ。また、これによってニホンウナギの産卵場は西マリアナ海嶺の海山域であることがほぼ確定的となった。

・張さんは世界初の親ウナギ捕獲という快挙を成し遂げ、横瀬さんは見事その地点を予言した。これらは「ビギナーズラック」で簡単に片づけられない。長年、ウナギ産卵場調査に従事してきた者にはない、フレッシュな発想と感性が研究に大きなブレークスルーをもたらしたのだ。一見、荒唐無稽にも見える着想が偉大な発見を生むことは、科学の歴史でよくあることである。常識にとらわれず、常に柔軟な姿勢を保つことが研究者として必須であることを改めて感じた。

・結果、卵が分布する範囲は極めて狭く、わずか10km四方に収まっていることがわかった。得られた卵は広い囲卵腔をもった胚体期のもので、直径は平均1.6mm、受精後約30時間、新月3日前の夜間産卵されたものと推定された。翌23日に採集された卵には、船上で観察している間に孵化し始めたものもあった。その後は、同一群の卵に由来すると思われるプレレプトセファルスが100個単位で多数採集された。海で孵化が始まってしまったのだ。結局2日間ほどの観測で計31個のウナギ卵の採集に成功した。とはいっても、卵の分布の中心に網がヒットすればおそらく何千何万という卵が採集できるはずなので、われわれの曳網作業はまだ卵分布の核心を突いたものではなかったと考えられる。しかし、何はともあれ世界初のウナギ卵を採集できたのであるから、やはり成功といっていだろう。嵐のような2日間が終わり、長年ウナギ研究を共にした大竹二雄さんと夕暮れのデッキに出た。生暖かい潮風に吹かれて飲んだ缶ビールの味は忘れられない。

・ウナギ卵が採集できたのは、塩分フロントの位置を正確に押さえることができたためである。これは天鷹丸からのCTD観測結果の貢献が大きい。もし、白鳳丸が例年通り単独で東経140度ラインを観測し、塩分フロントの位置が北緯13.5度であることを知ったとしたら、そしてそれを海山列まで真東に延ばして交点を求めていたとしたら、実際の卵採集地点より北東に200kmも離れた地点を集中調査していただろう。そうすればおそらく卵の発見はなかった。塩分フロントが傾いていることがわかったのは、誠に幸運であった。ウナギ卵採集地点の北緯12度50分、東経141度15分は、ちょうど塩分フロントと西マリアナ海嶺の海山列が交わった点で、親ウナギが産卵海域に形成される塩分フロントを目安に産卵地点を決めるというフロント仮説を裏付けるものだった。まさにその交点で採集されたものだから、われわれ自身その的中ぶりに驚いた。もちろん、海山域で新月2日前に採集されたので、海山仮説、新月仮説も十分満たしている。この発見により、ニホンウナギの推定産卵場はカイヨウポイントよりさらに南西へ広がった。

・結局、2008、2009、2010年の3カ年のトロール調査で、ニホンウナギの産卵親魚は計13個体で、オオウナギは計4個体、合わせて計17個体の親ウナギが捕獲できた。2009年の卵発見後、2010年には石油高騰で白鳳丸航海はキャンセルされてしまったが、2011年には再び白鳳丸で卵を採集する機会が訪れた。まず塩分フロントを見つけ、海山列との交点で調査を始めたところ、わずか4回目の曳網で卵を得ることができた。採集された卵の発達段階とそれぞれの採集日時から逆算すると、ウナギは新月の2~4日前の3日間に、ほぼ同一海域で毎晩産卵しているようだ。卵の分布水深から、ウナギの産卵は水深150~200mの比較的表層近くで行われることも2009年に引き続いて再確認できた。これによって、今回の卵採集は2009年の卵発見のように幸運や偶然だけではないように思えた。

・ニホンウナギの資源は1970年前後の最盛期に比べると約10%にまで減ってしまった。世界的に見ると、大西洋のアメリカウナギとヨーロッパウナギの激減ぶりはさらにひどく、盛時のわずか1%にまで減っている。その原因はいろいろ言われている。まず乱獲、それに河川環境の悪化、発電用ダムのタービンに巻き込まれての死亡や汚染物質、寄生虫やウイルス病、カワウによる捕食も指摘されている。さらには、産卵場を含む海洋環境の変化も大きな影響を持つといわれている。

・エルニーニョが起こると、塩分フロントが南下することが知られているが、最近のエルニーニョの頻発が塩分フロントの南下に伴う産卵地点の南下をもたらしているのかもしれない。このサザンシフトはレプトセファルスの輸送とシラスウナギの東アジアへの加入に大きく影響し、資源変動の重大な要因となる。事実、北緯13度のカイヨウポイントで生まれたウナギの運命を、海流データに基づく数値シミュレーションで見てみると、大部分がフィリピン沖で南下するミンダナオ海流に取り込まれて死滅回遊となり、本来の北上する黒潮に乗って、東アジアに加入する個体が少なくなってしまうという結果が得られる。しかし、14度のスルガ海山の緯度から粒子を放流すると、大部分が黒潮に取り込まれ、首尾よく東アジアにやってくる。わずか1度の産卵地点の違いが東アジアのシラスウナギ資源の変動の鍵を握っているのである。このほかにも、海水温の上昇や台湾沖の渦の数や規模、あるいは北赤道海流がフィリピン沖合で黒潮とミンダナオ海流に二叉するバイファケーション(分岐)の緯度など、さまざまな要因がレプトセファルスの回遊過程に影響し、シラスウナギ資源の変動を起こす。

<目次>

はじめに
第1章 ウナギと出会う
 1 魚の運動生理学
 2 アユの回遊メカニズム
 3 動因と「脱出理論」
 4 大アユと小アユ
 5 海へ進出
 6 ウナギとの出会い
 7 ウナギの生活史
第2章 ウナギの7不思議
 1 産卵場の謎
 2 レプトセファルスの謎
 3 陸を這う謎
 4 性の謎
 5 海ウナギの謎
 6 回遊の謎
 7 起源の謎
第3章 産卵場を求めて
 1 大西洋
 2 太平洋
 3 番頭さん
 4 練習船・敬天丸
第4章 小型レプトセファルス
 1 処女航海
 2 第5次ウナギ産卵場調査
 3 ビギナーズラック
 4 夏産卵説
第5章 仮説
 1 空白の時
 2 熱帯ウナギの研究
 3 海山仮説
 4 新月仮説
第6章 潜水艇
 1 潜水艇ヤーゴ
 2 ゾディアック
 3 怪しい雲
 4 そっくり卵
 5 調査船・駿河丸
第7章 プレレプトセファルス
 1 原点回帰
 2 新兵器
 3 ハングリードッグ作戦
 4 プレレプトセファルス発見
 5 経験
 6 成果の公表
第8章 親ウナギ
 1 漁業調査船・開洋丸
 2 スルガ包囲網
 3 親ウナギ捕獲
 4 予言
 5 ギャップ
 6 明かされたこと
 7 雌ウナギの発見
 8 オオウナギとニホンウナギ
 9 複数回産卵
第9章 卵
 1 大船団
 2 S字サーキット
 3 練習船・天鷹丸
 4 天然ウナギ卵
 5 傾いた塩分フロント
 6 産卵水深
 7 後日談
第10章 資源と保全
 1 激減した資源
 2 ウナギの保全
 3 鰻川計画
 4 鰻博覧会
おわりに
参考文献

面白かった本まとめ(2013年上半期)

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